月例経済報告

 

月例経済報告(R3.7.19)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい

状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが

増している。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進

 するなかで、各種政策の効果や 海外経済の改善もあって、持ち直し

 の動きが続くことが期待される。

 ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要が

 ある。

 また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

 

 

世界経済

 ○ 欧米では、ワクチン接種の進展とともに、英国を除いて新規感染者数は概ね低下傾向にある。

こうした感染者数減少を受けた制限措置の緩和により、アメリカや英国に加えユーロ圏においても、足下で小売が上向きつつあり、持ち直しの

動きがみられる。

○ 世界経済の持ち直しに伴い、世界の財貿易量も増加傾向が継続している。

○ ただし、欧米の雇用については、求人数は持ち直しているものの、就業者数の回復は遅れている。

 

個人消費の動向

  ○ 個人消費は、サービス支出を中心に弱い動きとなっている。

・6月のカード支出に基づく消費動向をみると、財は2019年比でプラスの中、サービス消費は弱い動きとなっている。

・販売側のデータをみると、振れを伴いながらも、家電販売額の2019年比は横ばいで推移している。

 外食は、パブ・居酒屋等を中心に全体としても引き続き弱い動きとなった。他方、小売及び娯楽施設の人流や映画・コンサート等の娯楽関連に支出した人の 

 割合は、6月以降に持ち直しの動きもみられる。

・ただし、足下の週当たり消費額は、一部に天候不順の影響があるものの、2017-19年の幅を下回る水準である。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、2+0.9%3+1.9%4月▲0.5%5月▲1.9%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、2+4.0%3+2.2%4月▲1.4%5月▲0.6%6+3.3%。 

5月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.6%となった。

 

住宅投資・公共投資

  ○   住宅建設は、底堅い動きとなっている 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2+0.8%3+9.0%4+0.3%5月▲0.9%

・持家着工数は前月比で、2+1.5%3月▲0.4%4月▲1.1%5+1.4%

・貸家着工数は前月比で、2+13.2%3+8.3%4+3.3%5月▲5.2%

・分譲着工数は前月比で、2月▲13.9%3+22.9%4月▲1.7%5+0.3%

  ○   公共投資は、高水準で底堅く推移している。

・請負金額は前月比で、2月▲12.3%(出来高▲0.6%)、3+10.0%(出来高+1.4%)、4月▲8.4%(出来高▲2.1%)、5月+15.0%6月▲1.6%             

 

雇用・賃金の動向

  ○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、求人等の動きに底堅さもみられる。

  ・雇用者数は、昨年6月以降持ち直しが続いていたが、均してみると横ばいの動きとなっている。

 失業率は2か月連続で上昇した。4~5月の休業者数は、宿泊・飲食業を中心に1~3月から微増となっている。

   ・景気との一致性が強い求人動向は、日次のハローワーク求人や民間転職市場をみると持ち直しの動きが続く。

    賃金は、前年比プラスで推移しているが、感染症の影響を除いた2019年比でみると、5月は緊急事態宣言に伴う残業時間の減少もあり、

    全体は小幅減となった。

   ・他方、景気ウォッチャー調査の雇用関連DIは改善基調となっている。

  ・有効求人倍率は、11.1021.0931.1041.0951.09(正社員は0.90)となった。

    ・完全失業率は、12.9%22.9%32.6%42.8%53.0%となった。

   

物価の動向  

  ○  国内企業物価は、上昇している。

消費者物価は、横ばいとなっている。(5月総合前月比+0.3%)。

 

投資・収益・業況

  ○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。

  ・倒産件数は、資金繰り支援もあり、低水準が続く。一方、休廃業・解散件数は、年間5万件以上で推移しており、本年1~6月も昨年同時期を下回ったものの、

      約2.8万件となった。観光関連業等において昨年より増加している。

  ○ 設備投資は、機械投資を中心に持ち直している。

・先行指標である機械受注も、持ち直しの動きとなっている。

2020年度の設備投資は、前年度比減少となったが、2021年度は同9.3%増と大幅な増加が見込まれており、特にソフトウェア投資は、全産業で同14.7%増と

 高い伸びの見通し。研究開発投資も増加の見通しである。

  ○ 業況判断は、一部に厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。

  ・日銀短観6月調査によると、企業の景況感は、非製造業では依然としてマイナスであるものの、製造業は輸出・生産の持ち直しなどを背景に、2年ぶりにプラス

    となるなど、持ち直しの動きがみられる。

    2021年度の企業収益(経常利益)は、製造業・非製造業ともに増加する見込みとなった。

  ・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20209月▲2712月▲1020213+56+149+13

    「大企業・非製造業」は20209月▲1212月▲520213月▲16+19+3

    「中小企業・製造業」は、20209月▲4412月▲2720213月▲136月▲79月▲6

    「中小企業・非製造業」は、20209月▲2212月▲1220213月▲116月▲99月▲12

 

生産

   ○ 生産は、持ち直している。

   ・製造業の生産は、5月に減少したものの、予測調査は上向きとなった。特に、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイスや設備投資向けの生産用機械

       を中心に持ち直しが続く見込みとなっている。

   また、マシニングセンタ等の工作機械受注は、内外ともに増加基調にある。輸出も生産も、当面は増勢が期待される。

 ・鉱工業生産指数は前月比で、3+1.7%4+2.9%5月▲6.5%6月(予想)+9.1%7月(予想)▲1.4%

      ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2+4.1%3月▲2.8%4+7.7%5月▲6.0%   

      ・電子部品・デバイスは前月比で、2月▲2.3%3月▲1.1%4+5.5%5月▲0.2%

      ・輸送機械は前月比で、2月▲3.3%3+8.1%4+0.2%5月▲16.6%

 

外需

  ○ 輸出は、緩やかな増加が続いている。

   ・海外経済の回復を背景に、輸出は緩やかな増加が続いている。品目別にみると、半導体不足の影響による生産調整がみられる自動車関連財は横ばいだが、

       情報関連財や資本財が牽引している。

  ○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。

  ○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。

 

景気ウォッチャー調査  

  ○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに上昇した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、3+7.74月▲9.95月▲1.06+9.5

  ○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.54月▲8.15+5.96+4.8

 

アジア経済の動向  

  ○ 中国では、景気は緩やかに回復している。

  ・214-6月期の実質GDP成長率は7.9%増(前々年比では5.5%増)となった。

  ・消費は緩やかに持ち直している。

  ・生産は、伸びがやや低下している。

  ・輸出は着実に増加している。

  ・固定資産投資は持ち直している。

  ・消費者物価上昇率はやや高まっている。

  ・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。

  ○ 韓国では、景気は持ち直している。

  ○ インドでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

    ただし、足下の感染の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。

  ○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

  ○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

  ○ 台湾では、景気は回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。

20211-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+6.4%

○ 雇用者数は増加し、失業率はやや低下となった。

6月の失業率は5.9%となった。

○ 生産は足踏みが見られる。

○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数はこのところ弱含みがみられる。

○ 設備投資は緩やかに増加した。

○ 財輸出は持ち直している。

     

ヨーロッパ経済の動向  

 ○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスともに、依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

   ・211-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲1.3%

   (イギリスは▲6.2%、ドイツは▲7.0%)。

 ○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しの動きがみられる。

 ○ 失業率は、ユーロ圏はこのところ低下しており、イギリスは低下している。

 ○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっており、イギリスはこのところ上昇となった。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+0.9%6月)、イギリス+2.2%6月)。

 ○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスは持ち直している。

 ○ 生産は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっており、イギリスは持ち直している。