月例経済報告

 

月例経済報告(R3.11.25)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和

 されつつあるものの、引き続き持ち直しの動きに弱さがみられる。

〈先行き〉              

・先行きについては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の

効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待

される。ただし、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れ

リスクの高まりに十分注意する必要がある。

また、感染症による内外経済への影響や金融資本市場の変動等の影響

を注視する必要がある。

 

 

日本のGDP成長率

本年7-9月期の実質GDP成長率は、欧米が前期比プラスとなる中で、日本は前期比▲0.8%と2期ぶりのマイナスとなった。

・9月までの緊急事態宣言等に加え、半導体不足や東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給不足が影響し、個人消費、設備投資、輸出はいずれも

 前期比マイナス。

○ 緊急事態宣言等の解除や経済対策の効果などを背景に、今後は我が国もプラス成長となることが期待される

 

世界経済

欧米の7-9月期の実質GDPは、プラス成長が継続している。欧州では、夏までに移動制限の緩和が行われたこともあり、旅行等のサービス消費が増加

  した。欧米ともに、雇用環境の改善、物価の上昇がみられる。

○ 欧米を中心に世界的に景気が持ち直し、世界貿易が高水準で推移する中で、物流面において、輸送期間の長期化や価格上昇がみられる。

  また、中国では、環境規制や不動産開発規制等を背景に、生産の伸びが低下している。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。

○ 10月後半以降の消費を週次データでみると、平年水準(2017-19年)の幅と比較して、緩やかながら回復に向かう動きがみられる。

・新車販売は、供給面の影響により減少。一方、宿泊施設稼働率は10月以降、上昇が続く。外食や娯楽関連の支出に持ち直しの動きがみられる。

・個人消費については、自動車等の耐久財や衣服等の半耐久財がマイナスに寄与した。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、5月▲2.8%6+2.5%7+0.2%8月▲2.0%

      ・消費者態度指数(DI)は前月差で、6+3.3%7+0.1%8月▲0.8%9+1.1%10+1.4%。 

     9月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.3%となった。

 

物価

 国内企業物価は、上昇している。消費者物価は、底堅さがみられる。

 

ガソリンや鋼材等の国内の商品市況は、国際的な資源価格の高騰等を背景に上昇傾向。国内企業物価をみても、原油・エネルギー関係品目や鉄鋼・  

  非鉄金属価格の上昇により、全体として上昇。

   ・消費者物価について、生鮮食品・エネルギーを除いたコアコアで物価の基調をみると、底堅さがみられる。一方、生活実感を表す総合でみると、資源

    価格の上昇等を背景に緩やかに上昇しており、今後電気代も上昇する見込み。物価上昇による家計への影響には注意が必要である。

  

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、このところ持ち直しの動きとなっている 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、6月▲1.0%7+6.9%8月▲7.7%9月▲1.2%

・持家着工数は前月比で、6月▲0.2%7+8.0%8月▲3.5%9+2.0%

・貸家着工数は前月比で、6+4.8%7+1.4%8月▲7.5%9+0.7%

・分譲着工数は前月比で、6月▲7.9%7+14.2%8月▲13.3%9月▲7.2%

   公共投資は、高水準にあるものの、このところ弱含んである。

・請負金額は前月比で、5+15.0%(出来高▲1.4%)、6月▲1.6%(出来高+1.2%)、7月▲11.0%(出来高+0.0%)、8+0.6%(出来高▲3.2%)、9月▲7.0%(出来高▲6.9%)、10月▲5.2%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、感染症の影響が残る中で、弱い動きとなっているものの、求人等の動きに底堅さもみられる。

  ・雇用状況は、弱さが続く中、9月の雇用者数は横ばいで推移している。

 7-9月期の女性の非正規雇用者は、2019年同期比で70万人減少する一方で、正規雇用者は同66万人増加した。

 失業率は2.8%と底堅い動きとなっているものの、男性を中心に1年以上の長期失業者が増加した。

  ・ハローワークによるネット経由の日次有効求人件数は、2019年同月比で水準は低いものの、11月に入っても持ち直しの動きが

  続く。

 ・9月の賃金は、引き続き前年比プラスで推移。実質総雇用者所得は、概ねコロナ前の水準を回復した。

  ・有効求人倍率は、51.0961.1371.1581.1491.16(正社員は0.91)となった。

・完全失業率は、53.0%62.9%72.8%82.8%92.8%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。

○ 設備投資は、持ち直している。

○ 業況判断は、一部に厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。

・ 7-9月期の上場企業の経常利益は、製造業・非製造業ともに前年比で大幅増となった。

・ 中小企業の10月の利益動向をみると、利益額DIは悪化した。

資源価格の上昇に伴い、仕入価格DIが上昇しており、価格転嫁の程度を表す疑似交易条件は本年夏以降、悪化傾向にあること等が背景にある。

・ 倒産件数は、資金繰り支援等もあり、月500件程度の水準と概ね横ばいとなった一方、休廃業・解散件数は、1~9月の累計でみると、前年と概ね同水準

  となる中で、観光関連業等では、前年より増加した。

・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、202012月▲1020213+56+149+1812+14

    「大企業・非製造業」は202012月▲520213月▲16+19+2123

    「中小企業・製造業」は、202012月▲2720213月▲136月▲79月▲312月▲4

    「中小企業・非製造業」は、202012月▲1220213月▲116月▲99月▲1012月▲13

 

生産

 生産は、持ち直しに足踏みがみられる。

・9月までの製造業の生産をみると、自動車の減産に加え、中国経済の回復鈍化等から、生産用機械は

増勢鈍化となった。その背景の一つとして、マシニングセンタ等の工作機械受注は、内需が底堅い一方で、アジア向けの外需には足踏み感がみられる。

・鉱工業生産指数は前月比で、7月▲1.5%8月▲3.6%9月▲5.4%10月(予想)+6.4%11月(予想)+5.7%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、6+10.3%7+1.6%8月▲3.2%9月▲3.3%。

・電子部品・デバイスは前月比で、6+3.9%7+0.9%8月▲2.9%9月▲4.1%。

   ・輸送機械は前月比で、6+17.6%7月▲3.8%8月▲12.5%9月▲24.6%。

 

外需

○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。

・ 中国経済の回復鈍化等により、アジア向けが弱含みとなった。また、供給制約による減産を受け、自動車関連財が減少した。

○ 輸入は、このところ弱含んでいる。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 消費者マインドを景気ウォッチャー調査の家計動向関連DIでみると、感染者数の減少や緊急事態宣言解除等により、大きく上昇し、消費者マインドは、

  持ち直しの動きがみられる。

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、7+0.88月▲13.79+7.410+13.4

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、7月▲4.08月▲4.79+12.910+0.9%

 

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気の回復テンポは、このところ鈍化している。

   ・217-9月期の実質GDP成長率は+4.9%となった。

・消費はこのところ伸びがおおむね横ばいとなっている。

・生産は、伸びがやや低下している。

・輸出は着実に増加している。

・固定資産投資は伸びがやや低下している。

・消費者物価上昇率はこのところやや高まっている。

・製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。

○ 韓国では、景気は持ち直しの動きが緩やかになっている。

○ インド・インドネシア・タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

○ 台湾では、景気は回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は持ち直している。

20217-9月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.0%

○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。

 ・10月の失業率は4.6%となった。

○ 生産は緩やかに増加した。

○ 消費は持ち直し、自動車販売台数は下げ止まりの兆しがみられる。

○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化した。

○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・イギリスともに、厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。

   ・217-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+9.3%

   (イギリスは+5.1%、ドイツは+7.3%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しており、イギリスは持ち直しているが、このところ一服感がみられる。

○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.1%10月)、イギリス+3.2%10月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱い動きとなっている。

○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに横ばいとなっている。