月例経済報告(R2.7.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の レベルを段階的に引き上げていくなかで、各種政策の効果もあって、 持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、令和2年7月豪雨の経済に 与える影響や金融資本市場の変動に十分留意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は持ち直しの動きがみられる。各国の自動車販売も持ち直しが続いている。
ただし、アメリカや一部の新興市場諸国における感染拡大のリスクに十分留意する必要がある。
中国の景気は先行して持ち直しているが、消費や雇用には回復の遅れもみられる。
個人消費の動向
○ 個人消費は持ち直している。
・カード支出に基づく消費動向は、上向きの動き。品目別でも、家電販売は前年比プラスで推移しており、外食売上高は持ち直しの動きがみられる。
・消費を取り巻く環境をみると、所得面では、特別定額給付金の給付は着実に進展、夏のボーナスは前年を下回るものの、近年の水準を維持している。
・消費者マインドには、持ち直しの動きがみられるものの、7月以降、感染者数の増加等による下押しに留意する必要がある。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、2月+0.6%、3月▲3.5、4月▲7.1%、5月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月▲0.5%、3月▲7.4%、4月▲9.3%、5月+2.4%、6月4.4%。
・5月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.8%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月+7.2%、3月+3.9%、4月▲12.0%、5月+1.3%。
・持家着工数は前月比で、2月+10.0%、3月+6.9%、4月▲16.1%、5月▲2.8%。
・貸家着工数は前月比で、2月+0.3%、3月+3.1%、4月▲14.3%、5月+11.7%。
・分譲着工数は前月比で、2月+12.8%、3月+1.3%、4月▲4.5%、5月▲5.3%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、2月▲1.9%(出来高▲0.8%)、3月+14.8%(出来高+2.5%)、4月▲9.2%(出来高+0.5%)、5月▲0.7%(出来高+2.3%)、6月+4.2%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっている。
・休業者は、5月には一部は仕事に戻ったものの、501万人と依然高水準となっている。雇用を守っている企業には雇用調整助成金による
下支えが重要である。4月は女性や高齢者を中心に非労働力化の動きもみられる。5月は一部で労働市場に戻る動きもみられるが、失業者数
も徐々に増加している。
・6月の民間転職市場の求人は横ばいで推移し、7月のハローワークの日次有効求人数は前年比マイナス幅が縮小するなど、足下で、求人には
下げ止まりの兆しがみられる。
・有効求人倍率は、1月1.49、2月1.45、3月1.39、4月1.32、5月1.20(正社員は0.90)となった。
・完全失業率は、1月2.4%、2月2.4%、3月2.5%、4月2.6%、5月2.9%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、下げ止まっている。
消費者物価は、横ばいとなっている。(6月総合前月比+0.6%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に減少している。
・企業収益は2019年度に続き、2020年度も減益の見込みである。製造業では「輸送用機械」、非製造業では「宿泊・飲食サービス」や娯楽業等を含む「対個人
サービス」などの減益率が大きく、資金繰りも3月に比べて悪化傾向となった。
・こうした中、政府の資金繰り支援は着実に進捗しており、倒産は、5月の一時的な減少の後、再び以前の水準へと戻っている。
○ 設備投資は、このところ弱含んでいる。
・生産が低水準にあるなかで、製造業、非製造業ともに設備過剰感が高まっている。
・2020年度設備投資計画も、企業収益の悪化や先行き不透明感の高まりを受けて、全体として慎重な見通しとなっている。
・中でも、ソフトウェア投資は引き続き堅調。また、新技術のための開発投資や物流施設の整備などを予定している業種では、設備投資は増加見通しである。
◎ 業種別設備投資額前年度比
製造業
・非鉄金属 +16.1%……次世代自動車や半導体・エレクトロニクスなどの最新技術に対応した新材料、新部品の開発投資
・食料品 +12.9%………物流施設(冷凍倉庫など)への投資のほか、工場の生産効率の改善、省人化に向けた投資
・化学 +10.0%…………電気自動車向けリチウムイオン電池材料の開発、エレクトロニクス関連の光学フィルムへの継続投資
非製造業
・不動産 +5.1% ………都市部再開発や物流施設・大型複合施設の建設
・運輸・郵便 +2.1%……鉄道高速化や安全対策、不動産開発のほか、物流施 設の整備に向けた投資
・通信 +1.1%………… ネットワークインフラの増設投資、金融・決済サー ビスの拡充投資
○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の兆しがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年9月+5、12月+0、2020年3月▲8、6月▲34、9月▲27。
「大企業・非製造業」は、2019年9月+21、12月+20、2020年3月+8、6月▲17、9月▲14。
「中小企業・製造業」は、2019年9月▲4、12月▲9、2020年3月▲15、6月▲45、9月▲47。
「中小企業・非製造業」は、2019年9月+10、12月+7、2020年3月▲1、6月▲26、▲33。
生産
○ 生産は、総じてみれば、減少しているものの、このところ一部に持ち直しの兆しがみられる。
・予測調査によれば、生産は5月を底に6月以降持ち直しに転じる見通しである。特に、自動車を含む
輸送機械の増加寄与が大きい。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月▲9.8%、5月▲8.9%、6月(予想)+5.7%、7月+9.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月▲5.0%、3月▲10.0%、4月+4.1、5月▲11.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、2月+8.3%、3月▲3.1%、4月▲2.7%、5月▲9.2%。
・輸送機械は前月比で、2月▲5.0%、3月▲4.3%、4月▲34.8%、5月▲20.7%。
外需
○ 輸出は、感染症の影響は残るものの、下げ止まりつつある。
○ 輸入は、このところ下げ止まっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で大きく上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、3月▲13.2、4月▲6.3、5月+7.6、6月+23.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲5.8、4月▲2.2、5月+19.9、6月+7.5。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は厳しい状況にあるが、このところ持ち直している。
・2020年4-6月期の実質GDP成長率(前年比)は+3.2%となった。
・生産は、持ち直しの動きが続いている。
・輸出は、伸びが下げ止まりつつある。
・消費は、大幅な減少からは持ち直している。
・消費者物価上昇率は、やや低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
〇 韓国は、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。
〇 台湾では、景気は減速している。
〇 タイでは、景気は依然として厳しい状況にある。
〇 インド・インドネシアでは、景気は極めて厳しい状況にある。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・2020年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率▲5.0%。
○ 雇用者数は増加に転じており、失業率は低下している。
・6月の失業率は11.1%となった。
○ 生産は持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資は大幅に減少している。
○ 製造業・非製造業ともに持ち直しの動きがみられる。
○ 財輸出は大幅に減少した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・2020年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲13.6%
(イギリスは▲8.5%、ドイツは▲8.6%)。
○ 自動車販売台数は、大幅な下落が続いている。
・6月の自動車登録台数は前年同月比で、ユーロ圏▲22.6%、ドイツ▲32.3%、イギリス▲34.9%。
○ 個人消費は、ユーロ圏は低下、イギリスは持ち直しの動きがみられる。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスはこのところ低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.1%(6月)、イギリス+1.4%(6月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直しの兆しがみられる。