月例経済報告

 

月例経済報告(H28.6.17)

基調判断

〈現状〉

・景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

・消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。

〈先行き〉              

先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の

効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の

景気が下揺れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある。こうした中で、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、平成28年(2016年)熊本地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。

個人消費の動向

○ 個人消費は消費者マインドに足踏みがみられる中、おおむね横ばいである。

   ・ 消費総合指数は、前月比で1+0.7%2+0.3%3+0.1%4+0.2%

○ 価格・物価、地震等がマイナスに寄与した。

  

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、このところ持ち直しの動きがみられる。

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1+1.5%2+11.6%3+2.0%4+0.2%

     ・持家着工数は前月比で、1+6.8%2+5.6%3+4.6%4月▲4.7%

・貸家着工数は前月比で、1月▲0.8%2+10.9%、3月▲4.4%、4月+10.6%

・分譲着工数は前月比で、1月▲0.9%2+15.0%3+12.5%4月▲6.0%

   公共投資は、緩やかに減少している。

・請負金額は前月比で、1月+7.6%(出来高+1.6%)、2月▲8.3%(出来高▲1.3%)、

3+4.1%(出来高▲0.8%)、4+19.9%5月▲11.8%

 

雇用・賃金の動向

   有効求人倍率は上昇傾向にある。

・有効求人倍率は、21.2831.3041.34

・完全失業率は、23.3%33.2%43.2%

   総雇用者所得は、緩やかに増加してきている。

4月の名目総雇用者所得は前年比で+2.1%、実質総雇用者所得は前年比で+2.8%

○ 夏季ボーナスは2013年以降、4年連続で前年を上回る見込みである。

 

物価の動向  

    消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している(4月総合前月比▲0.2%)。

   食料や耐久消費財で上昇寄与が縮小した。

   ガソリン価格には上昇の動きがみられる。

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。

○ 中小企業の仕入価格DI(前年比「上昇」-「下落」)は、低下傾向にある。

   ・中小企業の仕入・販売価格の動向について、中小企業月次景況観測(商工中金)の「販売価格

 DI-仕入価格DI」は、1月▲10.52月▲2.93月▲4.74月▲6.35月▲6.3

   ・中小企業景況調査(日本公庫)の「販売価格DI-仕入価格DI」は、1月▲12.02+3.2

3月▲1.94月▲5.65月▲7.4

○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。

   ・機械受注は前月比で、2月▲9.2%3+5.5%4月▲11.0%

1-3月期+6.7%4-6月期見通し▲3.5%)。

・資本財総供給は前月比で、2月▲6.8%3+2.1%4+2.7%1-3月期▲3.1%)。 

 

生産

○ 生産は、このところ横ばいである。

・鉱工業生産は、前月比で、3+3.8%4+0.5%5月(予測)+2.2%6月(予測)+0.3%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3+3.8%4+0.8%5月(予測)+9.3%

6月(予測)▲3.5%

・電子部品・デバイスは前月比で、3+2.8%4+0.3%5月(予測)▲1.6%

6月(予測)▲2.2%

・輸送機械は前月比で、3+7.2%4月▲0.3%5月(予測)▲1.5%6月(予測)+5.0%

○ 半導体等製造装置の生産は、このところ持ち直しの動きである。受注は、増加傾向にある。

○ 乗用車は、熊本地震の影響等もあり、おおむね横ばいである。

軽乗用車は、このところ減少している。

 

外需

   輸出はおおむね横ばいである。

○ 貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。

○ 旅行収支の黒字幅は縮小した。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)は2か月連続の低下となり、季節調整値は5か月ぶりの上昇となった。

・現状判断DIは前月差で、3+0.84月▲1.95月▲0.5

   ・現状・季節調整値DIは前月差で、3月▲3.04月▲1.65+0.6

○ 景気の先行き判断(DI)は4か月ぶりの上昇となり、季節調整値は6か月ぶりの上昇となった。

   ・先行き判断DIは前月差で、3月▲1.54月▲1.25+1.8

  ・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲0.44月▲2.45+1.7

 

中国経済の動向  

○ 中国では、景気は緩やかに減速している。

○ 生産は、伸びが鈍化した。

○ 消費は、堅調に増加しているが、伸びがおおむね横ばいとなった。

○ 輸出は、下げ止まりの動きがみられる。

 

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は回復が続いている。

○ 消費は増加した。

○ 雇用者数は増加し、賃金の伸びはおおむね横ばいとなった。

 

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は緩やかに回復している。

○ ドイツでは、景気は緩やかに回復している。

 ・ ドイツの設備投資・生産は持ち直しの動きがみられる。

★ イギリスのEU残留・離脱を問う国民投票(623日実施予定)

<英国経済>

• EUでのGDPシェア(2015年)は、17.6%(ドイツについで第2位)。

• 日本からの主な投資分野は、金融・保険業、自動車、重電などである。

<離脱選択時の手続の流れ(見込)>

1. 英国は欧州理事会に脱退の意思を通告(欧州議会の同意を得て、脱退交渉を開始)。

2. 脱退通告後2年経過すれば、交渉がまとまっていなくともEU基本条約の不適用を選択可能。

※欧州理事会は、英国の同意を得て全会一致で交渉期間を延長可能。

<離脱選択時の英国経済への影響試算(英国財務省)>

• 短期的(2年以内)に、不確実性の高まりに伴い、GDPを▲3.6~▲6.0%程度押し下げる

ショックが生じる可能性。

• 離脱15年後、EU残留の場合と比較し、GDPを▲3.8~▲7.5%程度押し下げる可能性

(複数のシナリオあり)。

 <イギリス財務省の離脱15年度の影響試算(抜粋)>

想定ケース

(離脱後のEUとの関係)

EU加盟に近い経済関係

(例;ノルウェーなどの

欧州経済境域加盟国)

EUとの経済協定なし

GDP縮小幅(%)

3.8

7.5

関税関係

農業、漁業関係の一部を除き、

関税撤廃

EU域外の国に対する一般的な関税の適用(2014年平均5.3%

その他の規則等

EUの規則の大半を適用

(人の移動の自由、製品規制、

環境規制、社会政策等の適用

EU域外の国に対する一般的な規則の適用

 

新興国経済の動向 

○ 各国の実質GDP成長率のIMFの経済見通しは、それぞれ前年比で、下記のとおりである。

ブラジル;2015年▲3.8%2016年▲3.8%2017年±0%

      インド;2015+7.3%2016+7.5%2017+7.5%

     インドネシア;2015+4.8%2016+4.9%2017+5.3%

     ロシア;2015年▲3.7%2016年▲1.8%2017+0.8%。 

        サウジアラビア;2015+3.4%2016+1.2%20171.9%

     新興国平均;2015+4.0%2016+4.1%2017+4.6%。