月例経済報告

  

 

月例経済報告(R2.12.22)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい

状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染拡大の防止策を講じるなかで、各種政策の

 効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待

 される。

 ただし、感染症拡大による社会経済活動への影響が内外経済を下振れ

させるリスクに十分注意する必要がある。 

また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

 

 

世界経済

○ 国際機関の見通しによれば、欧米では感染症の影響が続き、2021年の景気回復は緩やかな見込みである。

   ・欧米諸国では感染症の拡大に伴う経済活動の再制限を実施した。

・オンライン販売が消費動向を支えているとみられるものの、2010-12月期のユーロ圏のGDP成長率はマイナスの見通しである。

 

個人消費の動向

○  個人消費は、総じてみれば持ち直しの動きが続いているものの、このところ一部に足踏みも見られる。

 ・週当たり消費額は、12月に入っても過去3年の水準を維持している。

 ・財の消費は、新車販売台数が高水準にあるなど底堅いが、他方、外食や旅行といったサービス消費は、足下で支出した人の割合が低下し、

  宿泊施設稼働率も再び昨年からの低下幅が拡大するなど、弱い動きとなった。

 ・街角景気の先行きでは、個人消費が下押しされることが懸念されている。

 ・消費総合指数(実質)は、前期比で、7月▲1.0%8月▲0.8%9+1.6%10+2.1%

 ・消費者態度指数(DI)は前月差で、7+1.1%8月▲0.2%9+3.4%10+0.9%11+0.1%。 

 10月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.6%となった。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、弱含んでいる。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7+4.8%8月▲1.0%9月▲0.5%10月▲1.6%

・持家着工数は前月比で、7+0.5%8+1.2%9月▲1.3%10+1.3%

・貸家着工数は前月比で、7+8.2%8+0.2%9月▲12.3%10+0.5%

・分譲着工数は前月比で、7+5.8%8月▲5.6%9+16.7、▲8.0%

   公共投資は、堅調に推移している。

・請負金額は前月比で、7月▲2.1%(出来高±0.0%)、8+16.9%(出来高▲0.7%)、9月▲9.9%(出来高+1.8%)、10月▲5.9%(出来高+0.1%)、

11月▲1.4%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、一部の指標に底堅さもみられるが、総じてみれば弱い状態が続いている。

   雇用者数は、7月以降増加しているものの、水準はなお3月対比で85万人少ない状況である。

日次有効求人数の増加が続くなか、有効求人倍率は下げ止まりつつある一方、失業率は依然として上昇傾向となった。

  ・雇用や暮らしを守るため、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」円滑かつ着実な実施が重要である。

 ★  国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策

          雇用対策 ・雇用調整助成金の特例措置の延長(2021年2月末まで)、出向元・出向先への新たな助成金の創設

                                     ・感染症の影響による離職者を試行(トライアル)雇用する事業主への新たな助成

        暮らしと民需の下支え緊急小口資金等の特例措置の2021年3月までの延長、住居確保給付金支給期間の最長12か月までの延長

                            (年度内の新規申請分)

                          ・ひとり親世帯臨時特別給付金の再支給

                           ・雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置

○ 倒産件数は、資金繰り支援もあり、足下で緩やかに減少しているが、休廃業・解散は増加しており、先行きを引き続き注視する必要がある。

  ・有効求人倍率は、61.1171.0881.0491.03101.04(正社員は0.79)となった。

    ・完全失業率は、62.8%72.9%83%93%103.1%となった。

   

物価の動向  

  国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。

消費者物価も、横ばいとなっている。(11月総合前月比▲0.3%)。

  

投資・収益・業況

○ 企業収益は、感染症の影響により、前年比大幅減が続いているが、7-9月期は製造業、非製造業ともに前期比増となった。

      規模別でも、大中堅企業のみならず中小企業も7-9月期は戻しているが、水準はなお低い。

 ・企業の景況感は、改善の動きがみられるものの、依然として「悪い」という回答が「良い」を上回っている。

 また、先行きについても「悪い」が「良い」を上回る状況が続いている。

○ 設備投資は、2四半期連続で減少した。

2020年度計画(日銀短観12月調査)も、9月時点から下方修正され、前年度比マイナスの見通しとなっている。

  ソフトウェア投資の計画は、前年度比プラスを維持したが、9月時点からは下方修正した。

設備投資には慎重さが増している。

  ・「総合経済対策」の円滑かつ着実な実施により、ワイズスペンディングの下、デジタル・グリーンをはじめ成長分野に民間投資を大胆に呼び込むことが重要である。

  総合経済対策に盛り込まれた主な設備投資促進策

                デジタル改革・ポスト5G・先端半導体製造・開発強化、Beyond5G実現に向けた研究開発、AI戦略研究開発拠点、政投銀による支援

         グリーン社会 ・2050年カーボンニュートラル目標に向けた革新的 な技術開発に対して継続的な支援を行うための2 兆円の基金の創設

         事業再構築    ・中小・小規模事業者の経営転換や企業の事業再構築等を支援する最大1億円の事業再構築補助金の創設

  ・設備投資4-6月期の動向は、前期比全産業で▲7.1%7-9月期で▲1.2%となった。

○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の動きがみられる。

・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20203月▲86月▲349月▲2712月▲1020213月▲8

    「大企業・非製造業」は20203+86月▲179月▲1212月▲520213月▲6

    「中小企業・製造業」は、20203月▲156月▲459月▲4412月▲2720213月▲26

    「中小企業・非製造業」は、20203月▲16月▲26、▲2212月▲1220213月▲20

 

生産

 生産は、持ち直しが続いている。

     ・自動車やスマートフォンなど幅広い財に使用される半導体の出荷は、5G対応やオンライン通信機器の需要の高まりから、2021年も増加見込みである。 

   ・鉱工業生産指数は前月比で、93.9%10+4.0%,11月(予想)+2.7%12月(予想)▲2.4%

     ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月▲4.6%8月▲9.9%9+11.3%10+3.4%   

     ・電子部品・デバイスは前月比で、7+4.6%8+3.9%9+5.7%10月▲4.9%

     ・輸送機械は前月比で、7+30.3%8+8.6%9+10.1%10+4.8%

 

外需

○  輸出は、増加している。

・自動車関連財の持ち直しが続いているほか、IC等の情報関連財も堅調に増加している。

  ○ 輸入は、おおむね横ばいとなった。

  ○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は7か月ぶりに下降した。

  ・現状・季節調整値DIは前月差で、8+2.89+5.410+5.211月▲8.9

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに下降した。

  ・先行き・季節調整値DIは前月差で、8+6.49+5.910+0.811月▲12.6

 

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は持ち直している。

   ・20207-9月期の実質GDP成長率(前年比)は+4.9%となった。

・生産は、伸びが上昇している。

・輸出は、増加している。

・消費は、緩やかに持ち直している。

・固定資産投資は持ち直している。

・消費者物価上昇率は、下落した。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。

○ 韓国では、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

○ タイは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

○ 台湾では、景気は持ち直している。

○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。

○ インドでは、景気は極めて厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

  

アメリカ経済の動向 

   ○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。

ただし、感染症の再拡 大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。

     ・20207-9月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+33.1%

○ 雇用者数は増勢が鈍化し、失業率はやや低下となった。

     ・11月の失業率は6.7%となった。

○ 生産は持ち直している。

○ 消費は持ち直している。

○ 設備投資は持ち直している。

○ 財輸出は持ち直している。

   

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は弱い動きとなっている。

   ・20207-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+60.0%

   (イギリスは+78.0%、ドイツは+38.5%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに経済活動の抑制により、弱い動きとなっている。

○ 失業率は、ユーロ圏はこのところ低下しており、イギリスは上昇している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低水準で横ばいとなっており、イギリスはおおむね横ばいとなった。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+0.4%11月)、イギリス+1.0%11月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直している。イギリスはおおむね横ばいとなっている。