月例経済報告

 

月例経済報告(R2.6.19)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、極めて厳しい

状況にあるが、下げ止まりつつある。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の

レベルを段階的に引き上げていくなかで、各種政策の効果もあって、

極めて厳しい状況から持ち直しに向かうことが期待される。ただし、

国内外の感染症の動向や、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

 

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、緊急事態宣言の段階的な解除に伴い、持ち直しの動きがみられる。

・一方、カード支出に基づく消費動向をみると、5月後半には上向きの動きもみられる。

・個別にみても、消費者マインドは低水準ながらも悪化に歯止めがかかっており、外食売上高や新幹線利用者数は底打ち、家電販売額や大手百貨店の

売上高は持ち直しの動きがみられる。

      ・消費総合指数(実質)は、前月比で、1+1.2%2+0.6%3月▲0.1%4月▲1.8%

      ・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月▲0.2%2月▲0.5%3月▲7.4%4月▲9.3%5+2.4%

4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.8%となった。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、弱含んでいる。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲4.6%2+7.2%3+3.9%4月▲12.0%

・持家着工数は前月比で、1月▲5.4%2+10.0%3+6.9%4月▲16.1%

・貸家着工数は前月比で、1+1.1%2+0.3%3+3.1%4月▲14.3%

・分譲着工数は前月比で、1月▲9.3%2+12.8%3+1.3%4月▲4.5%

   公共投資は、底堅く推移している。

・請負金額は前年比で、1+5.2%(出来高▲0.5%)、2月▲1.9%(出来高▲0.8%)、3+14.8%(出来高+2.5%)、4月▲9.2%(出来高+0.5%)、5月▲0.7%      

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱さが増している。

休業者は、4月に452万人増え652万人となった。企業が必死に雇用を守り、踏みとどまっている状況となっている。

・労働時間の減少に伴い、給与は減少している。雇用調整助成金による雇用の下支えが引き続き重要である。

・4月は女性や高齢者を中心に就業者数が大幅に減少し、求職活動を行っていない非労働力人口が94万人増加した一方、失業者数は6万人の

 増加にとどまった。経済活動を段階的に引き上げていくなかで、こうした層が再び就労状態に戻れるようにすることが重要である。 

  ・有効求人倍率は、121.5711.4921.4531.3941.32(正社員は0.98)となった。

   ・完全失業率は、122.2%12.4%22.4%32.5%42.6%となった。

   

物価の動向  

  国内企業物価は、下落した。

消費者物価は、横ばいとなっている。(5月総合前月比0.0%)。

  

投資・収益・業況

○ 企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に減少している。

・1-3月期の企業収益は、感染症の影響による国内外の売り上げ減から、製造業・非製造業ともに急速な減益となった。

○ 設備投資は、このところ弱含んでいる。

  ・1-3月期の設備投資は、台風の影響に見舞われた1012月期からの反動もあって、増加した。

  先行きは、大企業やソフトウェア投資の計画は底堅いが、全体として慎重な見方となっている。

○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の兆しがみられる。

・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20196+79+512+020203月▲86月▲11

    「大企業・非製造業」は、20196+239+2112+2020203+86月▲1

    「中小企業・製造業」は、20196月▲19月▲412月▲920203月▲156月▲29

    「中小企業・非製造業」は、20196+109+1012+720203月▲16月▲19

 

生産

○ 生産は、輸出が急減するなかで減少している。

   ・輸出と同様、自動車を含む輸送機械が弱い。ただし、各国の自動車販売は5月には持ち直しの動きとなった。

   ・日本車の現地生産比率は、アジアで高く、欧米で低いことから、今後、アジア向けでは自動車の部分品、欧米向けでは完成車の輸出が持ち直しに転じる

   可能性がある。

   ・国内自動車生産は、5月を底に、6月には減少幅の縮小が見込まれている。

 ・鉱工業生産指数は前月比で、3月▲3.7%4月▲9.8%5月(予想)▲4.1%6月(予想)+3.9%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲3.5%2月▲5.0%3月▲10.0%4+4.1

・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲1.3%2+8.3%3月▲3.1%4月▲2.7%

・輸送機械は前月比で、1+6.6%2月▲5.0%3月▲4.3%4月▲34.8%

 

外需

○ 輸出は、海外需要の減少を背景として欧米向けを中心に急減した。

・財別では自動車関連財が急落した。

   ・一方、情報関連財は、5G対応やデータセンター向けを中心にICが堅調となっている。

半導体製造装置も底堅く、これらの品目がアジア向け輸出を下支えしている。

  ※ 海外の景況感は中国で3か月連続改善、米欧でも5月は上昇した。ただし、感染症の第2波、第3波を含め世界全体で不確実性は高く、輸出の先行きを

     左右する海外経済の動向は引き続き注視していく必要がある。

 ○ 輸入は、感染症の影響は残るものの、このところ下げ止まりつつある。

 ○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 5月の街角景気は、現状・先行きともに大幅に上昇。特に先行きは、緊急事態宣言の解除を背景に過去最大の上昇幅となった。持ち直しへの

  期待がみられる。

  ・現状のDIは全分野で上昇し、特に小売・飲食・サービス関連が大きく上昇した。 

   ・ただし、雇用関連 は改善テンポが鈍い。求人の減少、派遣労働者の契約終了、新卒採用の弱さ等に関するコメントが目立つ

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに大きく上昇した

  ・現状・季節調整値DIは前月差で、2月▲14.53月▲13.24月▲6.35+7.6

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、6か月ぶりに過去最大幅で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月▲17.23月▲5.84月▲2.25+19.9

 

アジア経済の動向  

〇 中国では、引き続き厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きが続いている。

   ・20201-3月期の実質GDP成長率(前年比)は▲6.8%となった。

・生産は、持ち直しの動きが続いている。

・輸出は、減少した。

・消費は、大幅な減少からは持ち直している。

・消費者物価上昇率は、やや低下している。

・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。

〇 その他のアジア諸国・地域においては、感染症の影響により、経済活動が一段と抑制されており、景気が下押しされている。

・韓国・インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。

・台湾では、景気は減速している。

 ・タイ・インドでは、景気は極めて厳しい状況にある。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。

20201-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率▲5.0%

○ 雇用者数は増加に転じており、失業率は低下している。

 ・5月の失業率は13.3%となった。

○ 生産は持ち直しの動きがみられる。

○ 設備投資は大幅に減少している。

○ 消費・自動車販売台数はともに大持ち直しの動きがみられる。

○ 製造業・非製造業ともに持ち直しの動きがみられる。

○ 財輸出は大幅に減少した。

 

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。

   ・20201-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲13.6%

   (イギリスは▲7.7%、ドイツは▲8.6%)。

○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資は大幅に減少しており、イギリスでは弱い動きとなっている。

○ 自動車販売台数は、大幅な下落が続いている。

   ・4月の自動車登録台数は前年同月比で、ユーロ圏▲52.4%、ドイツ▲49.5%、イギリス▲89.0%

○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、大幅に減少しているが、一部に持ち直しに向けた動きがみられる。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ低下している。

   ・5月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.2%、イギリス+1.3%

○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに大幅に減少している。