月例経済報告(R4.6.20) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、持ち直しの動きがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が 進む中で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待 される。ただし、ウクライナ情勢の長期化や中国における経済活動抑制の影響などが懸念される中での原材料価格の上昇や供給面での制約に 加え、金融資本市場の変動等による下振れリスクに十分注意する必要がある。
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世界経済・ウクライナ情勢
○ 世界の景気は、中国において足踏みがみられるものの、持ち直している。
・OECD見通しでは22年の世界成長率は3.0%と、コロナ禍前と同程度の見込みとなった。
ただし、ウクライナ情勢を背景に成長率は下方修正した。
・OECD諸国の22年のインフレ率は8.8%と34年ぶりの高い伸びとなる見込みである。
・足下の消費者物価は、欧米では前年比8~9%と、一段と上昇した。
・失業率は引き続き低下傾向となった。この下で、世界的に金融政策の正常化が引き続き進展した。
・ウクライナ情勢の長期化が懸念される中で、エネルギー、食料価格は引き続き高水準で不安定な動きとなった。
・中国では、厳しい防疫措置が徐々に緩和される中で、生産、消費は引き続き伸びが足踏みとなった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・外食や旅行等のサービス消費は持ち直しが続く。ただし、旅行では居住地から近隣県への旅行の回復が中心となっている。
・街角の景況感は、物価上昇への懸念もある一方、人出の増加や夏季の行事・旅行への期待等から上昇した。
・直近まで個人消費を週次の消費金額でみると、6月にかけても概ね平年を上回る水準となった。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、12月+0.1%、1月▲0.6%、2月▲0.7%、3月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月▲1.8%、2月▲1.3%、3月▲2.4%、4月+0.2%、5月+1.1%。
・4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.3%となった。
物価
○ ウクライナ情勢等を背景とする原材料価格上昇等により、国内企業物価は5月は前年比9.1%と上昇が続いており、価格上昇品目にはさらなる広がりが
みられる。
○ 消費者物価は、エネルギーや食料品の値上げを背景にこのところ上昇している。
・4月は、携帯通信料引下げ効果の剥落もあり、前年比2.5%と約30年ぶりの高い伸び(総合)となった。
・ただし、G20諸国の半数程度が7%以上となる一方、日本は下位3番目であるなど、諸外国に比べて低い伸びにとどまる。
○ 我が国のエネルギー・食料品の物価上昇率は、これまで実施してきたガソリン等の激変緩和事業や電気代の燃料費調整制度、小麦の国内価格上昇を抑制する政策等もあり、欧米に比べて低い伸びに留まっている。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、住宅建設は、賃貸マンションや分譲マンションの需要増加を反映し、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲2.1%、2月+6.4%、3月+6.3%、4月▲4.6%。
・持家着工数は前月比で、1月▲7.1%、2月+2.6%、3月▲0.1%、4月▲2.3%。
・貸家着工数は前月比で、1月+5.0%、2月+1.3%、3月+18.7%、4月▲11.8%。
・分譲着工数は前月比で、1月▲4.8%、2月+17.7%、3月▲2.7%、4月3.2%。
○ 公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。
・請負金額は前月比で、12月+0.4%(出来高▲3.2%)、22年1月▲2.4%(出来高▲2.0%)、2月+0.7%(出来高▲0.7%)、3月+13.6%(出来高+1.1%)、
4月▲3.4%、5月▲2.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直しの動きとなった。就業者数は緩やかに増加し、失業率は3か月連続で低下となった。就業率(就業者数/人口)も、特に25~64歳
の女性において、コロナ前を上回る水準まで上昇した。
○ 求人は持ち直した。求人広告掲載件数をみると、生産工程等やサービスなど、幅広い業種において増加した。ハローワークによるネット経由の日次有効
求人も、引き続き増加した。
○ 一人当たり賃金は、所定内給与の増加が続いたことなどから、4月も前年比プラスとなった。2022年春季労使交渉について、賃上げ率は2.09%と昨年を
上回る状況。民間機関の調査によると、夏のボーナスも、4年ぶりのプラスとなる見込みである。
・有効求人倍率は、1月0.20、2月1.21、3月1.22、4月1.23(正社員は0.97)となった。
・完全失業率は、11月2.8%、12月2.7%、1月2.8%、2月2.7%、3月2.6%、4月2.5%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・1-3月期の経常利益は、製造業・非製造業ともに前年比で増益となり、概ねコロナ前の2019年を上回る水準となった。非製造業では、飲食サービス業や宿泊業などで、本業の利益を表す営業利益は赤字となった。
・中小企業製造業では、経常利益は原材料価格の上昇等を背景に前年比で減益。経常利益(売上高対比)をみると、商品仕入原価などが計上される売上原価の増加が下押しに寄与した。
・価格転嫁の程度を表す疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)をみると、中小企業では、加工系製造業において特に悪化した。引き続き価格
転嫁が重要となる。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・ 1-3月期の設備投資は、製造業では前期比プラスとなった。機械投資には持ち直しの動きがみられる。ソフトウェア投資は月々の
振れを伴いながら、均してみると緩やかに増加した。
・2022年度の設備投資の見通しは、前年度比16.0%増と高い伸びとなっており、脱炭素やエネルギー効率上昇に向けた投資の実現が
重要となる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・ 倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年6月+14、9月+18、12月+18、2022年3月+14、6月+9。
「大企業・非製造業」は、2021年6月+1、9月+2、12月+9、2022年3月+9、6月+7。
「中小企業・製造業」は、2021年6月▲7、9月▲3、12月▲1、2022年3月▲4、6月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2021年6月▲9、9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6、▲10。
○ 生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・供給制約等により、輸送機械は持ち直しに足踏みがみられる。また、電子部品・デバイスも、中国の活動制限の影響などから増勢が鈍化しているものの、
世界の半導体の需要見通しは、2022年は上方修正され、2023年も一層の増加が見込まれるなど、半導体製品に対する強い需要は今後も続く見込みと
なっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月+2.0%、3月+0.3%、4月▲1.5%、5月(予測)+4.8%、6月(予測)+8.9%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月+4.8%、2月▲0.6%、3月+3.9%、4月▲2.7%。
・電子部品・デバイスは前月比で、1月+10.4%、2月▲0.7%、3月+2.0%、4月▲6.6%。
・輸送機械は前月比で、1月▲15.7%、2月+14.8%、3月▲5.1%、4月▲0.1%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・アメリカや欧州向けは、持ち直しの動きがみられる一方、中国は5月も減少した。
○ 輸入は、下げ止まっている。
・輸入は、中国の活動制限の影響の緩和などから下げ止まりとなった。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲19.6、2月▲0.2、3月+10.1、4月+2.6、5月+3.6。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月▲7.8、2月+1.9、3月+5.7、4月+0.2、5月+2.2。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、一部地方で経済活動が抑制されており、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、当面は一部地方での経済活動の抑制の影響が続くと見込まれる。
また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
・22年1-3月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+4.8%となった。
・消費はこのところ弱い動きとなっている。
・生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・輸出は増加している。
・固定資産投資はこのところ伸びやや低下している。
・消費者物価上昇率はこのところ上昇している。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
◎ 中国の景気下支え策
1.企業支援
○本年の減税・税還付を2.8兆円追加(総額52.8兆円)。
○中小零細企業向け貸付、感染症の影響を受けた人々の住宅ローン返済猶予。
○交通・物流向けの特別再貸出(2兆円)。
○サービス業の中小零細企業の家賃を3~6カ月減免。
2.投資促進
○地方専項債券を、原則6月末までに発行・8月末までに使用を完了。
○国家重大インフラ発展計画を編成、重大プロジェクトを推進。
3.消費促進・家計支援策
○乗用車の取得税を減免(減税規模1.2兆円)。
○生活保障(救済補助金3.1兆円)。
4.雇用対策
○新規大卒生を雇う企業に最大一人当たり3万円を補助。
5.食料安全保障
○コスト上昇を補うため農業補助金2,000億円を支給。 等
○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融資本市場の変動の影響や金融政策正常化の影響等を注視する必要がある。
・2022年1-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率▲1.5%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・5月の失業率は3.6%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は緩やかに持ち直し、自動車販売台数はこのところ弱い動きとなっている。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部で厳しい状況が残る中で持ち直している。
イギリスは、持ち直している。
・22年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+2.5%(イギリスは+3.0%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+4.4%(5月)、イギリス+6.1%(4月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直し、イギリスはこのところ増加している。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。