月例経済報告

 

月例経済報告(R2.11.25)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい

状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の

レベルを段階的に引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、

感染症が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。

また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

 

 

2020年7-9月期GDP

○ 我が国の7-9月期の実質GDP成長率は、国内外における社会経済活動の段階的な引き上げや、国内での特別定額給付金等の各種支援策

  の効果により、前期比年率21.4%と4期ぶりのプラスとなった。

・ 設備投資は2期連続のマイナスとなった。過去の動きをみても、主要国と比べて投資の伸びは低い。経済の持ち直しはまだ途上であり、

  デジタル投資をはじめ、未来に向けた投資が促進されるよう、対策を講じることが重要である。

○ 企業の動向は、設備投資の内容をみると、機械投資が減少している。ソフトウェア投資は、2020年度計画では前年度 比プラスを見込むも、9月

  までの進捗は前年を下回るペースである。

○ 7-9月期の上場企業決算の経常利益は、4-6月期対比で前年比マイナス幅は縮小したものの、依然として大幅な減少が続く。

 

個人消費の動向

○  個人消費は、雇用者報酬が下げ止まる中で、各種政策の効果もあり、持ち直している。

・いずれの品目も7-9月期は増加しているものの、サービスの水準はなお低い。

10月の新車販売台数や外食売上高は増加しており、財・サービスともに持ち直しが続いている。

11月に入っても、週当たり消費額は過去3年の水準を維持しているが、足下における国内の感染者数増加による下振れリスクには十分な注意が必要である。

      ・消費総合指数(実質)は、前期比で、6+10.1%7月▲1.0%8月▲0.8%9+1.6%

      ・消費者態度指数(DI)は前月差で、64.4%7+1.1%8月▲0.2%9+3.4%10+0.9%。 

     9月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.8%となった。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、弱含んでいる。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、6月▲2.4%7+4.8%8月▲1.0%9月▲0.5%

・持家着工数は前月比で、6+4.9%7+0.5%8+1.2%9月▲1.3%

・貸家着工数は前月比で、6月▲8.1%7+8.2%8+0.2%9月▲12.3%

・分譲着工数は前月比で、6月▲3.2%7+5.8%8月▲5.6%9+16.7

   公共投資は、堅調に推移している。

・請負金額は前月比で、6+4.2%(出来高+0.3%)、7月▲2.1%(出来高±0.0%)、8+16.9%(出来高▲0.7%)、9月▲9.9%(出来高+1.8%)、10月▲5.9%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用者数が7月以降増加しているなど、雇用情勢には底堅さもみられる。

しかし、雇用者数の総数は、3月対比でなお約100万人少ない状況であり、就職率は上昇してきているが、なお低い水準となっている。

○ 失業者数が緩やかに増加しているなど、雇用情勢は、感染症の影響により未だに弱い状態が続いている。

   倒産件数は、おおむね横ばいとなった。

○ 一人当たり賃金は前年比のマイナス幅が縮小しており、日次有効求人数は増加しているものの、 持ち直しには時間がかかっている。

   ・有効求人倍率は、51.2061.1171.0881.0491.03(正社員は0.78)となった。

    ・完全失業率は、52.9%62.8%72.9%83%93%となった。

   

物価の動向  

  国内企業物価は、横ばいとなった。

消費者物価も、横ばいとなっている。(9月総合前月比▲0.2%)。

  

投資・収益・業況

○ 企業収益は、大企業では一部に減少幅の縮小がみられるものの、全体としては、感染症の影響により、大幅な減少が続いている。

○ 設備投資は、このところ減少している

  ・設備投資4-6月期の動向は、前期比全産業で▲6.3%

○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の動きがみられる。

・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、201912+020203月▲86月▲349月▲2712月▲17

    「大企業・非製造業」は、201912+2020203+86月▲179月▲1212月▲11

    「中小企業・製造業」は、201912月▲920203月▲156月▲459月▲4412月▲38

    「中小企業・非製造業」は、201912+720203月▲16月▲26、▲2212月▲27

 

生産

 生産は、持ち直している。

  ・鉱工業生産指数は前月比で、81.0%93.9%10月(予想)+4.5%,11月(予想)+1.2%

      ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、6+10.2%7月▲4.6%8月▲9.9%9+11.3%   

      ・電子部品・デバイスは前月比で、6+0.6%7+4.6%8+3.9%9+5.7%

      ・輸送機械は前月比で、6+24.1%7+30.3%8+8.6%9+10.1%

 

外需

○  輸出は、持ち直しが継続している。

・自動車を含む「輸送用機械」や、半導体やその製 造装置を含む「一般機械・電気機器」など幅広い

品目が持ち直しに寄与した。

・製造業の生産は、輸出の復調を受け、持ち直しており、予測調査でも11月まで増加が続く見通し。

非製造業の生産も、国内消費の増加を背景に、テンポは鈍いが、持ち直している。

 ○ 輸入は、このところ弱含んでいる。

 ○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は6か月連続で上昇した。

  ・現状・季節調整値DIは前月差で、7+2.38+2.89+5.410+5.2

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、7月▲8.08+6.49+5.910+0.8

 

アジア経済の動向  

 〇 中国では、景気は持ち直している。

   ・20207-9月期の実質GDP成長率(前年比)は+4.9%となった。

・生産は、このところ伸びが上昇している。

・輸出は、増加している。

・消費は、緩やかに持ち直している。

・固定資産投資は持ち直している。

・消費者物価上昇率は、低下している。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。

 ○ 韓国では、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

 ○ タイは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

 ○ 台湾では、景気は持ち直している。

 ○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。

 ○ インドでは、景気は極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、消費は財を中心に堅調に推移しており、設備投資は情報通信機器の増加等により、7-9月期に前期比で増加に転じるなど、景気は

  持ち直している。但し、感染症の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。

   ・20207-9月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+33.1%

○ 雇用者数は増加し、失業率は低下している。

  ・10月の失業率は6.9%となった。

○ 生産は持ち直している。

○ 消費は持ち直している。

○ 設備投資は持ち直している。

○ 財輸出は持ち直している。

   ◎ バイデン氏の経済政策に関する演説(1116日)の主な内容

【雇用創出】

重要で競争力のある新産業に3,000億ドルを投資し、300万人の高賃金の雇用を創出。

【インフラ投資】

道路、橋、港の近代化、手ごろな価格の新築住宅150万戸の確保。

電気自動車市場やクリーンエネルギー研究開発投資の必要性など、気候変動問題への対応。

【労働分野】

最低賃金15ドル(※)の実現等の賃金引上げ。 (※)現在の連邦最低賃金は7.25ドル。

【感染症拡大に対する経済対策】

(足下の失業対策について問われた際に)民主党が提案するHEROES法(※)を成立させる意向を表明。

(※)総額2.2兆ドルの追加対策法案(10月1日 下院通過(上院では未可決))。主な内容は以下。

・個人向け給付(1人当たり最大1,200ドル(13万円)、扶養家族は1人当たり最大500ドル(5.3万円))の実施

・失業手当の拡充(週600ドル(約6.3万円)上乗せ)の延長

・給与保護プログラム(雇用維持により返済免除となる中小企業向け融資)の再実施 等

【通商分野】

自身が大統領に選出された場合、

(1)アメリカの労働者に投資し競争力を高めること、

(2)あらゆる通商交渉において労働者と環境保護主義者が交渉の場に参加すること、

(3)懲罰的な貿易を行わないこと を実現する意向を表明。

   

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は足下で下押しされている。

欧州主要国・地域は、感染症再拡大に伴い、経済活動が再制限されている。これにより、小売・娯楽施設の人流やレストランの予約数が急減する

など、景気は下押しされている。

   ・20207-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+60.5%(イギリスは+78.0%、ドイツは+38.5%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに下押しされている。

○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低水準で横ばいとなっており、イギリスはおおむね横ばいとなった。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+0.4%9月)、イギリス+1.4%9月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直している。イギリスは持ち直しの動きがみられる。