月例経済報告(R2.3.26) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、足下で大幅に 下押しされており、厳しい状況にある。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる。また、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意 する必要がある。 金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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個人消費の動向
○ 個人消費は、感染症の影響により、このところ弱い動きとなっている。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、10月▲4.2%、11月+1.3%、12月▲0.8%、1月+1.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月+0.6%、11月+2.5%、12月+0.4%、1月±0.0%、2月▲0.7%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で±0.0%となった。
※サービス消費の動向
○ 人の移動が制約されるなかで、3月前半の新幹線の利用者数は半減。
(九州新幹線:前年比2月▲6%、3月(1~7日)▲46%)
○ 宿泊施設の稼働率も大きく低下している。内外の観光客の多い地域で影響が大きい。
(九州地区宿泊施設稼働率:前年同期比3月前半▲48.8%)
○ 2月の外食売上は、業態によってばらつきがみられる。
テイクアウトの利用増がみられるファーストフードに対し、パブ・居酒屋で落ち込みが目立つ。
※財の販売動向
○ 百貨店売上は、新型コロナウイルス感染症の影響により、1月以降、月を追うごとに前年比のマイナス幅が拡大している。
○ 3月前半は、インバウンド売上が激減。これに加えて、国内客からの売上も減少した結果、前年比3~4割の減少となった。
○ 底堅く推移してきたコンビニ販売は、新型コロナウイルス感染症の影響による外出控えを背景に、2月後半から前年比減と
なった一方、スーパー販売は、買いだめの動きもあり、前年比増となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月▲1.1%、11月▲5.2%、12月▲1.9%、1月▲3.2%。
・持家着工数は前月比で、10月▲1.8%、11月▲3.1%、12月▲1.0%、1月▲3.3%。
・貸家着工数は前月比で、10月▲2.4%、11月▲0.5%、12月▲0.8%、1月▲0.2%。
・分譲着工数は前月比で、10月+1.7%、11月▲14.1%、12月▲4.5%、1月▲6.9%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前年比で、10月+5.5%(出来高+0.8%)、11月▲0.7%(出来高+0.2%)、12月▲7.3%(出来高▲0.9%)、
1月+5.2%(出来高▲0.5%)、2月▲1.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は改善してきたが、感染症の影響がみられる。
・労働需給は引き締まった状態が続き、雇用情勢は改善してきたが、日次の動きをみると、足下では有効求人数が
減少している。
・有効求人倍率は、9月1.57、10月1.57、11月1.57、12月1.57、1月1.49(正社員は1.07)となった。
・完全失業率は、9月2.4%、10月2.4%、11月2.2%、12月2.2%、1月2.4%となった。
・なお、連合第2回回答集計では、賃上げ率は1.94%と昨年(2.13%)を下回るものの、多くの企業でベアを実施するとの回答で
ある。
・民間転職市場の求人数をみると、サービスが減少に転じており、全体も弱含みとなっている。
また、2月のアルバイト・パート時給は、イベント・クリエイティブ関連などで1月から低下している。
・ヒアリングによると、雇用調整助成金の活用も含め、企業側では雇用維持に努める姿勢もみられる。
ただし、既に人材派遣や求人に影響がみられており、今後の動向には十分な注意が必要である。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ横ばいとなっている。(2月総合前月比▲0.1%)。
○ 消費者物価上昇率は、1月総合前年比±0.0%。
投資・収益・業況
〇 企業収益は、製造業を中心に弱含んでいる。
〇 設備投資は、おおむねよこばいとなった。
○ 業況は、製造業を中心に、弱含んでいる。業況判断は、感染症の影響により、悪化している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年3月+12、6月+7、9月+5、12月+0、2020年3月+0。
「大企業・非製造業」は、2019年3月+21、6月+23、9月+21、12月+20、2020年3月+18。
「中小企業・製造業」は、2019年3月+6、6月▲1、9月▲4、12月▲9、2020年3月▲12。
「中小企業・非製造業」は、2019年3月+12、6月+10、9月+10、12月+7、2020年3月+1。
生産
○ 生産は、引き続き弱含んでいる。
・中国からの部品供給の滞りが、サプライチェーンを通じて、我が国の生産に影響している。
・ヒアリングによると、新型コロナウイルス感染症による、サプライチェーンを通じた影響や、インバウンド需要・海外需要の減少
による生産調整の動きも聞かれている。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月+1.2%、1月+1.0%、2月(予想)+5.3%、3月(予想)▲6.9%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、10月▲6.4%、11月▲8.7%、12月+16.2%、1月▲3.5%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月+0.9%、11月+0.1%、12月+3.3%、1月▲1.3%。
・輸送機械は前月比で、10月▲7.8%、11月+4.1%、12月▲4.0%、1月+6.6%。
◎ 新型コロナウイルス感染症の生産への影響(ヒアリング等)
輸送機械(自動車):サプライチェーンを通じた影響や世界的な需要の減少により、生産調整を実施。
化学(化粧品):インバウンド客減により、販売が減少。在庫が積み上がっており、今後の需要に応じて対応を検討。
鉄鋼・非鉄:鉄鋼は、中国を中心に在庫が積み上がっていた中、需要が低迷。市況悪化を受け、日本メーカーは減産。
生産用機械(工作機械):中国需要が低迷し、渡航制限等で営業もできない中、受注が低調。
外需
○ 海外経済の減速を背景に、輸出は、弱含みが継続している。
加えて、足下では新型コロナウイルス感染症による下押ししている。
・中国向け輸出は、春節の影響を除いても平年より弱い。
・1-2月合計の訪日外客数は、中国人外客を中心に、大きく減少した。これにより、インバウンド消費も大きく下押しされた。
○ 輸入は、感染症の影響により、このところ減少している。
・新型コロナウイルス感染症による供給制約を受けて、中国からの輸入が大きく減少した。
○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、街角景気は急速に厳しい状況となった。先行きについても、一段と厳しい
状況になるとの見込みである。
・街角景気を業種別にみると、小売、サービス、飲食関連が大きく低下。
小売では、百貨店が悪い一方、スーパーは底堅く、ばらつきがある。
サービスは旅行関連で特に厳しく、飲食は総じて厳しい。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに大きく下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月+2.7、12月+0.9、1月+2.2、2月▲14.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月+2.0、12月▲0.4、1月▲3.7、2月▲17.2。
アジア経済の動向
〇 中国では、感染症の影響により、経済活動の大幅な縮小が生じており、足下で景気は減速している。
・新型コロナウイルス感染拡大防止のため、強力に進められた移動制限・休業措置等 により、1~2月の消費・生産が
大幅に減少した。
・2019年10-12月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.1%となった。
・生産は、大幅に減少した。
・輸出は、減少した。
・消費は、大幅に減少した。
・消費者物価上昇率は、このところ高まっている。
〇 その他のアジア諸国・地域においては、感染症の影響により、経済活動が抑制されており、景気が下押しされている。
・韓国・タイでは、足下で景気は弱まっている。
・台湾では、足下で景気回復は緩やかになっている。
・インドネシアでは、景気回復は、緩やかになっている。
・インドでは、景気は弱い動きとなっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、感染症の影響により、経済活動が抑制されており、足下で景気の回復が下押しされている。
・3月上旬の製造業・非製造業の景況感が悪化した。
・2019年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低水準でおおむね横ばいとなった。
・2月の失業率は、3.5%となった。
○ 生産は弱い動きとなっている。
〇 設備投資は減少している。
〇 消費はゆるやかに増加し、自動車販売台数はおおむね横ばいとなった。
○ 製造業の景況指数はおおむね横ばいとなっている。
○ 輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリスともに、感染症の影響により、経済活動が抑制されており、景気は足下で弱い動きとなっている。
ドイツにおいても、足下で景気は弱い動きとなっている。
・2019年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.5%
(イギリスは+0.1%、ドイツは+0.1%)。
○ ユーロ圏・イギリスともに3月のサービス業の景況感は過去最大の下落幅となり、水準も過去最低値となった。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動きとなっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、おおむね横ばいとなった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなり、イギリスは安定した。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.3%(2月)、イギリス+1.6%(1月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は弱含み、イギリスはこのところ増加となった。