月例経済報告(R4.1.18) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和 される中で、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続して いく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの 動きが続くことが期待される。ただし、感染症による影響や供給面 での制約、原材料価格の動向による下振れリスクの高まりに十分注意 する必要がある。 また、変異株をはじめ感染症による内外経済への影響や金融資本市場 の変動等の影響を注視する必要がある。
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世界経済
○ 昨年末以降、欧米各国で感染の拡大が見られているが、感染者数の増加に比べ重症者数の増加は抑えられている。ワクチン接種の進展前の2020年
や2021年初とは異なり、経済社会活動の抑制は限定的とみられる。ただし、消費への影響も含め、今後の動向を注視していく必要がある。
○ 欧米では、景気の持ち直しが続く中で、物価の上昇や雇用情勢の改善が継続している。
○ 中国では、21年10~12月期の実質GDP成長率が前年比+4.0%となった。政府の環境規制や不動産開発規制に加え感染拡大に伴う制限措置も実施
されており、当面は回復の鈍さが続くことが見込まれる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・週次の個人消費は、昨年12月後半以降、平年水準(2017-19年)と同程度の水準で推移している。年末年始の売上高は、昨年より好調との声がある。
・外食や旅行のサービス消費は、引き続き持ち直しの動きとなっている。年末年始の交通機関の利用実績をみると、コロナ前(2019年度)を下回るものの、
昨年を大きく上回る水準に回復している。
・年末年始の小売・娯楽施設の人流は昨年より増加した。医療提供体制の強化やワクチン接種の促進、治療薬の確保に万全を期し、経済社会活動を
極力継続できる環境を作っていくことが重要である。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、7月+0.2%、8月▲1.8%、9月▲0.1%、10月+1.4%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月▲0.8%、9月+1.1%、10月+1.4%、11月0.0%、12月▲0.1%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.8%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。消費者物価は、底堅さがみられる。
・企業物価は、資源価格等の価格上昇鈍化を受け、このところ上昇テンポが鈍化した。
消費者物価について、生鮮食品・エネルギーを除いた「コアコア」で物価の基調をみると、底堅さがみられるが、「総合」でみると、エネルギー・資源
価格の上昇等を受けて、緩やかに上昇した。
・対人サービスは、財に比べて価格上昇テンポが緩やかとなっている。価格転嫁の程度を表す疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)をみると、
宿泊・飲食、運輸・郵便などのサービス業において特に悪化しており、価格転嫁の進展が重要となる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、8月▲7.7%、9月▲1.2%、10月+5.6、11月▲4.9%。
・持家着工数は前月比で、8月▲3.5%、9月+2.0%、10月+2.1%、11月▲6.2%。
・貸家着工数は前月比で、8月▲7.5%、9月+0.7%、10月+1.5%、11月▲7.1%。
・分譲着工数は前月比で、8月▲13.3%、9月▲7.2%、10月+16.0%、11月▲0.3%。
○ 公共投資は、高水準にあるものの、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前月比で、7月▲11.0%(出来高+0.0%)、8月+0.6%(出来高▲3.2%)、
9月▲3.3%(出来高▲2.6%)、10月▲3.4%(出来高▲1.0%)、11月▲0.3%、12月+0.4%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、弱い動きとなっているものの、求人等に持ち直しの動きがみられる。
・雇用者数及び失業率は概ね横ばいで推移している一方、日次有効求人件数は引き続き改善傾向となっている。
・高齢者の雇用機会の確保が進む中で、高齢者(65歳以上)の就業率は改善傾向で推移してきたが、感染拡大後は上昇テンポが鈍化。産業別の高齢者
の雇用者数をみると、宿泊・飲食や建設で減少する一方、医療・福祉や卸売・小売等で増加している。
・11月の賃金は、前年比横ばいとなった。パート・アルバイトの時給は、緊急事態宣言等が解除された10月以降、需要の急速な回復による人手不足など
を背景に、一部の職種で大きく改善した。
・有効求人倍率は、7月1.15、8月1.14、9月1.16、10月1.15、11月1.15(正社員は0.87)となった。
・完全失業率は、7月2.8%、8月2.8%、9月2.8%、10月2.7%、11月2.8%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・景気ウォッチャー調査の企業動向関連DIをみると、現状判断は、引き続き基準となる50を上回る。
一方で、先行き判断は50を下回り、オミクロン株の感染拡大の ほか、原材料価格の上昇や半導体を含む品不足の動きへの警戒感等が示されている。
・設備投資について、2021年度の設備投資計画は引き続き前年より増加する見込みであり、特にソフトウェア投資は大きく増加する見込みとなっている。
・ソフトウェア投資が生産性を改善させる効果は、教育訓練投資に積極的な企業ほど大きい。デジタル 化の効果を最大化する観点からも、「人への投資」
に官民を挙げて注力していく必要がある。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 倒産件数は、資金繰り支援等もあり、おおむね横ばいとなった。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年3月+5、6月+14、9月+18、12月+18、2022年3月+13。
「大企業・非製造業」は、2021年3月▲1、6月+1、9月+2、12月+9、2022年3月+8。
「中小企業・製造業」は、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲3、12月▲1、2022年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6。
○ 生産は、持ち直しの動きとなっている。
・部品供給不足の緩和もあり、輸送機械が持ち直すとともに、その回復がプラスチック製品や鉄鋼・非鉄金属といった他産業にも波及し始めている。
・鉱工業生産指数は前月比で、9月▲5.4%、10月+1.8%、11月+7.2%、12月(予想)+1.6%、1月(予想)+5.0%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月▲3.2%、9月▲3.3%、10月+4.2%、11月+0.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、8月▲2.9%、9月▲4.1%、10月▲1.1%、11月+3.1%。
・輸送機械は前月比で、8月▲12.5%、9月▲24.6%、10月+17.4%、11月+28.5%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・ 自動車関連財は持ち直す一方、資本財は増勢が鈍化した。情報関連財は概ね横ばいとなっている。
ただし、足下の情報関連財の輸出では、デジタル関連需要の拡大を受け、5G関連の基地局や携帯電話向けの通信機の部分品等が増加した。5G関連の
投資は世界的に一層の増加が見込まれている。
○ 輸入は、このところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、9月+7.4、10月+13.4、11月+0.8、12月+0.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月▲4.7、9月+12.9、10月+0.9、11月▲4.1、12月▲4.0。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気の回復テンポは、このところ鈍化している。
・21年7-9月期の実質GDP成長率は+4.9%となった。
・消費はこのところ伸びが低下している。
・生産は、このところ伸びがおおむね横ばいとなっている。
・輸出は増加している。
・固定資産投資は伸びが低下している。
・消費者物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きが緩やかになっている。
○ インドでは、景気は持ち直している。
○ インドネシア・タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。
・2021年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+2.3%。
○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。
・12月の失業率は3.9%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は持ち直し、自動車販売台数は下げ止まりの兆しがみられる。
○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化した。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリスともに、景気は厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。
・21年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+9.1%
(イギリスは+4.3%、ドイツは+7.0%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しており、イギリスは持ち直しているが、このところ一服感がみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.7%(12月)、イギリス+3.9%(11月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直しの動きがみられ、イギリスはこのところ持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに横ばいとなっている。