月例経済報告

 

月例経済報告(R4.5.25)

基調判断

〈現状〉

・景気は、持ち直しの動きがみられる。

〈先行き〉              

・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が

進む中で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待

される。ただし、中国における感染再拡大の影響やウクライナ情勢の

長期化などが懸念される中で、供給面での制約や原材料価格の上昇、

金融資本市場の変動等による下振れリスクに十分注意する必要がある。

また、感染症による影響を注視する必要がある。

 

 

世界経済・ウクライナ情勢

世界の景気は、中国等で感染再拡大の影響がみられるものの、持ち直している。

・1-3月期のGDPは、ユーロ圏、英国では引き続きプラス成長となり、この結果、アメリカ、ユーロ圏に続き、英国もコロナ禍

 前の水準を回復した。アメリカでは生産は緩やかな増加が続き、失業率は欧米ともに引き続き低下した。

 ・国際商品市場におけるエネルギーや食料の価格は、ウクライナ情勢等を背景に高水準で推移。

 ・中国では一部都市での厳しい防疫措置を受け、国内の消費、生産などが足下で大きく減少。海運など物流停滞もみられ、供給制約

  を通じた世界経済への影響に注視が必要。

 

日本のGDP成長率

20221-3月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.2%と2期ぶりのマイナスとなった。

個人消費は横ばい、設備投資はプラスに寄与した。

一方、供給制約の緩和やワクチン・治療薬の購入などに伴う輸入増加で外需はマイナスに寄与し、GDP全体としてはマイナスとなった。

感染拡大の中でも内需がプラスという姿は、「ウィズコロナ」の下で、メリハリのきいた対策を講じることができ、経済社会活動を極力継続できるような取り組み

の表れとみられる。

○ 輸入物価上昇が内需に徐々に波及し、GDPデフレーターはプラスとなっている。

○ 年度でみると、2021年度は前年度比2.1%と3年ぶりのプラス成長となった。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる。

・まん延防止等重点措置の解除等を背景に、外食や旅行等のサービス消費は持ち直しとなっている。

特にGW期間は、3年ぶりに行動制限がない中で、こうした分野を中心に活発な動きがみられる。

・直近までの週次の消費金額でみると、5月にかけても平年を上回る水準となっている。

・一方、物価上昇の下、実質総雇用者所得の伸びは抑制されており、こうした動向が消費に与える影響には注意が必要である。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、11+2.2%12+0.1%1月▲0.6%2月▲1.2%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、120.0%221月▲1.8%2月▲1.3%3月▲2.4%4+0.2%。 

3月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となった。

 

物価

○  ウクライナ情勢等を背景とする原材料価格上昇等により、輸入物価は、4月は1974年以来の伸び(前月比)となっている。

○ 国内企業物価は、需要段階別にみると、素原材料や中間財は大きく上昇した。

・一方、最終財も上昇し、価格転嫁がうかがえるが、上昇幅は相対的に小さい。継続的な賃上げと価格転嫁が重要となる。

○ 消費者物価は、エネルギーや食料品の値上げを背景に上昇している。

・4月は、携帯通信料引下げ効果の剥落もあり、前年比2.5%と約30年ぶりの高い伸びとなった(総合指数、消費税増税期間を

  除く)。変動の大きい生鮮食品及びエネルギーを除いた品目からなる「コアコア」でみても、年率換算で2%程度となった

(前月比0.2%、4か月連続)。

○ 民間調査によれば、今後も光熱費や食料品等の品目で値上げが行われる見込みである。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月▲1.5%1月▲2.1%2+6.4%3+6.3%

・持家着工数は前月比で、12月▲3.3%1月▲7.1%2+2.6%3月▲0.1%

・貸家着工数は前月比で、12月▲0.2%1+5.0%2+1.3%3+18.7%

・分譲着工数は前月比で、11+2.6%12月▲1.5%1月▲4.8%2+17.7%3月▲2.7%

   公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。

・請負金額は前月比で、11月▲0.3%(出来高▲1.0%)、12+0.4%(出来高▲3.2%)、221月▲2.4%(出来高▲2.0%)、2+0.7%(出来高+1.1%)、

3+13.64月▲3.4%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、持ち直しの動き。就業者数は緩やかに増加し、失業率は2か月連続で低下となった。1年以上の長期失業者も前年に比べて減少した。

○ 求人は持ち直している。製造業や宿泊・飲食サービス業において求人は増加した。ハローワークによるネット経由の日次有効求人も、引き続き増加。

○ 一人当たり賃金は、所定内給与の増加が続いたことなどから、3月は前年比プラスとなった。また、パート・アルバイト募集時の時給についても、幅広い

  職種において増加傾向で推移している。

    ・有効求人倍率は、111.15121.1710.2021.2131.22(正社員は0.94)となった。

・完全失業率は、102.7%112.8%122.7%12.8%22.7%,32.6%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。

   ・1-3月期の上場企業の経常利益は、製造業・非製造業ともに増益となり、コロナ前の2019年を大きく上回る水準。機械製品の好調さや物流の活発化、

        資材の取引価格上昇の影響などを受け、多くの業種で増益となった。

   ・ 企業の景況感は、原材料価格の高騰などを背景に、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。

   ・ ただし、1-3月期のGDP統計によれば、資本財価格等の上昇の下、実質ベースの伸びは名目を下回る。

○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

  ・ 倒産件数はおおむね横ばい、休廃業・解散は減少となった。

  ・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20216+149+1812+1820223+146+9

    「大企業・非製造業」は、20216+19+212+920223+96+7

    「中小企業・製造業」は、20216月▲79月▲312月▲120223月▲46月▲5

    「中小企業・非製造業」は、20216月▲99月▲1012月▲420223月▲6、▲10

 

生産

 生産は、持ち直しの動きがみられる。

・供給制約等により、輸送機械は持ち直しに足踏みがみられる一方、生産用機械や電子部品・デバイスなどが緩やかに増加した。足下では、中国での

 活動制限を受け、国内の様々な業種において、部品・製品調達の遅れや生産活動の停滞が生じており、今後の影響を注視する必要がある。

 ・鉱工業生産指数は前月比で、1月▲2.4%2+2.0%3+0.3%4月(予測)+5.8%5月(予測)▲0.8%

 ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月▲3.4%1+4.8%2月▲0.6%3+3.9%

 ・電子部品・デバイスは前月比で、12月▲3.0%1+10.4%2月▲0.7%3+2.0%

    ・輸送機械は前月比で、12+0.9%1月▲15.7%2+14.8%3月▲5.1%

     中国での活動制限に伴う調達や精算等への影響

      自動車…………中国のロックダウンに伴う部品調達難により、国内複数工場 の稼働を一時停止。

      半導体メーカー、製紙業者……中国の港湾の閉鎖に伴い部品を迂回ルートで調達。

    ・電機メーカー…洗濯機、炊飯器、電子レンジ等一部電化製品の新規受注を 停止。

    ・家電量販店……調理家電やエアコン等が一部品薄。

    ・家具小売店……棚やテーブル、ソファ等約40品目が販売停止。

    ・衣料販売店……婦人・紳士衣料品の納品に遅れ。

 

外需

○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。

・我が国の輸出は概ね横ばい。アメリカや欧州向けは、持ち直しの動きがみられる一方、アジアは中国向けの落ち込みにより弱含み。

 輸入は、中国の活動制限の影響などから弱含みとなっている。

○ 輸入は、このところ弱含んでいる。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、12+0.7221月▲19.62月▲0.23+10.14+2.6

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、12月▲2.9221月▲7.82+1.93+5.74+0.2

  

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、一部地方で経済活動が抑制されており、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

先行きについては、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、当面は一部地方での経済活動の抑制の影響が続くと見込まれる。

また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

   ・221-3月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+4.8%となった。

     ・消費はこのところ弱い動きとなっている。

     ・生産は、このところ伸びがやや低下している。

     ・輸出は緩やかに増加している。

     ・固定資産投資はこのところ伸びやや低下している。

     ・消費者物価上昇率はこのところ上昇している。

     ・製造業購買担当者指数(PMI)は低下している。

○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。

○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

○ 台湾では、景気は回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融資本市場の変動の影響

や感染症による内外経済への影響等を注視する必要がある。

20221-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率▲1.4%

○ 雇用者数は増加、失業率は低下した。

 ・4月の失業率は3.6%となった。

○ 生産は緩やかに増加した。

○ 消費は緩やかに持ち直し、自動車販売台数は持ち直しの動きがみられる。

○ 設備投資は緩やかに増加した。

○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。

   ※FOMC5月会合(5/34 決定事項

 ○ 政策金利の誘導目標 範囲を0.50%ポイント 引上げる。

 ○ 6/1から、以下を毎月の削減上限として、 保有資産の削減を開始。

・米国債:300億ドル/

MBS175億ドル/

  削減開始から3か月後、 削減上限を以下のとおり 引上げ予定。

・米国債:600億ドル/

MBS350億ドル/

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、景気は一部で厳しい状況が残る中で持ち直している。

イギリスは、景気は厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。

   ・221-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.1%

   (イギリスは+3.0%、ドイツは+0.8%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。

○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.9%4月)、イギリス+6.1%4月)。

○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ持ち直している。

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ持ち直しの動きがみられる。