月例経済報告(R3.12.21) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和 される中で、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の 効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待 される。ただし、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れ リスクの高まりに十分注意する必要がある。 また、変異株をはじめ感染症による内外経済への影響や金融資本市場 の変動等の影響を注視する必要がある。
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日本のGDP成長率
○ 本年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報)は、日本は前期比▲0.9%となった。
世界経済
○ 世界の景気は持ち直しが継続している。OECD見通しによれば、2021年の世界全体の実質GDP水準は、コロナ前の2019年を超える見込みとなった。
○ 景気の持ち直しを背景に、欧米各国で物価が高まっている。アメリカでは、消費者の物価上昇予想(イ ンフレ期待)が高まり
つつあり、今後の物価動向を引き続き注視していく必要がある。
○ 中国では、環境規制や不動産開発規制等を背景に生産が低調、感染拡大に伴う断続的な制限措置実施等により消費の伸びが低下した。景気の回復
テンポが鈍化している。
個人消費の動向
○ 個人消費は、一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。
○ 個人消費を週次データでみると、11月後半以降、平年水準(2017-19年)の幅を上回る水準で推移している。カード支出に基づく消費動向をみると、
持ち直しの動きが娯楽関連にも広がっている。
・供給面の影響がみられていた新車販売は、持ち直しの動きとなっている。
・外食や旅行のサービス消費も、緊急事態宣言解除等により持ち直しの動きとなった。ただし、宿泊動向をみると、居住地から近隣県への宿泊が中心と
なる傾向にある。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、6月+2.5%、7月+0.2%、8月▲1.8%、9月▲0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、7月+0.1%、8月▲0.8%、9月+1.1%、10月+1.4%、11月0.0%。
・10月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となった。
物価
○ 国内企業物価は、上昇している。消費者物価は、底堅さがみられる。
・企業物価を需要段階別にみると、「素原材料」や「中間財」は国際市況を受けて大きく上昇しているが、最終財への価格転嫁は限定的となっている。
こうした中、製造業において、仕入価格DIは足下で大きく上昇しているものの、販売価格DIの上昇は限定的となった。価格転嫁の程度を表す疑似交易
条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)は、中小企業において一層の悪化がみられており、中小企業収益にマイナスの影響も懸念される。
・ 消費者物価について、生鮮食品・エネルギーを除いた「コアコア」で物価の基調をみると、底堅さがみられる。一方、「総合」でみると、緩やかに上昇
した。生活実感に近い、食料品などの購入頻度が高い品目の価格上昇が多くなっている。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・持家は持ち直している。一方、分譲住宅については、販売価格が上昇する中で新規発売物件の成約率(契約率)は好調を維持するなど、マンションへ
の需要は底堅いものの、足下の着工は用地不足の影響もあって、弱含みとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7月+6.9%、8月▲7.7%、9月▲1.2%、10月+5.6。
・持家着工数は前月比で、7月+8.0%、8月▲3.5%、9月+2.0%、10月+2.1%。
・貸家着工数は前月比で、7月+1.4%、8月▲7.5%、9月+0.7%、10月+1.5%。
・分譲着工数は前月比で、7月+14.2%、8月▲13.3%、9月▲7.2%、10月+16.6%。
○ 公共投資は、高水準にあるものの、このところ弱含んである。
・請負金額は前月比で、6月▲1.6%(出来高+1.2%)、7月▲11.0%(出来高+0.0%)、8月+0.6%(出来高▲3.2%)、9月▲7.0%(出来高▲2.6%)、10月▲5.2%(出来高▲1.0%)。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響が残る中で、弱い動きとなっているものの、求人等に持ち直しの動きがみられる。
・雇用の過不足感が、宿泊・飲食サービス業を含めて不足超となる中で、ハローワークによるネット経由の日次有効求人件数は、12月に入っても改善して
いる。
・10月の雇用者数は横ばいで推移している。失業率は2.7%と底堅い動きとなっているものの、コロナ前の2019年同期と比較して、
男性を中心に追加就労希望就業者数が増加している。
・10月の賃金は、引き続き前年比プラスで推移した。これまでの企業収益の改善もあり、冬のボーナスは増加に転じる動きがある。
・有効求人倍率は、6月1.13、7月1.15、8月1.14、9月1.16、10月1.15(正社員は0.89)となった。
・完全失業率は、6月2.9%、7月2.8%、8月2.8%、9月2.8%、10月2.7%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
・ 2021年度の設備投資計画は、引き続き前年より増加する見込みであるものの、7-9月期は、供給面での制約や緊急事態宣言等の影響もあり、前期比
マイナスとなった。特にソフトウェア投資は、感染拡大による商談延期や長期化により大きく減少した。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 経常利益の動向をみると、7-9月期については、半導体不足等の供給面での制約や緊急事態宣言等の影響もあって減少したものの、全体ではコロナ前
の水準を上回っており、持ち直している。ただし、非製造業の中でも、飲食サービス業、生活関連サービス業、宿泊業の収益は依然として厳しい。
・ 企業の景況感は、持ち直しの動きがみられる。日銀短観12月調査によると、非製造業を中心に前回9月調査から改善した。緊急事態宣言等の解除に
伴う経済社会活動の段階的引上げ等の影響もあり、宿泊・飲食サービスや対個人サービス等が大きく改善した。
・ 倒産件数は、資金繰り支援等もあり、おおむね横ばいとなった。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年3月+5、6月+14、9月+18、12月+18、2022年3月+13。
「大企業・非製造業」は、2021年3月▲1、6月+1、9月+2、12月+9、2022年3月+8。
「中小企業・製造業」は、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲3、12月▲1、2022年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6。
○ 生産は、持ち直しに足踏みがみられる。
・自動車の供給制約の緩和もあり、輸送機械が持ち直す一方、中国をはじめとするスマホ等の生産減少の影響を受け、電子部品・デバイスは横ばいとなって
いる。ただし、世界の半導体の需要見通しは、2021年・2022年ともに上方修正され、2022年は一層の増加が見込まれているなど、半導体製品に対する強い
需要は今後も続く見込みである。
・鉱工業生産指数は前月比で、8月▲3.6%、9月▲5.4%、10月+1.8%、11月(予想)+9.0%、12月(予想)+2.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月+1.6%、8月▲3.2%、9月▲3.3%、10月+4.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月+0.9%、8月▲2.9%、9月▲4.1%、10月▲1.1%。
・輸送機械は前月比で、7月▲3.8%、8月▲12.5%、9月▲24.6%、10月+17.4%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・ 中国経済の回復鈍化等によりアジア向けが弱含みとなる中、足下では、自動車関連財や資本財が増加に寄与した。
○ 輸入は、このところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、8月▲13.7、9月+7.4、10月+13.4、11月+0.8。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月▲4.7、9月+12.9、10月+0.9、11月▲4.1。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気の回復テンポは、このところ鈍化している。
・21年7-9月期の実質GDP成長率は+4.9%となった。
・消費はこのところ伸びが低下している。
・生産は、このところ伸びがおおむね横ばいとなっている。
・輸出は増加している。
・固定資産投資は伸びが低下している。
・消費者物価上昇率はこのところ高まっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きが緩やかになっている。
○ インドでは、景気は持ち直している。
○ インドネシア・タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。
・2021年7-9月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。
・11月の失業率は4.2%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は持ち直し、自動車販売台数は下げ止まりの兆しがみられる。
○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化した。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリスともに、厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。
・21年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+9.1%
(イギリスは+5.1%、ドイツは+7.0%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しており、イギリスは持ち直しているが、このところ一服感がみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.6%(11月)、イギリス+3.9%(11月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直しの動きがみられ、イギリスはこのところ弱い動きとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに横ばいとなっている。