月例経済報告(R3.1.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じるなかで、各種政策の 効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待 されるが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意 する必要がある。 また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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世界経済
○ 2021年の世界経済は、世界銀行の予測では、国によりばらつきはあるものの4.0%の成長が見込まれている。ただし、感染の動向等に伴う
不確実性が大きい。
・消費活動に関係が深い小売及び娯楽施設の人流は、欧州では、感染拡大と2020年10月末以降の経済活動制限措置により、大きく低下した。
・世界の財貿易は落ち込む前の水準を回復した。中国や台湾ではICT関連財を中心に輸出が増加し、危機前を上回る水準となっている。
好調な外需も背景に中国経済はいち早く回復した。
個人消費の動向
○ 個人消費は、総じてみれば持ち直しに足踏みがみられる。
・12月のカード支出に基づく消費動向は、財支出は底堅い一方、サービス支出に弱い動きとなっている。
財支出の背景として、巣ごもり需要や季節商材の堅調さを指摘する声も聞かれる。
・サービス消費については、感染拡大に伴い、外食や旅行に支出した人の割合が低下した。交通機関の利用実績をみても、12月及び年末年始は前年比
マイナス幅が拡大している。
・こうした下で、週当たり消費額は、12月後半に平年水準を下回る弱めの動きとなった。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、8月▲0.8%、9月+1.6%、10月+2.1%、11月▲0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月▲0.2%、9月+3.4%、10月+0.9%、11月+0.1%、12月▲1.9%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.7%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、8月▲1.0%、9月▲0.5%、10月▲1.6%、11月+2.3%。
・持家着工数は前月比で、8月+1.2%、9月▲1.3%、10月+1.3%、11月+7.8%。
・貸家着工数は前月比で、8月+0.2%、9月▲12.3%、10月+0.5%、11月+5.3%。
・分譲着工数は前月比で、8月▲5.6%、9月+16.7、▲8.0%、▲6.0%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、8月+16.9%(出来高▲0.7%)、9月▲8.8%(出来高+1.8%)、10月▲0.5%(出来高+0.1%)、11月▲3.9%(出来高+0.3%)。12月▲9.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、雇用者数等に底堅さもみられるが、総じてみれば弱い状態が続いている。
・雇用者数は2020年6月から91万人増加している一方、同年3月対比では54万人少なく、失業者数は同年3月対比で26万人多い状況となった。
こうした中、有効求人数が12月以降横ばいとなっており、先行きに注意が必要である。
・賃金面では、所定内・所定外給与の改善は続く一方、2020年11月はボーナスを含む特別給与が大きく減少した。感染症の影響によるこれまで
の企業収益の悪化を受け、冬のボーナスは弱い動きとなった。
○ 倒産件数は、資金繰り支援もあり、足下で緩やかに減少しているが、休廃業・解散は増加しており、先行きを引き続き注視する必要がある。
・有効求人倍率は、7月1.08、8月1.04、9月1.03、10月1.04、11月1.06(正社員は0.80)となった。
・完全失業率は、7月2.9%、8月3%、9月3%、10月3.1%、11月2.9%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。
消費者物価も、横ばいとなっている。(12月総合前月比▲0.1%)。
国内企業物価・企業向けサービス価格は、緩やかに上昇した(国内企業物価12月前期比+0.5%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、大幅な減少が続いているものの、総じてその幅には縮小がみられる。
・企業の景況感は:非製造業を中心にこのところ慎重さがみられる。
○ 設備投資は、構築物・ソフトウェア投資は弱いものの、機械投資を中心に下げ止まりつつある。
・機械投資に先行する国内からの受注動向をみると、製造業では、生産の持ち直しに伴い、自動車産業や生産用機械業等で増加した。
また、非製造業では、5GやEコマースへの対応とみられる受注が通信業や卸・小売業等で増加した。
○ 業況判断は、非製造業を中心にこのところ慎重さがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年3月▲8、6月▲34、9月▲27、12月▲10、2021年3月▲8。
「大企業・非製造業」は2020年3月+8、6月▲17、9月▲12、12月▲5、2021年3月▲6。
「中小企業・製造業」は、2020年3月▲15、6月▲45、9月▲44、12月▲27、2021年3月▲26。
「中小企業・非製造業」は、2020年3月▲1、6月▲26、▲22、12月▲12、2021年3月▲20。
生産
○ 生産は、持ち直しが続いている。
・資本財輸出の増加や国内での機械投資需要の下げ止まりから、生産用機械が足下で持ち直している。資本財の需要と生産の回復は、出荷統計にも現れて
いる。
・鉱工業生産指数は前月比で、10月+4.0%,11月▲0.5%、12月(予想)▲1.1%、1月(予想)+7.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月▲9.9%、9月+11.3%、10月+3.4%、11月+6.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、8月+3.9%、9月+5.7%、10月▲4.9%、11月+2.6%。
・輸送機械は前月比で、8月+8.6%、9月+10.1%、10月+4.8%、11月▲3.1%。
外需
○ 輸出は、増加している。
・品目別にみると、アジア向けを中心とする情報関連財が好調となった。また、足下では、設備投資に用いられる資本財も持ち直している。
○ 輸入は、おおむね横ばいとなった。
○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は2か月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、9月+5.4、10月+5.2、11月▲8.9、12月▲10.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月+5.9、10月+0.8、11月▲12.6、12月+0.6。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は緩やかに回復している。
・2020年10-12月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.5%となった。
・生産は、伸びが上昇している。
・輸出・輸入ともに増加している(20年12月輸出+18.1%、輸入+6.5%)。
・消費は、緩やかに持ち直している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直している。
○ 韓国では、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ タイは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。
○ 台湾では、景気は緩やかに回復している。
○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。
○ インドでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。
ただし、感染症の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。
・2020年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+33.4%。
○ 雇用者数は増勢が鈍化し、失業率はやや低下となった。
・12月の失業率は6.7%となった。
○ 生産は持ち直している。
○ 消費は持ち直している。
○ 設備投資は持ち直している。
○ 財輸出は持ち直している。
◎バイデン新大統領の追加経済対策案(1/14公表)の概要
総額:約1.9兆ドル(約200兆円、対GDP比8.9%)
(主な政策)
1.失業手当の拡充 【延長】
○上乗せ額を週300ドルから週400ドルに引き上げたうえで延長 [9月まで]
○自営業者等への対象拡大措置の期限の延長 [9月まで]
○給付期間延長措置の延長期間拡大 [9月まで]
(参考)失業手当の支給金額(これまでの措置)
・20年4~7月 :従来の平均支給額(週378ドル)+週600ドル上乗せ
・20年8月~9月10日申請分まで :従来の平均支給額(週378ドル)+週300ドル上乗せ
・20年12月26日~21年3月14日 :従来の平均支給額(週378ドル)+週300ドル上乗せ
2.現金給付 【再実施】
○1人当たり最大1,400ドル(約15万円) [12月給付と合わせて最大2,000ドル(約21万円)]
(参考)過去の現金給付
・20年4月:1人当たり最大1,200ドル(約12万円)、子供1人当たり最大500ドル(約5万円)
※年収75,000ドル(約780万円)以上の者は減額、年収99,000ドル(約1,030万円)以上の者は給付対象外
[単身世帯の場合]
・20年12月:1人当たり最大600ドル(約6万円)
※年収75,000ドル(約780万円)以上の者は減額、年収87,000ドル(約900万円)以上の者は給付対象外
[単身世帯の場合]
3.児童税額控除の拡大 【新規】
○18歳未満の子供について、児童税額控除を1人当たり3,000ドル(31万円)に引上げ(6歳未満の
子供については3,600ドル(約38万円)に引上げ)。納税額が控除額を下回った場合、差額を全額
還付。
(参考)現行は、17歳未満の子供について、1人当たり2,000ドルを税額控除(還付は1,400ドルまで)
4.その他
州・地方政府向け支援(3,500億ドル)、
中小企業向け支援(融資1,750億ドル、補助金150億ドル)、
教育機関向け支援(1,700億ドル(うち学校再開のための支援 1,300億ドル))、
ワクチン普及・検査体制強化等(1,600億ドル)
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は弱い動きとなっている。
・2020年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+60.0%
(イギリスは+78.0%、ドイツは+38.5%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに経済活動の抑制により、弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏はこのところ低下しており、イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低水準で横ばいとなっており、イギリスはおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+0.4%(11月)、イギリス+1.0%(11月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直している。イギリスはおおむね横ばいとなっている。