月例経済報告

 

月例経済報告(R3.2.19)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 

 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さが

 みられ

〈先行き〉              

・先行きについては、緊急事態宣言の解除後も感染拡大の防止策を講じ

 つつ、社会経済活動のレベルを引き上げていく中で、各種政策の効果 

 や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。

 ただし、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する

 必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要が

 ある。

 

 

世界経済

 ○ 各国の回復は、感染再拡大の動向や支援策の実施状況に応じて大きく異なる。

・20201012月期の欧米諸国の経済成長率は、経済活動抑制の期間や度合いが異なり、個人消費等の動向に差がみられたことから、国によりばらつきが

 あり、ユーロ圏やフランスではマイナス成長となった。

・失業率は、アメリカは低下傾向にあるが感染拡大前より水準が高く、欧州は政策効果もあるがこのところ横ばいあるいは上昇傾向となった。

○ 各国・地域の生産は、中国や台湾が大きく伸びる中で、欧米も持ち直しが続いている。

 

我が国のGDP202010-12月期)

○ 2021年の世界経済は、世界銀行の予測では、国によりばらつきはあるものの4.0%の成長が見込まれている。

   ただし、感染の動向等に伴う不確実性が大きい。

1012月期の実質GDP成長率は、前期比3.0%(年率換算12.7%)と2期連続増加。個人消費や輸出の増加に加え、設備投資も3期ぶりに増加し、日本経済

 の潜在的な回復力を感じさせる内容となった。

・IMFによれば、我が国の実質GDPは、2021年下半期に、アメリカに次いで早期にコロナ前の水準を回復する見通しである。

 

個人消費の動向

○  個人消費は、総じてみれば弱含んでいる。

・週当たり消費額をみると、年末年始には、過去3年(201719)より低いものの活発な消費行動がみられた。その後は、緊急事態宣言もあり、過去3年の下限

 程度かそれ以下の水準で推移している。  

・カード支出に基づく消費動向をみると、財支出が底堅く、サービス支出が弱い二極化の動きとなった。販売側データで具体例をみると、新車や家電は堅調と

 なった。他方、外食の弱さが一段と増し、宿泊施設の稼働率も低調な状態が続く。

 ・消費総合指数(実質)は、前期比で、9+1.6%10+2.0%11月▲0.3%12月▲2.4%

       ・消費者態度指数(DI)は前月差で、9+3.4%10+0.9%11+0.1%12月▲1.9%1月▲2.2%。 

       ・12月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.8%となった。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設はおおむね横ばいとなっている。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、9月▲0.5%10+1.2%11+0.7%12月▲4.2%

・持家着工数は前月比で、9月▲1.3%10+2.9%11+4.3%12月▲1.1%

・貸家着工数は前月比で、9月▲12.3%10+0.6%11+4.2%12月▲3.6%

・分譲着工数は前月比で、9+16.710月▲1.2%11月▲6.3%12月▲8.8%

   公共投資は、堅調に推移している。

・請負金額は前月比で、9月▲8.8%(出来高+1.8%)、10月▲0.5%(出来高+0.1%)、11月▲3.9%(出来高+0.3%)。12月▲9.7%(出来高+0.9%)、1+17.4%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、雇用者数等に底堅さもみられるが、総じてみれば弱い状態が続いている。

   雇用者数は、12月に前月から19万人減少したものの、持ち直し傾向。水準はまだ昨年3月を下回る。

・こうした中、雇用調整助成金や休業支援金の支給金額には今年に入り増加する動きがあり、感染再拡大に伴って生じた、休業者の暮らしの

 下支えや企業経営への負担緩和に寄与している。

    ・1月の民間転職市場や2月のハローワークの求人には底堅さがみられるものの、いずれも昨年3月を下回る水準となった。

○ 倒産件数は、資金繰り支援もあり、足下で緩やかに減少しているが、先行きを引き続き注視する必要がある。

   ・有効求人倍率は、81.0491.03101.04111.06121.06(正社員は0.81)となった。

      ・完全失業率は、83%93%103.1%112.9%122.9%となった。

   

物価の動向  

  国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。

消費者物価も、横ばいとなっている。(1月総合前月比+0.1%)。

  

投資・収益・業況

○  企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。

 1012月期の上場企業決算の経常利益は、非製造業は前年比減が続くものの、製造業は前年を大きく上回り、総じてみれば持ち直している。

    製造業は自動車生産の回復や5G関連需要から増益となった。

非製造業は運輸業や卸小売業で厳しい状況が続く。

   ・ 1月の街角景気は、現状判断は低下となった。ただし、2、3か月先の先行き判断は上昇している。

○ 設備投資は、機械投資に基調の反転がみられ、構築物投資には底入れの動きがあるなど、このところ持ち直しの動きがみられる。

・機械投資に先行する国内からの受注動向をみると、製造業では、生産の持ち直しに伴い、自動車業や生産用機械業向けなどが増加した。

 非製造業では、5G対応とみられる通信業や情報サービス業向けなどが増加した。

○ 業況判断は、非製造業を中心にこのところ慎重さがみられる。

・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20203月▲86月▲349月▲2712月▲1020213月▲8

    「大企業・非製造業」は20203+86月▲179月▲1212月▲520213月▲6

    「中小企業・製造業」は、20203月▲156月▲459月▲4412月▲2720213月▲26

    「中小企業・非製造業」は、20203月▲16月▲26、▲2212月▲1220213月▲20

 

生産

 生産は、持ち直している。

   ・鉱工業生産指数は前月比で、11月▲0.5%12月▲1.0%1月(予想)+8.9%2月(予想)▲0.3%

      ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、9+11.3%10+3.4%11+6.6%12月▲0.7%   

      ・電子部品・デバイスは前月比で、9+5.7%10月▲4.9%11+2.6%12+0.7%

      ・輸送機械は前月比で、9+10.1%10+4.8%11月▲3.1%12月▲2.5%

 

外需

○  輸出は、増加している。

・世界の財貿易は、9月以降、コロナ前の水準を回復した。我が国の輸出も、アジア向けにけん引される形で増加し、コロナ前の水準を回復した。

・品目別にみると、自動車関連財は、各国での生産や在庫水準の回復に伴い増勢に一服感が出た一方、アジア向けが多くを占める情報関連財は好調を

 維持している。

 製造業の生産は、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイス等を中心に持ち直しが続いている

 ○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。

 ○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は3か月連続で下降した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、10+5.211月▲8.912月▲9.51月▲3.1

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続でに上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、10+0.811月▲12.612+1.11+3.8

 

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は緩やかに回復している。

   ・202010-12月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.5%となった。

・生産は、伸びが上昇している。

・輸出・輸入ともに増加している(2012月輸出+18.1%、輸入+6.5%)。

・消費は、緩やかに持ち直している。

・固定資産投資は持ち直している。

・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところやや低下している。

○ 韓国では、景気は厳しい状況にあるが、持ち直している。

○ インド・タイ・インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

○ 台湾では、景気は緩やかに回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。

 ただし、感染症の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。

 ・202010-12月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+4.0%

○ 雇用者数は増勢が鈍化し、失業率はやや低下となった。

 ・1月の失業率は6.3%となった。

○ 生産は持ち直している。

○ 消費は持ち直している。

○ 設備投資は持ち直している。

○ 財輸出は持ち直している。

    

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は弱い動きとなっている。

   ・202010-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲2.4%(イギリスは+4.0%、ドイツは+0.4%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに経済活動の抑制により、弱い動きとなっている。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスは上昇している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、特殊要因により一時的に上昇したが、イギリスはおおむね横ばいとなった。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.4%1月)、イギリス+1.4%1月)。

○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直している。