月例経済報告

 

月例経済報告(R4.4.21)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中   

 で、持ち直しの動きがみられる。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常に

 向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち

 直していくことが期待される。ただし、ウクライナ情勢等による

 不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、

 供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある。

 また、感染症による影響を注視する必要がある。

 

 

世界経済・ウクライナ情勢

世界の景気は持ち直している。IMF見通しでは、22年の世界全体の成長率は+3.6%と引き続きプラス成長だが、ウクライナ情勢による不透明感を

  背景にこれまでの見通しを下方修正している。

○ 国際商品市場における価格上昇等を背景に、先進国、新興国ともにインフレ率は一層上昇。欧米の消費者マインドはこのところ低下している。

○ 中国は、感染の早期抑え込みと減少を目指す「ダイナミックゼロ」の方針の下、一部都市で厳しい防疫措置を実施している。企業マインドの低下、消費の

  下押し等がみられており、動向に注視が必要である。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる。

・外食や旅行等のサービス消費は、まん延防止等重点措置解除もあり、持ち直しの動きがみられる。消費金額を週次でみると、4月にかけて徐々に改善

 している。

・交通機関の利用実績は、3月は上昇し、GW期間の鉄道の予約状況も前年を上回る。

・一方、消費者マインドは、生活関連品目の価格上昇等を背景に、弱含んでおり、今後の消費に与える影響には注意が必要である。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、10+1.8%11+2.2%12+0.1%1月▲0.3%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、110.0%120.0%221月▲1.8%2月▲1.3%3月▲2.4%。 

       2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.1%となった。

 

物価

○ 原油や穀物などの国際商品価格はウクライナ情勢を背景に引き続き高い水準で不安定な動きとなっている。国内企業物価は上昇が

   続いており、価格上昇品目にも広がりがみられる。

○ こうした中、販売価格を引き上げる動きもみられており、販売価格DIは1980年以来の高水準。ただし、仕入価格DIも引き続き

   上昇、価格転嫁の程度を表す疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)は悪化しており、企業収益への影響に注意が必要。

○ 消費者物価は、エネルギーや食料品価格の上昇を主因に、上昇率が高まっている。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、このところ弱含んでいる。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月▲3.0%12月▲1.5%1月▲2.1%2+6.4%

・持家着工数は前月比で、11月▲3.9%12月▲3.3%1月▲7.1%2+2.6%

・貸家着工数は前月比で、11月▲6.1%12月▲0.2%1+5.0%2+1.3%

・分譲着工数は前月比で、11+2.6%12月▲1.5%1月▲4.8%2+17.7%

   公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。

・請負金額は前月比で、10月▲3.4%(出来高▲1.0%)、11月▲0.3%(出来高▲1.0%)、12+0.4%(出来高▲3.2%)、221月▲2.4%(出来高▲2.0%)、

2+0.7%3+13.6             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、弱い動きとなっているものの、就業者数及び失業率は概ね横ばいで推移している。就業率は全体として横ばいであるが、2564歳の女性は

      上昇傾向にある。

     雇用の過不足感が、幅広い業種で不足超となる中で、ハローワークによるネット経由の日次有効求人件数は、前年比で増加が続いており、求人は持ち直し 

      の動きがみられる。

      2月の一人当たり賃金は、人手不足などを背景としたパートタイム労働者の所定内給与の増加などから、前年比プラス。2022年春季労使交渉について、

        連合の第4回回答集計では、賃上げ率2.11%(うちベアは0.62%)と昨年を上回る状況である。

  ・有効求人倍率は、101.15111.15121.1710.2021.21(正社員は0.93)となった。

・完全失業率は、92.8%102.7%112.8%122.7%12.8%22.7%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。

   ・企業の景況感は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。日銀短観3月調査によると、前回12月調査から低下した。感染症の影響や原材料高を背景に、

        宿泊・飲食サービスをはじめ、多くの業種で低下している。

・先行きについても、ウクライナ情勢を背景に低下している。

     ・民間機関の調査によると、ロシア・ウクライナ情勢に対して、既に燃料価格の高騰等の影響が出ており、今後も幅広い業種でマイナスの影響が予想され

        ている。

    ・2022年度の経常利益は、2021年度と同程度の利益が見込まれているものの、一部の製造業では、前年度比マイナスの見込みとなっている。

○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。

     ・ 設備の過剰感は、日銀短観3月調査によると、製造業・非製造業ともに概ね解消している。2022年度の設備投資計画は、引き

      続き前年より増加し、特にソフトウェア投資が大きく増加する見込みとなっている。

   ただし、業種別にみると、運輸・郵便や卸・小売など非製造業の一部で前年度比マイナスとなっている。

     ・利益水準に比べて設備投資の水準が低い傾向が続いていたが、今後の利益改善が積極的な設備投資につながることを期待したい。

○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

   ・ 倒産件数は、おおむね横ばいとなった。

   ・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20216+149+1812+1820223+146+9

    「大企業・非製造業」は、20216+19+212+920223+96+7

    「中小企業・製造業」は、20216月▲79月▲312月▲120223月▲46月▲5

    「中小企業・非製造業」は、20216月▲99月▲1012月▲420223月▲6、▲10

 

生産

 生産は、持ち直しの動きがみられる。

・生産用機械や電子部品・デバイスなどが緩やかに増加した。工作機械受注は、内外需ともに底堅い動きとなっている。

・鉱工業生産指数は前月比で、12月▲1.0%1月▲0.8%2+2.0%3月(予想)+3.6%3月(予測)+9.6%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11+0.1%12月▲3.4%1+4.8%2月▲0.6%

・電子部品・デバイスは前月比で、11+3.1%12月▲3.0%1+10.4%2月▲0.7%

・輸送機械は前月比で、11+28.5%12+0.9%1月▲15.7%2+14.8%

 

外需

○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。

・弱含んでいたアジア向けが、中国の生産活動の持ち直し等を背景に横ばいとなり、アメリカや欧州向けも横ばいとなっている。

 2月の輸出では、半導体製造装置などの一般機械やプラスチックなどの化学製品がプラスに寄与した。

○ 輸入は、おおむね横ばいとなっている。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

  

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、一部地方で経済活動が抑制されているものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、持ち直しの

   動きが続くことが期待される。

 ただし、当面は一部地方での経済活動の抑制の影響が続くと見込まれる。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

   ・221-13月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+4.8%となった。

・消費はこのところ伸びが低下している。

・生産は、このところ伸びがやや低下している。

・輸出は増加している。

・固定資産投資はこのところ伸びが上昇している。

・消費者物価上昇率はこのところやや上昇している。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ低下している。

    

○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。

○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

○ 台湾では、景気は回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は持ち直している。

202110-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+6.9%

○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。

 ・3月の失業率は3.6%となった。

○ 生産は緩やかに増加した。

○ 消費は緩やかに持ち直し、自動車販売台数はこのところ減少している。

○ 設備投資は増勢が鈍化した。

○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏は、景気は一部で厳しい状況が残る中で、持ち直している。

   イギリスは、厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。

   ・2110-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.0%

   (イギリスは+5.2%、ドイツは▲1.4%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。

○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.2%3月)、イギリス+5.7%3月)。

○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直している。イギリスでは持ち直している。

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ持ち直しの動きがみられる。