2024年
11月
26日
火
月例経済報告(R6.11.26) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米 における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続 に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。また、物価上昇、アメリカの今後の政策動向、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要が ある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う影響による下振れリスク、アメリカの今後の政策動向による影響に留意する必要がある。また、中東地域を
めぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP等の動向
○ 2024年7-9月期(1次速報)の実質国内総生産は、前期比+0.2%(年率+0.9%)となった。
・我が国の名目GDPは、2024年4-6月期に史上初めて年率換算で600兆円を超え、7-9月期には更に過去最高を更新した。
実質GDPは、個人消費を中心に2四半期連続のプラス成長となった。
○ 個人消費(GDPの54%)は、実質では、所得の伸びが物価上昇に追いつかない中で力強さを欠いてきたが、足下では自動車
の回復や、8月の台風・地震の影響による飲食料品の増加等もあり、2四半期連続の増加となった。
輸出(GDPの22%)は、中国景気の足踏み状態を反映して、中国向けの財輸出が減少するなど、緩やかな伸びにとどまる。
個人消費の動向
○ 家計の可処分所得は、33年ぶりの賃上げ反映や堅調な夏のボーナス、定額減税もあって、名実ともに増加する中、個人消費
も持ち直しの動きが継続している。
○ 形態別に見ると、サービスは、台風・地震の影響により宿泊が減少したこともあって微増の一方、耐久財や非耐久財が増加
した。自動車は、7-9月期にかけて年初の認証不正問題の影響からの回復がみられたこと、非耐久財は、8月の台風・地震等
に伴うパックご飯や飲料等の防災関連財の備蓄需要という一時的要因が影響したことには留意が必要である。
○ 平均消費性向をみると、米国では、高齢層、現役層ともにおおむねコロナ禍前の水準に戻る一方、日本では、現役層で切り
下がった状況が続く。物価上昇を上回る所得増を定着させ、家計がそれを前提として消費できる環境を整えることが重要である。
○ 個人消費は、一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、6月+0.2%、7月+0.1%、8月+0.1%、9月+0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、6月+0.2%、7月+0.3%、8月0.0%、9月+0.2%、10月▲0.7%。
・9月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.7%となった。
物価
○ 消費者物価上昇率は、酷暑乗り切り支援もあって、おおむね2%台半ばで推移している。一方、食料品は、POSデータ(お客さまと金銭
のやりとりをした時点での販売記録データ)によると、米のほか、チョコレート、ハム・ベーコン、清涼飲料等を中心に、物価上昇幅が拡大した。
○ 物流費は、いわゆる「物流の2024年問題」の影響もあり足下で上昇傾向となっている。食品メーカーの価格引上げの背景をみると、
物流費が原材料費に次ぐ要因に挙げられるなど、物流費の価格転嫁が進展した。なお、物流費が10%上昇した場合の波及効果を
試算すると、物価全体を0.2%程度押上げている。
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。消費者物価は、このところ上昇している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、6月▲5.9%、7月+1.0%、8月+0.5%、9月+3.0%。
・持家着工数は前月比で、6月+2.0%、7月▲0.4%、8月+6.6%、9月▲4.1%。
・貸家着工数は前月比で、6月▲7.3%、7月+10.1%、8月▲7.1%、9月+8.0%。
・分譲着工数は前月比で、6月▲11.7%、7月▲10.4%、8月+3.9%、9月+7.7%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、5月▲3.6%(出来高5月+0.6%)、6月▲3.1%(出来高▲0.6%)、7月+2.1%(出来高+0.7%)、8月▲11.4%
(出来高▲1.1%)、9月+6.4%(出来高▲0.7%)、10月▲5.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用者全体の所得を示す総雇用者所得は、実質で見ても2四半期連続で前年比プラスとなり、緩やかに持ち直している。
○ 就業形態別の実質賃金のうち、パート時給は昨年半ばより前年比プラスが継続している。フルタイム労働者は、現金給与総額
では6月以降プラス傾向が続き、ボーナスを除く定期給与ではマイナス幅が縮小傾向となっている。
○ 一方、フルタイム労働者の所定内給与を事業所規模別にみると、5~29人の事業所では賃金上昇に遅れがみられる。
○ 夏のボーナスでは、比較的規模の小さい事業所で、以前よりも多くの事業者が支給するようになり、全体の押上げに寄与した。
冬のボーナスも、昨年からさらに増加する見込みとなっている。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、7月1.24、8月1.23、9月1.24(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、5月2.6、6月2.5、7月2.7、8月2.5、9月2.4となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・7-9月期の企業収益は、営業利益では総じて改善した。経常利益は、円安是正に伴う為替差損の影響で製造業を中心に減少
した。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、このところ増勢が鈍化している。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+13、12月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+34、12月+28。
「中小企業・製造業」は、2023年12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0、12月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年12月+14、2024年3月+13、6月+12、9月+14、12月+11。
○ 生産は、このところ横ばいとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、6月▲4.2%、7月+3.1%、8月▲3.3%、9月+1.6%、10月(予測)+8.3%、11月(予測)▲3.7%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比、6月▲9.0%、7月+7.0%、8月▲4.6%、9月▲1.7%。
・電子部品・デバイスは前月比で、6月▲5.8%、7月+9.7%、8月+1.9%、9月+0.5%。
・輸送機械は前月比で、6月▲6.6%、7月+2.6%、8月▲8.1%、9月+5.8%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。輸入は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・輸出企業の採算為替レートは、2024年1月時点で1ドル120円台。実勢レートはこれよりも円安ドル高で推移している。
・財の輸出は全体として横ばいで推移している。中国景気の足踏みが続く中、輸出の2割弱を占める対中輸出は引き続き
減少傾向となっている。一方、それ以外のアジア向け輸出は持ち直すなど、引き続き地域ごとにばらつきがみられる。
・7-9月期のインバウンド消費は、これまでの反動もあって減少し、外需を押し下げたが、10月の訪日外客数は331万人と、
単月では過去最高。旅行者一人当たりの消費額を含め、今後の動向を注視する必要がある。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、7月+0.5、8月+1.5、9月▲1.2、10月▲0.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、7月+0.4、8月+2.0、9月▲0.6、10月▲1.4。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、各種政策効果が次第に発現し、徐々に足踏み状態を脱することが期待される。ただし、不動産市場の
停滞の継続や物価下落の継続、今後の通商関係の動向による影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年7-9月期の実質GDP成長率は4.6%。
・消費はおおむね横ばいとなっている。足下では7月末に強化が図られた買換え支援策の効果が発現し、自動車や家電
販売がプラスに転換した。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
ASEANや中東、中南米等への財の輸出先の多角化が進んでいる。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
住宅価格の下落が 継続するなど不動産市場が停滞する中、これまで地方政府の主要財源となっていた土地使用権譲渡
収入は大きく減少している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。内需の弱さもあり、GDPデフレーターが6四半期連続でマイナスとなる
など物価下落が継続している。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は弱含んでいる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、高い金利水準の継続に伴う
影響による下振れリスク、今後の政策動向による影響に留意する必要がある。
・トランプ次期大統領は、大統領選において、中国や全世界からの輸入品に対する関税の大幅な引上げについて言及した。
・第一次トランプ政権時には、2018年7月以降累次にわたり、米中間で相互に関税を引上げている。2018年後半以降、米国・
中国ともに輸出は頭打ちとなった。また、中国の対米輸出停滞は、日本の輸出の下押しにも影響する。
・IMFは、米・中・ユーロ圏の間で相互に10%、米国と他国との間でも相互に10%の関税を仮定し、設備投資の下押しを
含めた場合、2026年にかけて、米国のGDPを1%、中国のGDPを0.5%程度下押しすると試算している。
・2024年7-9月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.8%。
○ 雇用者数は緩やかに増加し、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・10月の失業率は4.1%となった。
○ 消費者物価上昇率は、サービスは底堅く推移する一方で、財を中心に低下傾向となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数は持ち直している。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数は弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
・物価の安定と雇用の最大化を使命とするFRBは、11月に0.25%ptの利下げを実施。
○ 財輸出はゆるやかに増加した。
・2018年後半以降、中国からの財輸入は頭打ちで推移している。コロナ禍以降、ASEAN・メキシコからの財輸入は増加
傾向にある。米国の貿易赤字の対GDP比は、2008年の世界金融危機後、おおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。ドイツにおいては、景気は足踏み状態にある。
イギリスでは、持ち直している。
・24年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.5% (イギリスは+0.6%、ドイツは+0.4%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はこのところ持ち直しの動きがみられる。イギリスは持ち直している。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに、おおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.7%(10月)、イギリス+3.3%(10月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスはこのところ持ち直している。イギリスのサービス輸出は緩やかに増加しているが、
このところ一服感がみられる。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
10月
30日
水
月例経済報告(R6.10.29) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米に おける高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に 伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本 市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
|
○ 米国では、個人消費を中心に景気は拡大。
雇用者数は緩やかに増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
物価上昇率は 低下傾向にあり、物価の安定と雇用の最大化を使命とするFRBは、9月に0.5%ptの利下げを実施した。
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態。
欧州では、実質GDPの回復にばらつきがある。
ユーロ圏では、景気は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。
○ 米国、中国は成長が鈍化するものの、世界経済全体としては、3%台の成長の見込みとなっている。 ただし、欧米の高い
金利水準の継続、中国の不動産市場の停滞の継続、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響による下振れ
リスクに留意が必要である。
GDP等の動向
○ 我が国の名目GDPは、1992年度に500兆円を超えてから、デフレを始め様々な困難に見舞われたこともあり、おおむね
500兆円台で推移している。2024年4-6月期には、名目GDPが史上初めて年率換算で600兆円を超えた。実質GDPは、
消費や投資を始め内需が押上げに寄与し、2四半期ぶりのプラス成長となった。
○ 設備投資は、2024年4-6月期には名目年率106兆円と、1991年以来33年ぶりに過去最高を更新。実質でも持ち直しの
動きが続く。GDPの54%を占める個人消費は、名目では過去最高となっているが、実質は、賃金の伸びが物価上昇に追い
つかなかったこともあって、力強さを欠いてきた。
○ 経済の成長力を示す潜在成長率は0%台半ばとなっている。資本、労働、生産性の各側面からの潜在成長率の向上が課題
である。
デフレ脱却の定義と判断
○ デフレ脱却とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」。現在は、物価が
持続的に下落するデフレの状態にない。一方、デフレに後戻りしないという状況を把握するためには、消費者物価やGDP
デフレーター等の物価の基調に加え、その背景として、GDPギャップ、単位労働費用、賃金上昇、企業の価格転嫁の動向、
物価上昇の広がり、予想物価上昇率など、幅広い指標を総合的に確認する必要がある。
○ 四半世紀にわたり続いた、賃金も物価も据え置きで動かないという凍りついた状況が変化し、賃金と物価の好循環が回り
始め、デフレ脱却に向けた歩みは着実に進んでいる。
○ GDPギャップ(国の経済全体の総需要と供給力の乖離)は4-6月期に▲0.6%程度まで縮小した。単位労働費用は春闘賃上げや
夏季ボーナスもありプラスとなった。
○ 名目賃金上昇率を詳細にみると、パートタイム労働者の時給は、2023年後半から上昇幅が拡大している。フルタイム労働者
の所定内給与も2024年春以降、上昇率が高まっている。ただし、5~29人の比較的規模の小さい事業所で上昇に遅れがみら
れる。
○ 仕入価格上昇に対し販売価格も上昇し、過去30年と異なり価格転嫁が進展した。1年前と比べて価格が上昇した品目は
7~8割と1980年代の姿に近づく。企業の中期的な予想物価上昇率は上昇し、2022年以降2%程度で安定的に推移している。
個人消費の動向
○ 可処分所得が春闘の賃上げ反映や堅調な夏季ボーナス、定額減税の効果等もあって増加する中、個人消費は持ち直しの
動きがみられるが、緩やかな伸びにとどまり、結果として貯蓄率は2024年に入り上昇した。
○ 新車販売は一部メーカーの出荷停止事案による落ち込みから持ち直し、外食は売上・客数ともに緩やかな増加が続く。
○ 世帯別に貯蓄率をみると、勤労世帯ではコロナ禍前に比べて高止まりとなっている。一方、高齢無職世帯ではコロナ禍前に
戻り、低所得世帯ではコロナ禍前の水準を下回って低下が進む。物価上昇が進む中で、貯蓄を取り崩して必要な消費に回して
いる可能性が考えられる。
○ 消費者マインドは、緩やかな改善傾向はみられるものの、食料品価格の上昇もあって、改善に足踏みがみられる。
○ 個人消費は、一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、5月+0.2%、6月+0.2%、7月+0.1%、8月▲0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、5月▲2.1%、6月+0.2%、7月+0.3%、8月0.0%、9月+0.2%。
・8月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.5%となった。
物価
○ 消費者物価上昇率は、昨年11月以降おおむね2%台で推移。9月は、酷暑乗り切り支援の効果もあり、電気・ガス代の上昇幅が
縮小した。ただし、夏以降、引き続き食料品の価格上昇が拡大している。米のほか、飲料やコーヒー、肉類等で上昇幅が拡大した。
○ 基礎的支出(食料品や光熱費等)に分類される財・サービスの物価上昇率が、選択的支出(教養娯楽費等)に分類される財・
サービスの物価上昇率を再び上回るようになっており、基礎的支出が相対的に多い低所得者への影響に留意が必要である。
○ 円ベースの輸入物価は、7月半ばから9月にかけて円安が是正されたこともあり、このところ下落している。一方、10月以降、為替が
再び円安方向に動いたこともあり、輸入物価は下げ止まる可能性がある。
○ 国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。消費者物価は、緩やかに上昇している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月▲+7.6%、6月▲5.9%、7月+1.0%、8月+0.5%。
・持家着工数は前月比で、5月▲4.6%、6月+2.0%、7月▲0.4%、8月+6.6%。
・貸家着工数は前月比で、5月▲13.5%、6月▲7.3%、7月+10.1%、8月▲7.1%。
・分譲着工数は前月比で、4月+15.1%、5月+3.3%、6月▲11.7%、7月▲10.4%、8月+3.9%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%(出来高▲0.6%)、7月+2.1%
(出来高+0.7%)、8月▲11.4%(出来高▲1.1%)、9月+6.4%。
雇用・賃金の動向
○ 1990年代末以降、長期的にゼロ%前後で推移してきた名目賃金・物価の上昇率は、2022年以降の輸入物価の上昇と、それに
対応した価格転嫁・賃上げ促進の結果もあって、いずれもデフレに陥る以前の90年代の水準の伸びとなった。
○ 日本の労働者の約3割を占めるパートタイム労働者の賃金は相対的に低く、パートタイム労働者比率の上昇は、全労働者の平均
の名目賃金を押し下げている。就業形態別に実質賃金を見ると、パート時給は、昨年半ばより前年比プラスが継続しており、フル
タイム労働者は、現金給与総額では6月以降プラスが続き、ボーナスを除く定期給与でもマイナス幅が縮小傾向にある。
○ 10月以降各都道府県で順次最低賃金引上げが開始し、9月末以降、パート労働者の募集賃金(時給)は一段と増加した。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、6月1.23、7月1.24、8月1.23(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、4月2.6、5月2.6、6月2.5、7月2.7、8月2.5となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業の業況感は、製造・非製造業とも改善。売上の7割を占める非製造業は、1990年代初めのバブル期以降最高水準。
・企業の設備投資意欲は引き続き旺盛。2024年度の設備投資計画は、9月時点で前年度比10%増と堅調である。
・企業の人手不足感は引き続き高い水準にあり、特に非製造業ではバブル期以来の歴史的な高さとなっている。人手不足が成長
の制約とならないよう、省力化投資等が課題である。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、このところ増勢が鈍化している。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+13、12月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+34、12月+28。
「中小企業・製造業」は、2023年12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0、12月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月12月+14、2024年3月+13、6月+12、9月+14、12月+11。
○ 生産は、このところ横ばいとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、5月+3.6%、6月▲4.2%、7月+3.1%、8月▲3.3%、9月(予測)+2.0%、10月(予測)+6.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比、5月▲6.8%、6月▲9.0%、7月+7.0%、8月▲4.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、5月+2.3%、6月▲5.8%、7月+9.7%、8月+1.9%。
・輸送機械は前月比で、5月+12.1%、6月▲6.6%、7月+2.6%、8月▲8.1%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、6月+1.3、7月+0.5、8月+1.5、9月▲1.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、6月+1.6、7月+0.4、8月+2.0、9月▲0.6。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、各種政策効果が次第に発現し、徐々に足踏み状態を脱することが期待される。ただし、不動産市場の停滞の
継続や物価下落の継続による影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年7-9月期の実質GDP成長率は4.6%。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、高い金利水準の継続に伴う
影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・ 2024年4-6月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.0%。
○ 雇用者数は緩やかに増加し、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・9月の失業率は4.1%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数は弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はゆるやかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。ドイツにおいては、景気は足踏み状態に
ある。イギリスでは、持ち直している。
・24年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.8% (イギリスは+1.8%、ドイツは▲0.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直している。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は、横ばいとなっている。イギリスは、おおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.7%(9月)、イギリス+3.2%(9月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスはこのところ持ち直している。イギリスのサービス輸出は緩やかに増加している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
9月
18日
水
月例経済報告(R6.9.18) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の 停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を 下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域を めぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要 がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の
影響を注視する必要がある。
日本経済の変化と今後の課題
○ 1990年代末以降、長期的に名目賃金・物価の上昇率はともにゼロ%前後で推移してきたが、コロナ禍からの世界経済の回復
や2022年の資源価格高騰を機に輸入物価が上昇。コストプッシュ型物価上昇に対し価格転嫁・賃上げを促進した結果、名目賃金
も上昇に転じ、デフレに陥る前の水準まで伸びが高まり、24年6月には物価上昇率を超え、実質賃金はプラスとなった。
こうした中、金融政策の主な手段は、他の多くの中央銀行と同様、短期金利に戻り、政策金利は0.25%程度になった。
○ この3年間で、名目GDPは56兆円増加し、史上初めて600兆円を超えた。設備投資も過去最高の106兆円、消費も増加となった。
○ GDPギャップは足下▲0.6%程度まで縮小した。一方、潜在成長率は0%台半ば。資本、労働、生産性の各側面から潜在成長率
を引き上げるとともに、価格や賃金をシグナルとした市場経済の本来のダイナミズムを取り戻すことが重要となる。
アフターコロナの世界経済
○ 主要先進国の実質GDPはコロナ禍前の水準を回復。アメリカは、個人消費や設備投資といった民需が景気拡大をけん引して
おり、日本は、いずれの指標でも中位程度の回復となっている。
○ 失業率は、各国ともにコロナ禍で上昇した後、現在はコロナ禍前とおおむね同水準に低下。日本の失業率はピークでも3.1%に
抑えられ、足下は2%台半ばと、先進国最低で推移した。
消費者物価上昇率は、多くの欧米諸国で一時9%前後まで高まったが、現在は2~3%程度まで低下した。日本は、ピーク時は
4.3%となった後、2023年秋以降2%台で推移している。
○ 欧米では、物価上昇率の高まりを受け、2022年以降、金融引締めが急速に進んだが、足下では物価上昇率の低下を受け、
ユーロ圏や英国で利下げが行われるなど潮目が変化しつつある。
個人消費の動向
○ 個人消費は、一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、4月0.0%、5月+0.2%、6月+0.2%、7月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、4月▲1.2%、5月▲2.1%、6月+0.2%、7月+0.3%、8月0.0%。
・7月の実質総雇用者所得は、前期比で▲3.4%となった。
物価
○ 消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移している。円安の是正もあり、円ベースの輸入物価はこのところ下落と
なっている。また、5%以上の物価上昇を予想する世帯の割合が縮小し、家計の予想物価上昇率の平均はやや低下した。
一方、直近では食料品の価格上昇がやや拡大。米、肉類、チョコレートなどの価格の上昇が寄与した。
○ サービスの物価上昇の分布は、コロナ禍前は0%近傍に集中し、価格据置きが続いていたが、足下で、より多くの品目でプラス。
○ 国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。消費者物価は、緩やかに上昇している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、4月+15.8%、5月▲+7.6%、6月▲5.9%、7月+1.0%。
・持家着工数は前月比で、4月▲1.1%、5月▲4.6%、6月+2.0%、7月▲0.4%。
・貸家着工数は前月比で、4月+24.5%、5月▲13.5%、6月▲7.3%、7月+10.1%。
・分譲着工数は前月比で、4月+15.1%、5月+3.3%、6月▲11.7%、7月▲10.4%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%(出来高▲0.6%)、7月+2.1%、
8月11.4%。
雇用・賃金の動向
○ フルタイム労働者の定期給与は春闘賃上げの反映が進み、高い伸びとなっている。特別給与(ボーナス等)は6-7月を通じて
高い伸びとなり、中小規模の事業所の伸びが寄与した。実質賃金では、パート時給は前年比プラスが継続。フルタイム労働者も
2か月連続でプラス。ボーナス等を除く定期給与でも着実に持ち直している。転職により年収が増加する者の割合も上昇している。
○ 最低賃金は、現行制度で最大の引上げ幅となり、全国加重平均で1,055円となった。本年10月以降、パート労働者の賃金上昇
につながることが期待される。最低賃金引上げへの対応として、企業の半数が価格転嫁を挙げる一方、設備投資による生産性
向上を挙げる中小企業は4分の1程度となっている。引き続き、価格転嫁対策とともに、生産性向上に向けた投資の後押し等が
重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、5月1.24、6月1.23、7月1.24(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、3月2.6、4月2.6、5月2.6、6月2.5、7月2.7となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・ 2024年4-6月期の企業収益は、営業利益、経常利益ともに過去最高を更新。
・ 中小企業では、付加価値と人件費が同程度の伸びとなり、労働分配率はおおむね横ばい。
一方、大中堅企業では、付加価値の伸びが人件費の伸びを上回り、労働分配率は緩やかな低下傾向にある。
・過去四半世紀、国内設備投資の成果である固定資産の伸びはわずかで、海外直接投資や現預金が大きく増加。借入はほとんど
増えず、内部留保が拡大した。企業部門の好調さを賃上げや投資拡大に回すことにより、成長型経済の実現につなげる必要がある。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備投資を形態別にみると、持ち直しの動きが続く中で、ソフトウェアなど知的財産生産物への投資が継続的に増加した。業種別
でみると、足下では非製造業がけん引している。
・将来の成長の源泉となる研究開発投資のGDP比は、過去10年程度で、韓国、アメリカ、英国等で大きく上昇しているのに対し、
日本はほぼ横ばいとなっている。無形資産投資の促進を通じた生産性向上が課題である。
・民間建設工事の出来高が横ばい傾向の中、手持ち高は過去最高水準まで増加した。建設業の人手不足の影響もあって、受注工事
の工期が以前よりも長期化している。今後、高水準の手持ち工事高は、徐々に出来高に反映される見込みとなっている。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、このところ増勢が鈍化している。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+12、9月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月▲0.9%、5月+3.6%、6月▲4.2%、7月+3.1%、8月(予測)+2.2%、9月(予測)▲3.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、4月+4.1%、5月▲6.8%、6月▲9.0%、7月+7.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、4月▲1.3%、5月+2.3%、6月▲5.8%、7月+9.7%。
・輸送機械は前月比で、3月+12.6%、4月▲1.7%、5月+12.1%、6月▲6.6%、7月+2.6%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、5月▲1.7、6月+1.3、7月+0.5、8月+1.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、5月▲2.2、6月+1.6、7月+0.4、8月+2.0。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、足踏み状態が続くと見込まれる。さらに、不動産市場の停滞の継続や物価下落の継続による影響等に留意
する必要がある。
・中国の2024年4-6月期の実質GDP成長率は4.7%(前期比年率+2.8%)。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ止まりに
伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカは個人消費を中心に景気は拡大。失業率が4%台で推移する中、雇用者数は増勢が鈍化した。
・消費者物価上昇率は、財価格の低下を受け、2%台に低下。住居費を中心にサービス価格は底堅く推移した。ただし、家賃
や賃金の伸びの鈍化を受け、今後、サービス価格の伸びも鈍化する可能性。
・ 中古住宅価格は上昇が継続しており、住宅購入の際の家計の負担は増している。
・ 2024年4-6月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+3.0%。
○ 雇用者数は増勢が鈍化した、失業率はやや上昇した。
・8月の失業率は4.2%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。ドイツにおいては、景気は足踏み状態にある。
・ユーロ圏経済は、実質GDPの回復にばらつきがある。ドイツ経済は足踏み状態となっている。背景に、2022年以降の輸出の
停滞と、政策 の先行き不透明感による投資マインドの弱さと高い金利水準の継続による設備投資の弱い動きがある。
・ 州別の一人当たりGDPは、旧西ドイツ10州では、旧東ドイツ5州よりも高い。
・24年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.8% (イギリスは+2.3%、ドイツは▲0.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は、横ばいとなっている。イギリスは、おおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(7月)、イギリス+3.4%(7月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱い動きとなっている。イギリスのサービス輸出は緩やかに増加
している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
8月
29日
木
月例経済報告(R6.8.29) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米に おける高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に 伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場 の変動等の影響に十分注意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響
を注視する必要がある。
GDPの動向
○ 我が国の名目GDPは、1973年度に初めて100兆円を超えて以降、約5年毎に約100兆円ずつ増加し、1992年度に500兆円
を超えたが、その後約30年の間、500兆円台で推移してきた。2024年4-6月期に年率換算で史上初めて600兆円を超えた。
○ 4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(年率+3.1%)と、2四半期ぶりのプラス成長となった。消費や投資をはじめ内需が押上げ
に寄与した。個人消費は、物価上昇の下でも増加し、5四半期ぶりに実質でもプラスとなった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。。
・2024年4-6月期の個人消費は、実質GDP成長率を0.5%pt押上げ。1-3月期に消費を大きく押し下げた自動車出荷停止事案の
反動により耐久財が増加したことに加え、半耐久財・非耐久財が共にプラスに寄与。サービスは増加傾向の中で横ばい。
特殊要因の大きい耐久財を除くと、1-3月期、4-6月期ともにプラスの伸びとなった。
・家計の可処分所得は、賃上げの反映や夏のボーナスによる実収入の増加に加え、定額減税の効果もあり、名目・実質ともに
大きく増加した。超過貯蓄の取り崩しはアメリカと比べ限定的となった。今後の消費の下支えに期待。
・4月以降の高気温の影響もあって、家電販売ではエアコンの売上が好調、オリ・パラ需要もありテレビの売上も増加し、全体
として持ち直しの動きとなっている。夏物衣料品の売上も堅調。大手アパレルチェーンは客単価・客数ともに増加傾向にある。
・今年の夏は、全国的に平年を大きく上回る気温を観測した。猛暑日を記録した地点数は、過去5年で突出した多さだった昨年
を上回る傾向。猛暑の影響について、景気ウォッチャーによると、
①エアコンや日傘、アイスクリーム等の季節商材の消費が増加する一方、
②テーマパークやレストラン等で、外出控えにより客足が遠のくなど、プラス・マイナス両面あった。
・報道等によると、8月8日の南海トラフ地震臨時情報発表後、太平洋側を中心にイベント中止、旅館等の宿泊キャンセル等の
影響がみられた一方、POSデータでみると、水や非常食といった防災関連財の売上高は急増した。
・実質総消費動向指数は、前期比で、3月▲0.1%、4月0.0%、5月0.0%、6月+0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%、6月+0.2%、7月+0.3%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で+2.9%となった。
物価
○ 消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移(1図)。8月以降「酷暑乗り切り緊急支援」による電気・ガス料金補助
が開始され、9月から11月にかけて、消費者物価上昇率の押下げに寄与する見込み。
○ 輸入物価は、契約通貨ベースでは23年夏ごろから横ばいの一方、円ベースでは円安の進行により緩やかに上昇してきたが、足下
で円安が是正されたこともあり、下落方向に向かうと見込まれる。
○ 購入頻度の高い品目の価格は、全体平均より高い上昇率となった。主食品では、米の価格は2023年末以降上昇し、7月は前年
同月比+17%と上昇。新米流通による供給量増加を今後見込むが、食料支出割合の高い低所得層等への影響は注視する必要が
ある。
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、緩やかに上昇している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月▲4.4%、4月+15.8%、5月▲+7.5%、6月▲5.9%。
・持家着工数は前月比で、3月▲1.7%、4月▲1.1%、5月▲4.5%、6月+1.9%。
・貸家着工数は前月比で、3月▲7.9%、4月+24.5%、5月▲13.5%、6月▲7.2%。
・分譲着工数は前月比で、3月+0.5%、4月+15.1%、5月+3.3%、6月▲11.7%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%(出来高▲0.4%)、4月+1.4%(出来高+8.1%)、
5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%(出来高▲0.6%)、7月+2.1%。
雇用・賃金の動向
○ フルタイム労働者の現金給与総額(名目)は、2024年上半期は前年比2.7%と27年ぶりの高い伸び率となった。実質賃金では、
パート時給は前年比プラスが継続、フルタイム労働者も、春闘賃上げが反映され始めていることに加え、夏のボーナスが堅調で
あったことから、6月は前年比でプラスとなった。振れの大きい特別給与(ボーナス等)を除く定期給与でも着実に持ち直している。
○ こうした結果、実質総雇用者所得は約3年ぶりに前年比プラスに転じた。
○ 特別給与(ボーナス等)の伸びを事業所規模別にみると、今年は中小規模の事業所の伸びが寄与した。
産業別の所定内給与の伸びをみると、人手不足感の強い建設、運輸等で高い伸びが続くとともに、6月の診療報酬改定等に伴い、
医療・福祉の賃金も伸び始めている。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、3月1.28、4月1.26、5月1.24、6月1.23(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、2月2.6、3月2.6、4月2.6、5月2.6、6月2.5となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・民間企業の設備投資は、2023年1-3月期に名目で年率換算100兆円を超え、2024年4-6月期には106.3兆円と、1991年
(104.9兆円)以来33年ぶりに過去最高を更新した。実質でも持ち直しの動きが続く。
・設備投資の約2割を占める研究開発投資は、24年度計画が+8.7%と、引き続き高い意欲がある。一方、日本企業の研究
開発投資は、米英と比較して製造業に偏っており、情報通信や専門・科学技術サービスなど非製造業で投資拡大の余地がある。
・研究開発は将来の成長の源泉である。日本の15歳時点での数学的・科学的リテラシーは男女ともにOECD加盟国中1位で
あり、研究開発のポテンシャルは高い。能力の高い人材が存分に力を発揮するための教育や組織マネジメントが重要となって
くる。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+12、9月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月+3.6%、6月▲4.2%、7月(予測)+6.5%、8月(予測)0.7%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月+11.6%、4月+4.1%、5月▲6.8%、6月▲9.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、3月+9.2%、4月▲1.3%、5月+2.3%、6月▲5.8%。
・輸送機械は前月比で、3月+12.6%、4月▲1.7%、5月+12.1%、6月▲6.6%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気に敏感な職場で働く人々(景気ウォッチャー)に景気の状況を尋ねた「景気ウォッチャー調査(2024年7月調査:7月25日
~31日)」によれば、①景気の現状判断(3か月前と比べた景気の方向性)、②景気の先行き判断(現状と比べた2~3か月先
の景気の方向性)は2か月連続の上昇となっている。
景気ウォッチャーのコメントでは、インバウンドなどで来客者数の増加に関するコメントがみられた。猛暑による季節商材の販売
好調の一方、外出控えの影響もみられた。物価高に関するコメントは減ってはいるものの、引き続き多くみられた。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、4月▲2.4、5月▲1.7、6月+1.3、7月+0.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、4月▲2.7、5月▲2.2、6月+1.6、7月+0.4。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、足踏み状態が続くと見込まれる。さらに、不動産市場の停滞の継続や物価下落の継続による影響等に留意
する必要がある。
・中国の2024年4-6月期の実質GDP成長率は4.7%(前期比年率+2.8%)。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ止まりに
伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカは個人消費を中心に景気は拡大している。
設備投資は、半導体法等に加えAI需要により情報通信機器が増加。消費者物価上昇率は2%台に低下した。ただし、食料品
等の身近な財・サービスの価格は、コロナ禍前と比較して高い状況。雇用者数は増勢が鈍化した。特に、ヘルスケア等を除く
民間部門の増加幅は縮小。局面が変化しつつある。
・長期的な予想物価上昇率の安定が、雇用の大幅減少なき物価上昇率の低下につながってきた可能性がある。物価と賃金の
ノルムの定着が、安定的なマクロ経済環境の維持のためにも重要であることが示唆されている。
・いわゆるラストベルトと呼ばれる州(オハイオ・ペンシルバニア・ウィスコンシン・カリフォルニア・ミシガン)では、
製造業従事者比率が高いが、ラストベルトの製造業の労働生産性は、全米平均と比較して伸びが低い傾向にある。 世帯所得
中央値は、20世紀には全米平均を上回っていたが、現在は下回っている。また、ラストベルトでは、大卒未満の白人の人口
割合、高齢化率が高い。
・2024年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.8%。
○ 雇用者数は増勢が鈍化した、失業率はやや上昇した。
・7月の失業率は4.3%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの動きがみられる。
・ユーロ圏経済及び英国経済は、実質GDP成長率が2024年4-6月期もプラスになり、景気は持ち直しの動きがある。
・消費者物価上昇率の低下を受け、欧州中央銀行は6月に、イングランド銀行は8月に利下げした。
・24年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.2% (イギリスは+2.3%、ドイツは▲0.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は、おおむね横ばいとなっている。イギリスは、このところ横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(7月)、イギリス+3.4%(7月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱い動きとなっている。イギリスのサービス輸出は緩やかに増加
している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
7月
25日
木
月例経済報告(R6.7.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き 懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の
影響を注視する必要がある。
○ 欧米の輸入物価は、2023年は前年比でマイナスとなり、為替レートの安定を背景とした足下でのゼロ近傍となっている。
一方、アジア諸国はアメリカとの金利差から為替レートが下落した。輸入物価を通じた物価上昇を避け、それぞれの物価安定
目標を達成するために、各中央銀行(中国を除く)は政策金利を引上げた。一部の国は経済政策上の困難に直面している。
令和6年能登半島地震の影響
○ 定額北陸地域の景気ウォッチャーの景況感をみると、2024年1月に大きく落ち込んだ後、足下では全国平均を上回って
回復傾向となっている。北陸及び石川県の鉱工業生産指数も、4~5月にかけて緩やかに持ち直している。地震の影響に
よる稼働停止もあって、2024年1月に大きく減少した混成ICの生産も、昨年末の水準まで回復した。
○ 旅行需要も回復。被害が大きかった石川県の宿泊者数は、「北陸応援割」の効果もあって、3月以降大きく増加した。特に
インバウンドの宿泊者は、3月以降、全国平均を大きく上回る伸びとなっている。
○ 引き続き、現場が抱える課題を速やかに把握し、被災者の生活・生業の再建を始め復旧・復興を進めることが重要となる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・定額減税が6月から始まる中、オルタナティブデータによる週次データでは、6月下旬からは消費支出は増加傾向で推移
している。消費者の景況感も持ち直し傾向にあり、景気ウォッチャーの先行き判断でも、定額減税に対する期待感がみら
れる。
・車販売台数は、昨年末以降の一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響が縮小し、持ち直し。6の新たな認証不正
事案に伴う販売台数への下押しは前回に比べると限定的となった
・消費者マインドのうち物価に敏感な「暮らし向き」を世帯年収別にみると、相対的に収入の高い世帯では横ばいの一方、
相対的に収入の低い世帯では低下しており、ばらつきが拡大していることに留意が必要である。
・実質総消費動向指数は、前期比で、2月+0.4%、3月▲0.1%、4月0.0%、5月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%、6月+0.2%。
・5月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.1%となった。
物価
○ 資源価格をみると、ドルベースでは、原油の上昇は緩やかで、銅の上昇にも一服感がみられるが、円安の進行を背景に、
円ベースでは高止まりとなっている。仕入価格が上昇する中で、企業においては、世界金融危機前とは異なり、販売価格
への転嫁の動きが進んでいる。
○ 中小企業の半数以上が、円安は、原材料や部品、燃料・エネルギーの負担増等により、業績に対してデメリットが大きいと
認識している。また、自社にとって望ましい為替レート水準として、中小企業の約7割は1ドル110円以上135円未満と回答した。
・為替レートは、2022年以降、円安ドル高が進行し、2024年7月初めには1ドル161円台に。
実質実効為替レートでみると、1990年代半ば以降、円安傾向で推移し、直近2024年5月には1973年の変動相場制移行以来
最も低い水準となった。
・実質実効為替レートの長期的な円安傾向は、
①我が国の物価上昇率が貿易相手国よりも低く推移したことに加え、
②足下では、内外金利差の拡大による名目為替レートの円安が主因。
・国際収支も構造変化した。貿易収支は資源価格の高騰で赤字化しやすい構造となり、サービス収支も赤字傾向が継続して
いる。第1次所得収支は拡大し、大幅な黒字である一方、海外子会社の内部留保分など海外に再投資され、円として戻ら
ない部分も多い。
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、緩やかに上昇している。
・消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移している。一方、家計の予想物価上昇率は、本年初め以降、
上昇傾向に転じている。
・サービス物価(消費者物価全体の約5割)は、前年比2%程度で推移しているが、12%を占める公共サービスや18%を占める
家賃の伸びはゼロ近傍で推移している。我が国では、これらの伸びが抑制されている一方、諸外国においては、公共
サービス、家賃ともに物価は上昇した。物価と賃金がともに上昇することがノルムとして定着していく中にあっては、
公共サービス価格においても、賃金引上げにつながるよう人件費の増加が適切に転嫁されることと、国民生活の安定と
のバランスが重要となってくる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月▲0.9%、3月▲4.4%、4月+15.8%、5月▲+7.5%。
・持家着工数は前月比で、2月+7.1%、3月▲1.7%、4月▲1.1%、5月▲4.5%。
・貸家着工数は前月比で、2月▲1.0、▲7.9%、4月+24.5%、5月▲13.5。
・分譲着工数は前月比で、2月▲9.3%、3月+0.5%、4月+15.1%、5月+3.3%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%(出来高▲0.4%)、
4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年の春闘の賃上げ率は、7月の最終集計で、定昇込み5.10%、ベア3.56%と、33年ぶりの高水準となった。5月のフルタイム
労働者の所定内給与は、春闘賃上げの反映により、前年比+2.6%と1994年以来最高となった。産業別には、人手不足感の強い
建設、運輸等で特に高い伸びとなった。
○ 実質賃金の伸びを就業形態別にみると、パート時給は昨年半ばよりプラスに転化し、フルタイム労働者もマイナス幅が縮小した。
30人以上の事業所について、振れの大きい特別給与を除く定期給与の前年比をみると、26か月ぶりにプラスとなった。この夏の
民間企業のボーナスも過去最高額を更新し、高い伸びとなっている。公的部門への広がりも期待がもてる。
○ 職種別の有効求人倍率をみると、人手不足感の高い建設や介護等では3~4倍となる一方、事務職は0.4倍と低い。民間職業
紹介における転職求人倍率でも、事務・アシスタントは足下で0.5倍を下回る低い水準で推移している。さらに、今後は、 多くの
企業が、事務職の業務である定型的な書類作成やスケジュール調整等をAIに代替する意向となっている。
○ AIの導入は、職種や仕事内容によって影響が異なる。IMFの研究によると、英国では、管理職や専門職はAIからより多くの便益
を得る可能性がある一方、事務補助員はAIに代替される可能性が高い。我が国では、AIに代替される可能性がある事務従事者
のシェアが就業者の2割となっており、事務職等の労働者のリ・スキリングは喫緊の課題となっている。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、2月1.26、3月1.28、4月1.26、5月1.24(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、1月2.4、2月2.6、3月2.6、4月2.6、5月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業の業況(全規模)は、製造・非製造業とも改善し、売上の7割を占める非製造業は、引き続きバブル期以降最高水準と
なった。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備投資意欲は引き続き旺盛となっている。23年度実績は前年度比+9%と高い伸びとなった後、24年度計画も6月時点で
10%増と堅調である。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8、9月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月+3.6%、6月(予測)▲4.8%、7月(予測)3.6%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月▲3.2%、3月+11.6%、4月+4.1%、5月▲6.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、2月+0.2%、3月+9.2%、4月▲1.3%、5月+2.3%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、2月▲11.5%、3月+12.6%、4月▲1.7%、5月+12.1%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
・輸出数量は、約半分を占めるアジア向けのうち、韓国・台湾等向けは、世界的な半導体需要の回復により、情報関連財を
中心に持ち直し、ASEAN向けも下げ止まる一方で、景気が足踏み状態にある中国向けは軟調に推移し、全体として
横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.5、4月▲2.4、5月▲1.7、6月+1.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.8%、4月▲2.7、5月▲2.2、6月+1.6。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、足踏み状態が続くと見込まれる。さらに、不動産市場の停滞の継続や物価下落の継続による影響等に留意
する必要がある。
・中国の成長率は4.7%に低下。不動産市場の停滞が続く中で、政策効果が内需の好循環に繋がらず、景気は足踏み状態となって
いる。家計の可処分所得の伸びが低下し、消費は横ばい。構造的な需要不足を反映し、物価は5四半期連続で下落基調となり、
新規貸出は減少した。
・不動産開発の停滞により、地方政府の土地使用権譲渡収入は大幅に減少した。地方財政にも影響がみられる。
・中国の2024年4-6月期の実質GDP成長率は4.7%(前期比年率+2.8%)。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ止まりに
伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカでは景気拡大が継続。実質可処分所得の増加により、個人消費は増加傾向となっている。自動車販売台数は、
高金利が続く中でおおむね横ばいで推移した。コロナ禍後、政策効果等によりEV車が増加するも、24年以降は伸び悩み
がみられる。
・住宅着工件数は、住宅ローン金利が高止まる中で、このところ弱い動きがみられる。
・FRB(連邦準備制度理事会)の使命は物価の安定と雇用の最大化。物価上昇率は高止まりし、失業率は4%程度で推移
している。
・2024年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+1.4%。
○ 雇用者数は増加、失業率はやや上昇した。
・6月の失業率は4.1%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの兆しがみられる。
・24年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.1% (イギリスは+2.9%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの兆しがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに、このところ横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(6月)、イギリス+3.6%(6月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱い動きとなっている。イギリスのサービス輸出は持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
6月
27日
木
月例経済報告(R6.6.27) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き 懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
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○ 世界の景気は、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産
市場の停滞に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動
の影響を注視する必要がある。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・名目個人消費は、総雇用者所得とともに緩やかに増加の一方、実質消費は、実質所得が伸び悩む中、力強さを欠く。
・消費者マインドは、円安の影響もあり家計の予想物価上昇率の上昇を背景に足踏み。年収別のばらつき拡大にも留意が
必要である。
・近年、GDPには原則として計上されない中古品消費が6兆円規模にまで拡大している。中古車に加え、衣服やブランド
品での利用が多い。節約志向のほか、CtoC(消費者間取引)アプリの取引市場の発展や環境志向等が背景にあると
みられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、1月0.0%、2月+0.4%、3月▲0.1%、4月▲0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%。
・4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。
消費者物価は、緩やかに上昇している。
・消費者物価は、年1回の再エネ賦課金改定の影響はあるが、引き続き2%台で推移している。電気・ガスの激変緩和措置は
一旦終了するが、今夏の一時再開により、消費者物価上昇率を抑制する見通しである。ガソリンの激変緩和措置の継続
も物価上昇率の抑制に寄与した。
・コメ価格は、昨夏の猛暑の影響により上昇傾向にある。生鮮野菜も生育不良により一部の品目で5月に平年比を大きく
上回る など、天候不順の影響には注意が必要である。また円安も相まって、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げる
リスクにも留意が必要である。
・物価と収入・賃金に関する最新のアンケート結果(2024年4月)によれば、①消費者は、約半数が「物価と収入がともに
緩やかに上昇する状態」を望ましいとする、②企業も、業種・規模によらず、7割超が「物価と賃金がともに緩やかに
上昇する状態」を望ましいとする。安定的な物価上昇とこれを上回る継続的な賃金・所得の増加を実現することが極めて
重要となってくる。
・日米欧の消費者物価を比較すると、欧米では財価格の伸びは縮小し、サービス価格が安定的にプラスとなる。日本もその
姿に近づきつつある。サービス物価は、BtoB(企業間取引)、BtoC(企業対消費者間取引)ともに、人件費比率が
高い品目の伸びが徐々に高まる傾向にある。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲1.5%、2月▲0.9%、3月▲4.4%、4月+15.8%。
・持家着工数は前月比で、1月+0.4%、2月+7.1%、3月▲1.7%、4月▲1.1%。
・貸家着工数は前月比で、1月+5.0%、2月▲1.0、▲7.9%、4月+24.5%。
・分譲着工数は前月比で、1月▲11.0%、2月▲9.3%、3月+0.5%、4月15.1%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・6月に公表された「建設総合統計」の公共工事出来高は過去に遡って改定された(建設工事受注動態統計の訂正の反映分を
含む。
5月の月例経済報告ではその時点で利用可能であったデータを踏まえ、堅調に推移していると判断。改定後のデータでは、
高水準で底堅い姿にあり、2024年4月の出来高は、年初来増加に転じた受注等を反映し、大きく増加した。
・2023年後半以降、都道府県発注工事等で出来高が減少していたが、足下では、市区町村を含め地方政府発注の公共事業の
進捗がみられる。ただし、都道府県工事は契約率が近年低下しており、引き続き、公共工事の円滑な執行が重要となる。
・請負金額は前月比で、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%
(出来高▲0.4%)、4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%。
雇用・賃金の動向
○ 実質賃金を就業形態別にみると、雇用者の3割を占めるパート労働者は、昨年秋以降、時給ベースで前年比1%弱のプラスに
なった。7割を占めるフルタイム労働者は、時給ベースでは前年比でゼロ近傍まで回復しており、月給ベースでもマイナス幅が
着実に縮小した。一方、パート労働者比率は上昇傾向が続いており、平均の賃金上昇率を下押しする要因になっている。
○ フルタイム労働者の所定内給与の伸びは、2024年4月は2.3%と1994年10月以来の高さとなった。30人以上の事業所で賃金
上昇が先行している。経営側の集計における定昇込みの春闘賃上げ率は、大企業の5.58%に対し、中小企業は3.62%となった。
今後、中小事業所に春闘賃上げを波及させるためには、サプライチェーン全体での適正な価格転嫁の促進が重要である。
○ フルタイム労働者の所定内給与は、医療・福祉、教育といった公定価格分野以外では着実な増加傾向となっている。医療・
福祉は、診療報酬改定等が反映される6月以降の賃上げが期待される。教育に含まれる学校教員等は、地方公務員の4割弱
を占め、12月に反映される公務員給与の改定が鍵になる。
○ 23年度の地方公務員一般行政職の給料月額の平均伸び率は0.1%程度。公務員給与のGDP比が高い県では、賃上げによる
波及効果も高い。公務員の月例給勧告率は、過去は民間ベアと同様であった一方、近年は民間ベアを下回る。
○ パート労働者の時給は増加する一方で、年収の壁の範囲内で収入を抑える就業調整もあって、労働時間は緩やかな減少傾向
が継続し、現金給与総額の上昇が抑制されている。女性の有配偶就業者の年収分布を学歴別にみると、年収200万円未満の
割合は、高校卒では6割、専門学校・短大卒では5割、大学卒では4割弱となっており、能力発揮により世帯所得を向上させる
余地がある。
○ 一定の仮定を置いた試算では、妻が年収の壁を超えて働く場合、世帯の生涯可処分所得として、給与所得分に加え、年金
所得分の増加が、配偶者手当等の減少を大きく上回る。人手不足への対応という観点に加え、世帯の生涯可処分所得の向上
という観点からも、女性が年収の壁を超えて働くことをためらうことがないような情報の周知と環境整備が重要である。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、1月1.27、2月1.26、3月1.28、4月1.26(正社員は1.02)となった。
・完全失業率は、12月2.5%、1月2.4、2月2.6、3月2.6、4月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業収益は経常利益、営業利益ともに過去最高を更新し、企業部門は好調である。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・名目設備投資は過去最高水準となった。知的財産投資や建設投資が増加の一方、機械投資は足踏みがみられていた。先行
指標の機械受注は持ち直し傾向に転じており、今後の機械投資の回復が期待される。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・生産は、半導体製造装置を含む生産用機械を含め持ち直しの動きとなっている。ただし、新たに発生した自動車メーカーの
不正事案に伴う生産停止の影響が懸念される。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月▲0.6%、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月(予測)+6.9%、6月(予測)▲5.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲6.1%、2月▲3.2%、3月+11.6%、4月+4.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲4.0%、2月+0.2%、3月+9.2%、4月▲1.3%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%、3月+12.6%、4月▲1.7%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月+1.1、3月▲1.5、4月▲2.4、5月▲1.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月+0.5、3月▲1.8%、4月▲2.7、5月▲2.2。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに
向かうことが期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直しの動きとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ
止まりに伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカでは高い金利水準が継続し、その長期化が懸念されている。物価上昇率の下げ止まりが背景にある。身近な
財・サービス価格は、一部でコロナ禍前と比較して3割程度高くなっており、低所得者層を中心に個人消費への影響
が懸念される。
・支持政党別の消費者マインドは大統領選前後で逆転する傾向となった。政治情勢が個人消費に与える影響にも留意が
必要である。
・先月発表された中国からの輸入品に対する関税引上げの影響は、2026年以降に本格化する可能性がある。
・2024年1-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+1.3%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・5月の失業率は4.0%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はゆるやかに上昇した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの兆しがみられる。
・2023年秋以降、ドイツ経済は弱含んでいたものの、2024年1-3月期には、輸出がけん引し、景気は持ち直しの兆しが
ある。
フランス経済は、輸出に加え家計消費も景気をけん引した。
・2024年6月、ECBは消費者物価上昇率の低下を受け、政策金利を引下げた。フランス下院総選挙をめぐる財政への
警戒感からフランス長期金利は上昇傾向にある。一方、ドイツ長期金利は、政治的なリスク回避の動きから低下した。
・24年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは+2.5%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの兆しがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっている。イギリスは低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.9%(5月)、イギリス+3.6%(5月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱含んでいる。イギリスのサービス輸出は持ち直して
いる。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
5月
27日
月
月例経済報告(R6.5.27) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的 な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、 海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う
影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要が
ある。
GDPの動向
○ 2023年度のGDP成長率は、名目で5.3%、実質で1.2%となった。名目成長率は1991年度(5.3%)以来の高い伸びである。
○ 2024年1-3月期(1次速報)のGDP成長率は、名目においては前期比プラス0.1%と2四半期連続のプラスとなり、名目GDPの
実額は599兆円と過去最高を更新した一方、実質では前期比▲0.5%(年率▲2.0%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。
・景気の動きによるものとは言えない各種特殊要因がマイナスに寄与した。
具体的には、令和6年能登半島地震の影響のほか、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響もあって、実質前期比
で、個人消費は▲0.7%、設備投資も▲0.8%となった。
・輸出は、前期のサービス輸出の大幅増の反動もあって、実質前期比で▲5.0%となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・2024年1-3月期は、耐久財では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響で大幅に減少(実質GDP成長率への寄与度で
▲0.6%)したものの、消費の過半を占めるサービスは、外食等を中心に増加傾向が継続している。
・4月の状況をみると、一部自動車メーカーの出荷の再開が徐々に進む中、新車販売台数は持ち直しの動きがみられる。
家電販売は、平年比高めの気温もあり、エアコン販売に例年より早めの動きがみられる。
1月に落ち込んだ携帯電話も4月は増加に転じた。
外食売上高は、コロナ禍を経て、店舗数は減少傾向の一方、一店舗当たりの売上は増加、構造変化もみられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、12月▲0.3%、1月0.0%、2月+0.4%、3月▲0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、12月+0.9%、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%。
・3月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.3%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価上昇率はピーク時(2023年1月の4.3%)から低下し、2023年11月以降は2%台で推移している。
・他方、円安により、円ベースの輸入物価に上昇圧力がみられる。中東情勢の不安定化や中国経済の持ち直し期待によって、
原油や銅価格は上昇傾向、小麦など穀物価格も気候要因もあって上昇の兆しがみられる。これらが、国内物価を押し上げる
リスクに留意する必要がある。
・ BtoB(企業間取引)のサービス価格は、過去は1%程度以下で推移してきたが、ここ1年ほどは2%台にレベルシフトしている。
人件費比率が高い分野で顕著な上昇がみられる。広告では、インターネット広告の価格が大きく伸びるなど構造に変化がみら
れる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月+3.1%、1月▲1.5%、2月▲0.9%、3月▲4.4%。
・持家着工数は前月比で、12月+1.7%、1月+0.4%、2月+7.1%、3月▲1.7%。
・貸家着工数は前月比で、12月+0.6%、1月+5.0%、2月▲1.0、▲7.9%。
・分譲着工数は前月比で、12月+9.1%、1月▲11.0%、2月▲9.3%、3月+0.5%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・設備投資の25%を占める建設投資は、着工ベースの工事費予定額では、昨年秋以降増加傾向にあるが、進捗ベースの工事出来高
の増加は途上にある。手持ち工事高は積み上がっており、今後これらが進捗し、投資につながることが期待される。
・公共投資については、進捗ベースの公共工事出来高は、防災・減災、国土強靱化予算の執行の効果もあり、増加が続いており、
堅調に推移している。手持ち工事高も高水準で増加傾向にあり、引き続き、投資としての発現が期待される。
・請負金額は前月比で、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%
(出来高+2.9%)、3月▲10.1%(出来高+1.9%)、4月+1.4%。
雇用・賃金の動向
○ 新たなビッグデータ(給与計算代行サービス)から、本年4月の賃金上昇率をみると、昨年同様、若年層の伸びが高いことに加え、
昨年は横ばいだった40代でも伸びがみられた。33年ぶりの高い伸びとなった今年の春闘賃上げの広がりがみられる。
○ 初任給も、幅広い産業で増加させる企業が増え、伸び率も昨年を大きく上回る。夏季ボーナスも、連合集計では平均支給月数が
前年を上回り、上場企業では、支給金額が前年比4.6%と昨年を上回る伸びとなった。
○ 労働需給のひっ迫に加え、昨年10月の最低賃金引上げもあって、パート・アルバイトの募集時の時給は、全国平均で1,141円、
前年比で3%台半ばの伸び。最低賃金引上げと募集時の時給には正の相関が見られる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、12月1.27、1月1.27、2月1.26、3月1.28(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4、2月2.6、3月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・上場企業の経常利益は1-3月期として過去最高、産業計で年度でも過去最高となった。企業の現預金の水準は他国より高く、
増加傾向。2000年代後半以降、総資産に対する比率も上昇している。企業部門の資金を賃金や投資に回していくことが重要
となる。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、生産活動が低下していたが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・製造業の生産活動は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案により、輸送機械を中心に低下していたが、生産再開に伴い、
3月以降持ち直しの動きがみられる。設備投資に含まれる貨物車(トラック、バン等)の登録台数も、3月以降徐々に持ち直し
の動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、1月▲6.7%、2月▲0.6%、3月+4.4%、4月(予測+4.1%)、5月(予測+4.4%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月+4.4%、1月▲6.1%、2月▲3.2%、3月+11.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、12月+2.0%、1月▲4.0%、2月+0.2%、3月+9.2%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%、3月+12.6%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入おおむね横ばいとなっている。
・財の輸出は、自動車や建設用・鉱山用機械は、供給制約もあって軟調である一方、世界的な半導体需要の回復に伴い、半導体
製造装置は持ち直し傾向が続く。
・鉄鋼輸出は、日本は緩やかな減少傾向の一方、中国が供給過剰を背景に、アジア向けを中心に低価格品の輸出を増大。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
・サービス収支は、旅行では黒字の一方、大宗を占めるその他サービスでは、デジタル関連や保険等で赤字が拡大した。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲1.6、2月+1.1、3月▲1.5、4月▲2.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月+2.1、2月+0.5、3月▲1.8%、4月▲2.7。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうこと
が期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直している。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
★最近の政策対応
○ 自動車の買換え補助金(4/26発表)
・2024年中の買換えに対し最高1万元(約 20万円)を支給。
○ 住宅在庫の買取り等(5/17発表)
・地方政府が国有企業を通じて、住宅在庫の一部を買い取り、低所得者向けの公営住宅に転換。
・地方政府が開発の進んでいない土地を買い戻し、不動産企業の債務を圧縮。
・住宅ローン金利の下限を撤廃、頭金比率の引下げ。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は回復している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等に
よる下振れリスクに留意する必要がある。
・個人消費主導で景気は拡大している。金融引締めが続く中でも高成長が続く背景には、移民流入の上振れや、半導体法
等による設備投資の緩やかな増加がある。
・労働需給は緩和傾向にあり、名目賃金上昇率に一服感がみられるものの、依然として高水準となっている。
・物価上昇率は、前月比でみると、財の寄与が縮小する中で、サービスを中心に緩やかに上昇した。
・2024年1-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+1.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・4月の失業率は3.9%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はおおむね横ばい・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおゆるやかに上昇した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・EUは、1980年代以降市場統合が進展し、2004年には東欧諸国が加盟するなど拡大、中国と同程度の経済規模となった。
実質GDPは、2023年秋以降、ドイツを含むユーロ圏で弱含むものの、底入れに向かうことが期待される。
2023年第3四半期以降、消費者物価上昇率の低下を受け、実質賃金はプラスで推移している。
・2020年にEUを離脱したイギリスは、サービス業が経済成長をけん引してきた。経常収支は赤字傾向となっている。
広告・専門的コンサル等のサービス貿易は黒字傾向である一方、財貿易は赤字傾向にある。
所得収支は、証券投資による収益(株式配当、債券利子)の赤字額が直接投資による収益の黒字額を上回り、赤字傾向。 ・ユーロ圏で急速に存在感を高めているアイルランド経済は、製薬、IT企業を積極的に誘致し高い経済成長を実現した。
イギリスのサービス貿易相手国としても重要な地位を占める。
・2024年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは+2.5%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(4月)、イギリス+4.0%(4月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出は持ち直しの動きがみられる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
4月
23日
火
月例経済報告(R6.4.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外 景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の 影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の 経済に与える影響に十分留意する必要がある。
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○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う 影響
による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP速報
○ 2023年10-12月期(2次速報)のGDP成長率は、実質では前期比+0.1%(年率+0.4%)となった。
令和6年能登半島地震の影響
○ 令和6年能登半島地震では、1.1~2.6兆円程度のストック毀損が生じたことに加え、石川県・富山県・新潟県の3県で1-3月期に
1,000億円程度の直接的なGDPの損失があったと試算される。
○ 3月16日に延伸した北陸新幹線(金沢~敦賀間)は、開業1か月で72万人(1日平均2.3万人)が利用、北陸応援割をはじめと
する政策効果も相まって、北陸経済の活性化に寄与した。
「景気ウォッチャー調査」の北陸地域の現状・先行き判断DIは2月以降50を超える水準に回復した。
引き続き、復旧・復興支援を切れ目なく進めていくことが必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・個人消費は、名目では過去最高水準に拡大する一方、実質では力強さを欠く。
実質の耐久財消費は相対的に堅調な一方、非耐久財消費は長期的に緩やかな減少傾向となっている。
サービス消費も、実質ではコロナ禍前を下回る。
・足下の小売販売は、一部自動車メーカーの出荷停止の影響で自動車は減少する一方、百貨店等が増加した。
かばん・アクセサリー等の高額品が増加しており、インバウンド増加の影響のほか、株価上昇の影響もあり日本人の消費も
増加した。
・外食売上高はコロナ禍前のトレンドを超えて増加している一方、客数の回復は途上にある。消費に占める60歳以上世帯のシェア
は4割超まで拡大した。外食支出の小さい高齢世帯の増加、コロナ禍後の高齢者の外出回復の遅れも影響している可能性がある。
・ 大型連休の旅行者数は、国内はほぼコロナ禍前水準に戻り、海外も持ち直す見込みとなっている。そのほか、ライブやテーマ
パーク、 スポーツ観戦は、売上高・人数ともに挽回消費の動き。学習塾は、少子化の中でも受講生数、売上高ともに底堅い動き
となっている。
・実質総消費動向指数は、前期比で、11月▲0.2%、12月▲0.3%、1月0.0%、2月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月+0.4%、12月+0.9%、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価は、前年比2%台で、引き続き緩やかに上昇した。4月には、食料品や日用品等で値上げが実施されているが、POS
データ(レジから収集される顧客の消費行動をデータ化したもの。販売実績のデータ)でみると、全体として食料品価格等の前年比は、現時点では、
引き続き縮小傾向で推移している。
・中東情勢が不安定化する中、原油価格は再び上昇しており、輸入物価を通じた影響に留意が必要である。
・サービスの物価上昇率は、0%の割合が縮小、プラスの割合が増加し、1980年代の姿に近づいている。企業の中期的な予想
物価上昇率は、ここ2年程度は2%程度の安定的な水準にレベルシフトした状態が継続している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月▲2.0%、12月+3.1%、1月▲1.5%、2月▲0.9%。
・持家着工数は前月比で、11月+1.7%、12月+1.7%、1月+0.4%、2月+7.1%。
・貸家着工数は前月比で、11月▲2.7%、12月+0.6%、1月+5.0%、2月▲1.0。
・分譲着工数は前月比で、11月▲4.8%、12月+9.1%、1月▲11.0%、2月▲9.3%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、10月▲3.3%(出来高▲0.3%)、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%
(出来高+2.6%)、2月+21.7%、3月▲10.1%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年の春闘(第4回集計)の賃上げ率は、引き続き定昇込みで5%超、ベアで3%台半ばと、33年ぶりの高水準となった。
○ 定昇込みの賃上げ率の分布は、昨年は3%強に山があったのに対して、今年は5%強にシフト。ベアの分布は、昨年は2%弱に
山があったのに対して、今年は3%台半ばにシフトしており、より多くの企業で高い賃上げ率が実現している。
○ 昨年2023年の賃上げ率は、若年層、特に高校卒で男女ともに高めだった一方、大学卒は男女ともに中年層で低い傾向と
なった。 また女性の賃金は、男性に比べ、水準が低く、年齢を重ねても上昇幅が小さい。
○ 産業別にみると、昨年は、男女とも、人手不足感の高い建設業等で高い賃上げ率となった一方、医療、福祉など公定価格
部門で は横ばいとなった。本年は、診療報酬改定等における加算措置等により、同分野の高い賃上げに期待される。
(※)診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定において、賃上げに必要な改定率として、医療では+0.88%、介護では+1.59%
(処遇改善加算の一本化による賃上げ効果等も含め ると、2.04%)、障害福祉では+1.12%(同1.5%を上回る水準)を確保。賃上げ促進税制の
活用を組み合わせることにより、2024年度に+2.5%、25年度+2.0%のベアの実現が期待される。
○ 2024年の賃上げの流れを広げるため、適切な価格転嫁や省力化投資の継続、賃金の高い分野への労働移動の後押し、大卒中年
層を含む全世代リ・スキリングが重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・就業者数は、最近、中高年を中心に増加傾向にある。長期的にみると、中高年の労働参加率は男女ともに上昇した。
・日本人の寿命の最頻値は、男性88歳、女性93歳と長く、男性の4分の1、女性の半分が90歳以上まで生きる状況であり、意欲ある
高齢者が長く活躍できる環境をつくることが重要となる。
・主要先進国間で比較すると、日本の高齢者の労働参加率は高く、伸びも大きい。
・有効求人倍率は、11月1.28、12月1.27、1月1.27、2月1.26(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、10月2.5%、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4、2月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備投資のうち、商用車や船舶等の輸送用機械は約6%である。トラックやバンなど貨物車の新車登録台数は、一部自動車メーカー
の生産・出荷停止の影響で、小型と軽を中心に大幅減となった。24年1-3月期の設備投資への一時的な影響に注意が必要である。
・企業の設備投資は、2023年度は実績見込みで前年度比プラス10.2%、2024年度は3月時点の計画としては1990年度以来の伸びとなる
など、企業の投資意欲には力強さがある。ただし、中小企業では、非製造業で2023年度の実績見込みが23%と高い伸びとなった
一方、製造業では一部自動車メーカーの生産停止の影響もあって投資先送りの動きもあるなど、ばらつきもある。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 企業の業況は、売上の約7割を占める非製造業で、バブル期以降の最高水準となった。建設業は過去10年程度、業況が「良い」と
答える企業が、「悪い」と答える企業を上回る。運輸業では近年、「良い」が増加の一方、「悪い」が減少傾向となっている。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、持ち直しに向かっていたものの、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ生産活動が低下している。
・製造業では、一部の業種に、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響がみられる。ただし、3月以降、輸送機械の生産は、
これらのメーカーの生産再開に伴い、徐々に持ち直す見込みとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月+1.2%、1月▲6.7%、2月▲0.6%、3月(予測)+4.9%、4月(予測)+3.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月+1.6%、12月+4.4%、1月▲6.1%、2月▲3.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月▲0.9%、12月+2.0%、1月▲4.0%、2月+0.2%。
・輸送機械は前月比で、11月▲1.6%、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入はこのところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、12月+1.0、1月▲1.6、2月+1.1、3月▲1.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5か月ぶりに月下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、12月+0.1、1月+2.1、2月+0.5、3月▲1.8%。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうこと
が期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。政策効果により、自動車販売やインフラ投資が増加
した。景況感にも改善がみられる。
・一方、不動産市場の停滞は、企業・家計の資金需要や銀行の融資姿勢に影響し、足下で新規貸出は低調となっている。また
消費者物価は4四半期連続ゼロ近傍、GDPデフレーターはマイナスが継続している。物価の下落が続くことによる影響に
留意が必要である。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びが上昇した。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
○ インドでは、景気は回復している。
・乗用車販売台数が伸びるなど、内需にけん引されて8%台の成長が続いている。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・2023年10-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.4%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・3月の失業率は3.8%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はおおむね横ばい・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.2% (イギリスは▲1.2%、ドイツは▲1.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.1%(3月)、イギリス+4.6%(3月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
3月
22日
金
月例経済報告(R6.3.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外 景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
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○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う
影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP速報
○ 2023年10-12月期(2次速報)のGDP成長率は、実質では前期比+0.1%(年率+0.4%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・新車販売(消費に占める輸送機械の割合は2.6%)は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ弱い動きと
なっている。
・国内旅行消費については、宿泊施設の稼働率は、コロナ禍の落ち込みから回復した。一方、宿泊業の就業者数はコロナ禍前に
戻っておらず供給制約。こうした中で、客室単価は上昇する一方、日本人宿泊者数はこのところ横ばいとなっている。
・消費者のマインドや資産価値(株式等)に関する見方は改善が継続している。
・実質総消費動向指数は、前期比で、10月0.0%、11月▲0.2%、12月▲0.3%、1月▲0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月+0.5%、11月+0.4%、12月+1.1%、1月+0.8%、2月+1.1%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価の前年比は、昨年秋以降2%台で推移。なお、資源価格が落ち着く下で、電気・ガスの激変緩和事業の開始から1年
が経過し、押下げ効果が薄まったことから、2月は上昇幅が拡大。一方、食料品は、値上げの一服から、引き続き上昇幅が緩やか
になった。
・デフレに陥る前の1990年代前半以前は、サービスの物価上昇率は2%前後で推移している。足下では、財の物価上昇が落ち着く一方
で、一般サービスの上昇率が徐々に高まり、財の上昇率と同水準となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅の新設着工戸数は、持家を中心に弱含みが続く。長期的にみると、1960年代後半に住宅戸数(ストック)が世帯数を上回り、
持家など戸建の住宅を中心に、新規着工戸数は減少トレンドにある。
・世帯構造の変化をみると、単身世帯等の割合が増加する一方で、夫婦と子供のいる世帯や三世代同居世帯など戸建住宅の需要層と
考えられる世帯の割合が減少した。
・建築費の高止まりの中で、戸建住宅の新設着工が減少する一方で、中古住宅の販売量は増加傾向にある。リフォーム促進等を
通じた中古住宅流通市場の拡大も重要となっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+0.1%、11月▲2.0%、12月+3.1%、1月▲1.5%。
・持家着工数は前月比で、10月▲6.6%、11月+1.7%、12月+1.7%、1月+0.4%。
・貸家着工数は前月比で、10月+0.9%、11月▲2.7%、12月+0.6%、1月+5.0%。
・分譲着工数は前月比で、10月+5.0%、11月▲4.8%、12月+9.1%、1月▲11.0%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、9月+8.5%(出来高+0.7%)、10月▲3.3%(出来高▲0.3%)、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%
(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年春闘(第1回集計)の賃上げ率は、定昇込みで5.28%、ベアで3.7%と、30年ぶりとなった
昨年を大きく上回った。
○ ベアは、中小企業でも3%近い伸びとなり、組合計のベースアップ額は、平均月1万円を超える水準となった。
○ 賃金の改定は、昨年のパターンでは、5月頃から夏場にかけて実際の賃金支払に徐々に反映されている。現在、一般労働者の
所定内給与の伸びは前年比1%台半ばだが、今後高まっていくことが見込まれる。
○ 昨年、3%以上の賃上げを行った中小企業は6割弱、うち価格転嫁ができた企業では7割強となっている。すそ野の広い賃上げの
実現のためには、重層的取引の先端に至るまでサプライチェーン全体での適切な労務費の価格転嫁と製品価格の設定が重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、10月1.30、11月1.28、12月1.27、1月1.27(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、9月2.6%、10月2.5%、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・昨年10-12月期の企業収益は、経常利益・営業利益ともに10-12月期として過去最高となるなど、総じて改善が継続している。
他方、1月の生産活動は、一部自動車メーカーの生産停止により低下した。輸送機械では2月も減少が続く見込みとなっている。
・自動車産業は裾野が広く、関連品目の生産も低下した。また、半導体品目の一部では、令和6年能登半島地震の影響もみられる。
・こうした中、1-3月期の大企業の景況感は、製造業で大きくマイナスとなった。ただし、4-6月期以降の先行きは改善した。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・2023年10-12月期の設備投資は、実質前期比プラス2.0%と上方改定、名目金額(年率換算)は1991年以来初めて100兆円を超えた。
半導体や自動車関連で生産能力強化のための工場新設等の投資が実行され始め、契約金等の支払が進んでいる結果とみられる。
・他方、企業の高い投資計画に比べ、実際の投資の伸びは依然、例年より弱く、引き続き供給制約等の影響に留意が必要となる。
・2024年度の投資計画(2月15日時点調査)は、2023年度の高い実績見込み(9.3%)の後、前年度比7.5%の強い伸びとなっている。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年3月+1、6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+8。
「大企業・非製造業」は、2023年3月+20、6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+24。
「中小企業・製造業」は、2023年3月▲6、6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2023年3月+8、6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+7。
○ 生産は、持ち直しに向かっていたものの、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ生産活動が低下している。
・鉱工業生産指数は前月比で、11月▲0.6%、12月+1.2%、1月▲6.7%、2月(予測)+4.8%、3月(予測)+2.0%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、+10月+0.3%、11月+1.6%、12月+4.4%、1月▲6.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月+6.6%、11月▲0.9%、12月+2.0%、1月▲4.0%。
・輸送機械は前月比で、10月+2.2%、11月▲1.6%、12月+2.0%、1月▲9.9%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入はこのところ弱含んでいる。
・財の輸出は、アメリカ向けは増加傾向が続く一方、欧州向けが弱く、アジア向けも持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・インバウンドについて、訪日外客数は2月として過去最高となった。一人当たり旅行消費額は欧州等からの旅行者が高い。
・財の輸入は、弱含みとなっている。紅海危機の影響により、1月は、欧州からの輸入について、海上輸送割合が高いワイン、
化粧品、自動車部分品等の輸入が大幅に減少した。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月±0.0、12月+1.0、1月▲1.6、2月+1.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月+1.0、12月+0.1、1月+2.1、2月+0.5。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待
される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある。
・実質GDP成長率は、23年10-12月期で前年比+5.2%(前期比+4.1%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
【全国人民代表大会(3/5~11) 主な目標・政策方針(決定)】
○ 24年の成長率目標は5%程度。(23年目標5%程度、実績5.2%)
○ 現状認識:①有効需要が不足し、一部産業(鉄鋼、不動産等)の 生産能力が過剰。
②雇用機会不足とミスマッチ失業が併存。
③一部地方の財政がひっ迫。
○ 財政拡大: 新たに超長期特別国債を発行、24年は1兆元(対GDP比0.8%)。
地方特別債の発行枠:3.9兆元(23年目標3.8兆元)
財政赤字目標は対GDP比3%で維持。
○ 耐久財消費の拡大:自動車の買替え促進(老朽車の強制廃棄を執行)、
自動車ローン頭金比率(現行20%以上)の引下げ等。
○ 重点分野のリスクの防止・解消: 不動産企業の資金需要を支援、ビジネスモデルを刷新。
地方政府の債務リスク解消と行政の安定運営を一体的に推進。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
・韓国経済は、世界的な半導体需要の持ち直しにより、景気は持ち直しの動きがみられる。長期的にみると、1997年のアジア
通貨危機後、 安定的なマクロ経済環境の維持に努めたこともあって着実に成長し、2023年の一人当たり名目GDPは3.3万ドル。
・他方、合計特殊出生率は0.72と低く、人口は50年後(2072年)には約3,600万人に減少することが見込まれている。
○ インドでは、景気は回復している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカの一人当たり名目GDPは約8.2万ドルで、日本の約2.4倍。長期的にみると実質GDPはおおむね2%以上の成長率
で推移。
足下では6四半期連続で2%以上のプラス成長が継続し、2023年は2.5%。2024年も2%程度の見通し。
・安定的な物価上昇と、それを超える名目賃金の上昇に支えられた個人消費の増加が、内需主導の経済成長をけん引している。
・2008年の世界金融危機のような大きな経済的ショックに見舞われても、デフレには陥っていない。
・アメリカは世界の名目GDPの約25%を占める最大のマーケットである。2023年の財輸入においては、カナダ・メキシコ・
中国のシェアが全体の約4割となっている。中国のシェアは、2001年のWTO加盟後に急上昇した。2009年以降首位で
あったが、米中貿易摩擦を契機に、2023年のシェアは2位に低下した。対内直接投資残高では日本は首位である。
・コロナ禍後の就業者数をみると、55歳以上は伸びが停滞しており、外国生まれ労働者の増加にもかかわらず、労働供給の不足
が継続している。株価上昇を背景とした金融資産の増加がコロナ禍後の早期引退に繋がっている可能性。名目賃金上昇率は
高水準で推移しており、物価上昇率は鈍化傾向にあるものの、金融政策に与える影響に留意が必要である。
・2023年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+3.2%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・2月の失業率は3.9%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.2% (イギリスは▲1.4%、ドイツは▲1.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.3%(2月)、イギリス+5.5%(1月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏