第7回日中与党交流会出席のため、12月24日~29日まで、中国福建省、北京を訪問して参りました。
今回の協議会のメインテーマは、「平和・友好・協力を堅持し、両国民の幸福のために努力しよう」でした。
経済セッション、政治セッション、人的・文化交流セッションで議事が進められ、私は、政治セッションでリードスピーチを行いました。
来年は、日中平和友好条約締結40周年です。日中の更なる友好と互恵の為に、相互理解・相互信頼関係をより一層深める年にしなければなりません。
第7回日中与党交流協議会
「政治」セッションリードスピーチ
自由民主党の国会対策委員長の森山です。
はじめに、第7回日中与党交流協議会の成功裏の開催を心からお祝い申し上げます。宋濤(そう・とう)中連部長をはじめとする中国側の皆様からの御招待と温かいおもてなしに、感謝の意を表します。
また、第19回中国共産党大会のご成功を、心からお祝い申し上げます。更に、宋濤(そう・とう)部長の中央委員就任、誠におめでとうございます。
昨日まで、世界遺産に登録されている武夷山(ぶいざん)に滞在しましたが、非常に美しい自然に囲まれ、青々とした山と川が連なる、まさに「山紫水明」な場所であり、大変感動を覚えました。
ここ福州市も、遡ればその歴史は非常に古く、華僑による交易によって大変栄えてきた都市だと承知しています。また、古くから琉球との交流が盛んだったこともあり、その縁で、沖縄県那覇市と友好都市関係を結んでおられます。世界中の人々、あるいは中国国内のあらゆる方面の人々が、それぞれの時代において交わってきたここ福州は、日本と中国の政治家が、政治的信頼関係構築の方途について、率直に意見交換するのには、大変ふさわしい場所だと感じております。
本年は、日中国交正常化45周年ですが、来週には新しい年とともに日中平和友好条約締結40周年を迎えます。日本と中国が1972年国交正常化によって産声を上げた両国間の外交関係を、より強固なものにし、発展させるため、日中双方が叡智を結集した結果、歴史的な平和友好条約が締結されました。
来年は、同時に鄧小平(とう・しょうへい)副総理が掲げた「改革開放」40周年でもあります。その「改革開放」政策を支援し、中国の近代化建設に寄与し、対中政治・経済関係を促進するために、日本の対中ODAは、大いに力を発揮しました。1979年から続けてきた円借款の貸付けが、本年9月に完了しました。中国の経済発展に貢献し、日中の友好と協力の象徴となった累計3兆円を超える有償資金協力は、中国の現在の力強い経済発展の正に基礎を作ったとも言えると思います。
一方、中国は、日本からの援助だけに頼らず、自助努力を怠ることなく、自ら未来への投資を続けてきたことで、世界第二の経済大国にまで成長しました。
お互い助け合い、切磋琢磨しながら国を発展させてきたことが、日中の友好と互恵の歴史であり、こうした客観的事実を、双方が良く認識し、客観的に評価することにより、相互理解、相互信頼関係はより一層深まるのではないでしょうか。
政治の分野においては、信頼関係を持続しかつ安定的にするために、より能動的にかつ積極的なリーダーシップが必要です。経済やビジネスでは、市場原理や実利により、両国を自然とウィンウィンの互恵関係へと導いてくれる可能性があります。また、文化や人的交流の側面を見れば、日中双方はそれぞれ豊かな文化と交流の歴史があり、お互いが敬意を持っていることは間違いありません。
しかし、政治や安全保障分野においては、国益と国民を守るために、日々、政治家は国家の政策を考案し、実行し、国をより安全かつ豊かにしていくことを目指します。時には、日中双方の国益がぶつかることで意見が衝突したり、激しく競争したりもします。そうした観点からすれば、少しずつ日中関係が改善されてきているとはいえ、今も日中の間には、小異があり、お互い猜疑心や警戒心があることは否定できません。
中国には、「仁(じん)に親しみ、隣(りん)に善くするは、国の宝なり」という故事があると承知しています。すなわち、隣国と仲良くすることは、国の宝であり、決して財産だけが宝ではない、という教えだと思います。全くそのとおりです。
そうした考えの下、正に2008年の日中共同声明にうたわれた「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という共通認識は、いつまでも引き継いでいかなければなりません。
疑心暗鬼を少しでも和らげ、相互信頼を醸成するための枠組みとして、政府間では様々な分野の協議や対話が重層的に存在しており、最近、その多くが再開、あるいは頻繁に開催されていると承知しています。
同時に、我々政治家には、日中政党間交流や議員交流があり、着実に実績を残しています。この「日中与党交流協議会」のみならず、超党派の定期的な交流や若手議員交流も活発に行われていることをうれしく思います。先般、何毅亭(か・きてい)中央党校副校長に来日していただいたことも、政治信頼の構築のために非常に有益でした。同時に、先般の「中国共産党と世界の政党ハイレベル対話会」も、中国による政党間交流の強化の一環として高く評価しており、我々政権与党として積極的に参加させていただきました。
我々政治家が、日中友好親善のために率先してリーダーシップを発揮すれば、両国は持続的かつ安定的な関係を推進することができます。引き続き、中連部とさらなる緊密な関係を構築し、日中の政治のパイプを太くしていくことは、両国にとっての宝であることは疑いの余地がありません。
また、日中の二国間関係のみならず、我々の周りを見渡せば、緊迫する北朝鮮情勢について触れないわけにはいきません。今年は日中関係改善の年であった一方、北朝鮮による度重なる挑発によって、北東アジアの緊張が高まった一年でもあります。北朝鮮は、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し、明確に安保理決議に違反する行為を続けています。
こうした状況において、日中が今まで以上に連携して対応する必要があります。中国が様々な措置を通じて、北朝鮮の挑発に対して毅然と対応していることを評価しています。誰も戦争は望んではいません。引き続き朝鮮半島の平和と非核化、及び拉致問題の解決を追求すべく、日中が協力して取り組んでいくことを強く期待します。
また、世界中どの海域においても、航行・上空飛行の自由と法の支配が貫徹されることが大切です。ここ福州は、東シナ海と南シナ海の間に位置する、中国の海洋貿易にとっての重要な玄関口であり、自由で開かれた海洋秩序から裨益(ひえき)してきたと思います。
日本も、島国として、主に海洋交易によって、豊かさがもたらされてきました。先般、第8回日中高級事務レベル海洋協議が上海で開催され、多くの成果が得られたと承知しています。東シナ海の安定なくして、真の関係改善はありません。引き続き東シナ海を「平和・協力・友好の海」としていくことが重要であり、それを実現するために、日中両政府が、政治的なリーダーシップを発揮されることを強く期待します。
我々政権与党は、先般の総選挙で勝利を収め、これまで同様、「戦略的互恵関係」の考えの下、日中関係を力強く、かつ安定的に進めることについて、日本国民の信任を得ました。
永い歴史を持つ隣国ゆえに小異は当然あります。
しかし、「遠水(えんすい)は近火(きんか)を救わず」。遠くにある水では、近くの火事の役には立ちません。
このことを東日本大震災や熊本地震に際して、手を差し伸べてくださった中国からの温かい支援により、私は改めて実感しました。
「心と心」の通じ合う関係をいかに日中で作っていけるか。その方策を見つけ、両国民が何のためらいや警戒心もなく、日中友好を積極的に広め、相互信頼を高めていけるような環境作りを行っていくことが、政治家の役割であり、政治の使命ではないでしょうか。
御清聴ありがとうございました。