月例経済報告(R3.3.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さが みられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の レベルを引き上げていく中で、各種政策の効果や海外経済の改善も あって、持ち直していくことが期待される。ただし、感染の動向が 内外経済に与える影響に十分に注意する必要がある。また、金融 資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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世界経済
○ 先進諸国の21年以降の成長率見通しは、ワクチン効果や追加経済対策の公表等を受け上方改定された。
【OECD 2021年主要国の実質GDP成長率見通し】
世界5.6%(+1.4%)、日本2.7%(+0.4%)、アメリカ6.5%(+3.3%)、ユーロ圏3.9%(+0.3%)、中国7.8%(▲0.2%)
・特に、アメリカでは大型追加経済対策の成立により21年の成長率は大きく押し上げられる見通しとなった。
・日本も21年の成長率は2.7%に上方修正された。21年度中にはコロナ前の水準を回復する姿となっており、政府経済見通しと概ね同様の見方となっている。
○ 主要国の景気回復による需要増等を受け、商品価格は上昇している。回復期待から長期金利も上昇傾向であり、注視が必要である。
○ 他方、欧州では感染症による経済活動制限が続き、消費は下押しされている。
個人消費の動向
○ 個人消費は、このところ弱含んでいる。
・週当たり消費額をみると、個人消費は昨年の緊急事態宣言時期ほどの落ち込みはみられなかった。
・2月のカード支出に基づく消費動向をみると、財支出は総じてみれば底堅さが続く一方、サービス支出は、感染症とそれに伴う自粛の影響がみられる。
・販売側データをみると、新車は弱含んでいるが、家電は前年を上回って推移し、外食は低水準となった。更に、交通機関の利用実績をみると、低調な状態
が続いている。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、10月+2.0%、11月▲0.2%、12月▲0.4%、1月▲3.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月+0.9%、11月+0.1%、12月▲1.9%、1月▲2.2%、2月+4.2%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で+1.0%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+1.2%、11月+0.7%、12月▲4.2%、1月+2.2%。
・持家着工数は前月比で、10月+2.9%、11月+4.3%、12月▲1.1%、1月+2.4%。
・貸家着工数は前月比で、10月+0.6%、11月+4.2%、12月▲3.6%、1月▲5.8%。
・分譲着工数は前月比で、10月▲1.2%、11月▲6.3%、12月▲8.8%、1月+15.2%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、10月▲0.5%(出来高+0.1%)、11月▲3.9%(出来高+0.3%)、12月▲9.7%(出来高+0.9%)、1月+17.4%(出来高▲1.6%)、
2月▲12.3%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、総じてみれば弱い状態が続いている。
・雇用者数は、昨年6月から66万人増加している一方、昨年3月対比では58万人少ない状況である。
・賃金面では、ボーナスを含む特別給与のマイナス寄与が1月は縮小した。2021年春季労使交渉について、連合の第1回回答集計では、賃上げ率
は1.81%と昨年(1.91%)を下回る状況となった。
・2月の民間転職市場や足下のハローワーク求人には底堅さがみられるものの、いずれも昨年3月を下回る水準である。
○ 倒産件数は、減少している。
・有効求人倍率は、9月1.03、10月1.04、11月1.05、12月1.05、1月1.10(正社員は0.79)となった。
・完全失業率は、9月3%、10月3.1%、11月3.0%、12月3.0、1月2.9%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、緩やかに上昇している。
消費者物価も、横ばいとなっている。(2月総合前月比+0.1%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。
・10-12月期の企業の経常利益は、製造業・非製造業ともに前期比増となった。前年比でみても、製造業は大幅増となっている。
倒産件数は、資金繰り支援もあり、減少した。
・2月の街角景気は、現状判断・先行き判断共に大幅に上昇した。また、中小企業における景況判断は、1-3月期の大幅な「下降」超から7-9月期には大きく
改善する見通しである。
○ 設備投資は、機械投資を中心に、このところ持ち直しの動きがみられる。ただし、構築物投資は、概ね横ばいとなった。
・法人企業景気予測調査(1-3月期調査)によると、企業の慎重な姿勢から、20年度の設備投資は前年度▲9.2%の見込みとなっている。
一方、21年度の設備投資は、+7.6%の見通しとなっている(1-3月期における翌年度の見通しがプラスになるのは、2004年の調査開始以来初めて)。
また、ソフトウェア投資は、大幅増加が見込まれている。
○ 業況判断は、厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年3月▲8、6月▲34、9月▲27、12月▲10、2021年3月▲8。
「大企業・非製造業」は2020年3月+8、6月▲17、9月▲12、12月▲5、2021年3月▲6。
「中小企業・製造業」は、2020年3月▲15、6月▲45、9月▲44、12月▲27、2021年3月▲26。
「中小企業・非製造業」は、2020年3月▲1、6月▲26、▲22、12月▲12、2021年3月▲20。
生産
○ 生産は、持ち直している。
・製造業の生産は、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイス等を中心に持ち直しの動きがみられる。また、昨年夏以降、出荷の持ち直しを受けて、
在庫圧縮も進展した。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月▲1.0%、1月(予想)+4.3%、2月(予想)+2.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、10月+3.4%、11月+6.6%、12月▲0.7%、1月+8.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月▲4.9%、11月+2.6%、12月+0.7%、1月+10.3%。
・輸送機械は前月比で、10月+4.8%、11月▲3.1%、12月▲2.5%、1月+0.5%。
外需
○ 輸出は、欧米向けを中心に、このところ増勢が鈍化している。
・品目別にみると、アジア向けを中心とする情報関連財は増加基調にある一方、自動車関連財は、アメリカ国内における自動車販売が感染拡大前の水準に
戻りつつあることなどから頭打ちとなっている。
○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は4か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月▲8.9、12月▲9.5、1月▲3.1、2月+10.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月▲12.6、12月+1.1、1月+3.8、2月+11.4。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに回復している。
・2020年10-12月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.5%となった。
・生産は、伸びが上昇している。
・輸出・輸入ともに増加している(21年1-2月輸出+60.6%、輸入+22.2%)。
・消費は、緩やかに持ち直している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところやや低下している。
○ 韓国・インドでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直している。
○ タイ・インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。
○ 台湾では、景気は緩やかに回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。
・2020年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+4.1%。
○ 雇用者数は増勢が鈍化し、失業率はやや低下となった。
・2月の失業率は6.2%となった。
○ 生産は持ち直している。
○ 消費・自動車販売台数は、ともに持ち直している。
○ 設備投資は持ち直している。
○ 財輸出は持ち直している。
◎ 追加経済対策(3月11日成立)
総額:1.9兆ドル (約200兆円、対GDP比8.9%)
(主な政策)
○現金給付 [4,106億ドル] :1人当たり最大1,400ドル(約15万円)※年収7万5千ドル以上の者は減額
○失業手当 [2,034億ドル] :週300ドルの上乗せを延長(9月6日まで)
○児童税額控除拡大 :0~5歳は 1人当たり3,600ドル(約38万円)、
[1,092億ドル] 6~17歳は1人当たり3,000ドル(約31万円) ※現行は17歳未満の子供1人当たり2,000ドル(約21万円))
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は弱い動きとなっている。
・2020年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲2.6%
(イギリスは+4.0%、ドイツは+1.4%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに経済活動の抑制により、弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏、イギリスともにおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.2%(2月)、イギリス+1.4%(1月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスはこのところ減少している。