月例経済報告(R4.3.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス 感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常に 向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち 直していくことが期待される。ただし、ウクライナ情勢等による 不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、 供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある。 また、感染症による影響を注視する必要がある。
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世界経済・ウクライナ情勢
○ ウクライナ情勢を受け、世界的に不確実性が上昇している。我が国の景気の先行きについても、商品市場、金融資本市場、貿易、世界経済の変動等を
通じた影響に注視が必要である。
○ エネルギー・食糧等を始め商品価格は一層上昇、金融資本市場は不安定な動き。ロシアに対するエネルギー依存度は、欧州諸国で相対的に高い。
○ 欧米の先行き見通しは、物価上昇率は上方修正、成長率は下方修正だが、持ち直しが続く見込みとなっている。この下で、欧米で金融政策の正常化に
向けた動きが進展している。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・財消費は引き続き底堅い一方、3月21日までのまん延防止等重点措置の影響もあり、旅行や外食等のサービス消費は、2月後半も総じて弱めの動きが
続く。
・週次の個人消費は、振れを伴いつつも、概ね平年水準(2017-19年)の下限程度で推移。
・消費者マインドは、まん延防止等重点措置の延長や原材料価格の上昇の影響への懸念等を背景に、小幅低下した。
・物価上昇の下で、賃上げが実現され、所得が増加し、それが消費に結び付くことが重要である。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、9月▲0.1%、10月+1.8%、11月+2.2%、12月+0.4%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月+1.4%、11月0.0%、12月▲0.1%、22年1月▲2.4%、2月▲1.4%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.9%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ上昇している。消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
なお、前年比の表示では、4月には昨年の携帯電話通信料引下げの効果が剥落し、数値はその分、増加する。
○ 原油価格の上昇を受け、ガソリンなどのエネルギー価格は上昇している。また、国際商品市況の上昇も背景に、4月以降も様々
な品目で値上げを予定している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+3.7、11月▲3.0%、12月▲1.5%、1月▲2.1%。
・持家着工数は前月比で、10月▲0.2%、11月▲3.9%、12月▲3.3%、1月▲7.1%。
・貸家着工数は前月比で、10月+2.7%、11月▲6.1%、12月▲0.2%、1月+5.0%。
・分譲着工数は前月比で、10月+10.1%、11月+2.6%、12月▲1.5%、1月▲4.8%。
○ 公共投資は、高水準にあるものの、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前月比で、9月▲3.3%(出来高▲2.6%)、10月▲3.4%(出来高▲1.0%)、11月▲0.3%(出来高▲1.0%)、12月+0.4%(出来高▲3.2%)、
22年1月▲2.4%(出来高▲2.0%)、2月+0.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響が残る中で、引き続き弱い動きとなっているものの、求人等に持ち直しの動きがみられる。
・雇用者数及び失業率は概ね横ばいで推移している。雇用調整助成金の週間支給金額は減少しているものの、引き続き雇用維持に寄与している。
・1月の一人当たり賃金は、前年比プラスとなっている。2022年春季労使交渉について、連合の第1回回答集計では、賃上げ率は2.14%(うちベアは
0.5%)と昨年(1.81%)を上回る状況である。
・有効求人倍率は、9月1.16、10月1.15、11月1.15、12月1.17、1月0.20(正社員は0.91)となった。
・完全失業率は、9月2.8%、10月2.7%、11月2.8%、12月2.7%、1月2.8%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・2021年10-12月期の経常利益は、経済社会活動の水準が引き上げられる中で、製造業・非製造業ともに増加し、総じて改善した。
大中堅企業、中小企業とも本業の利益を示す営業利益が増加している。ただし、宿泊業の営業利益は引き続き赤字となるなど、非製造業の一部に弱さ
がみられる。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・2021年10-12月期の設備投資は、製造業・非製造業ともに前期比プラスとなった。
機械投資には持ち直しの動 きがみられ、先行指標も持ち直している。
・2022年度の設備投資の見通しは、前年度比8.2%増と高い伸びを維持している。ただし、キャッシュフローの 増加に比べて設備
投資の伸びは緩やかとなっている。今般のエネルギー価格上昇等を踏まえると、脱炭素やエネル ギー効率上昇に向けた投資が一層
重要である。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・ 先行きは、原材料価格上昇、ウクライナ情勢による不透明感を背景に低下した。
・ 倒産件数は、おおむね横ばいとなった。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年3月+5、6月+14、9月+18、12月+18、2022年3月+13。
「大企業・非製造業」は、2021年3月▲1、6月+1、9月+2、12月+9、2022年3月+8。
「中小企業・製造業」は、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲3、12月▲1、2022年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6。
○ 生産は、持ち直しの動きとなっている。
・アジア向け輸出動向等を背景に、生産用機械や電子部品・デバイスなどが緩やかに増加。
・ウクライナ情勢については、民間機関の調査では、約6割の企業がマイナスの影響を与えると回答しており、今後の影響に注視が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、11月+7.0%、12月▲1.0%、1月▲0.8%、2月(予想)+5.7%、3月(予測)+0.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、10月+4.2%、11月+0.1%、12月▲3.4%、1月+4.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月▲1.1%、11月+3.1%、12月▲3.0%、1月+10.4%。
・輸送機械は前月比で、10月+17.4%、11月+28.5%、12月+0.9%、1月▲15.7%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・弱含んでいたアジア向けが、中国の生産活動の持ち直し等を背景に横ばいとなり、アメリカや欧州向けも横ばいとなった。
○ 輸入は、おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、10月+13.4、11月+0.8、12月+0.7、22年1月▲19.6、2月▲0.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、10月+0.9、11月▲4.1、12月▲2.9、22年1月▲7.8、2月+1.9。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、一部地方で経済活動が抑制されているものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただ
し、当面は一部地方での経済活動の抑制の影響が続くと見込まれる。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
・21年10-12月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+4.0%となった。
・消費はこのところ伸びが低下している。
・生産は、このところ伸びが上昇している。
・輸出は増加している。
・固定資産投資はこのところ伸びが上昇している。
・消費者物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところおおむね横ばいとなっている。
※ 3月5~11日に開催された全国人民代表大会で、2022年の主要目標や政策運営方針が示された。
経済政策に関する主な点は以下のとおり。
・22年の実質経済成長率目標は5.5%前後(21年目標6%以上、実績8.1%)。
・今年中国が直面するリスクや課題は著しく増加している。
・穏健な金融政策の実施を強化:柔軟かつ適度にし、流動性に合理的なゆとりをもたせる。
債務総額の対GDP比の基本的な安定を維持。
・不動産市場は合理的な住宅需要を満たすようサポートし、地価・住宅価格・ 市場期待を安定させる。
・積極的な財政政策の効果の向上を図り、より一層持続可能性を重視。
財政赤字(中央+地方)は、対GDP比2.8%前後(21年目標3.2%前後)。
地方特別債の発行枠は3.65兆元(21年と同規模、1元=約19円)。
減税措置の延長・付加価値税の還付等で約2.5兆元の企業負担を軽減(20年 と同規模)。
・穏健な金融政策の実施を強化:柔軟かつ適度にし、流動性に合理的なゆとりをもたせる。
債務総額の対GDP比の基本的な安定を維持。
・不動産市場は合理的な住宅需要を満たすようサポートし、地価・住宅価格・ 市場期待を安定させる。
○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。
・2021年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+7.0%。
○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。
・2月の失業率は3.8%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は緩やかに持ち直し、自動車販売台数は持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資は増勢が鈍化した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏は、景気は一部で厳しい状況が残る中で、持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、ウクライナ情勢が
経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。また、金融資本市場の変動の影響や感染症による内外経済への影響等を注視する
必要がある。
イギリスは、厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融資本市場の変動の影響や
感染症による内外経済への影響等を注視する必要がある。
・21年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.0%(イギリスは+3.9%、ドイツは▲1.4%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.9%(2月)、イギリス+5.1%(2月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ持ち直しの動きがみられる。