月例経済報告(R4.7.26) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が 進む中で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待 される。ただし、世界的に金融引き締めが進む中での金融資本市場の 変動や原材料価格の上昇、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、中国において足踏みがみられるものの、持ち直している。
・欧米では失業率が引き続き低下傾向となっている。景気の持ち直しの進展に伴う世界的な需給引締まりに、ウクライナ情勢を
受けた国際商品市況の高騰等が相まって、消費者物価が一段と上昇した。この下で、世界的に金融引締めが進展した。
・欧米では、サービス消費の持ち直し等を背景に非製造業の景況感は高めに推移する一方、コスト上昇や供給制約等から、製造業
の景況感は低下した。株価が不安定に推移するなど、世界経済の不確実性に高まりがみられる。
・中国では厳しい防疫措置の影響により22年4~6月期の実質GDP成長率が大きく低下した。企業の景況感、消費・生産は4月に
大きく低下したが、5~6月にかけて改善した。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・外食や旅行等のサービス消費は持ち直しが続く。宿泊者数に加え、7月の交通機関の利用実績も、上昇傾向が続く。
・百貨店の販売額は、人出の増加に伴って改善。高額品や外出増加に伴う衣類等を中心に好調との声が聞かれる。
・物価上昇により、食料・光熱費等の生活必需品への支出がコロナ前を上回る一方、その他への支出はコロナ前を下回り、低所得世帯を中心に節約
志向の動きがみられる。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、1月▲0.6%、2月▲0.7%、3月+0.2%、4月+0.7%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月▲1.3%、3月▲2.4%、4月+0.2%、5月+1.1%、6月▲2.0%。
・5月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 原材料価格上昇等により、国内企業物価は、6月は前年比+9.2%と上昇が続く。
・我が国の生産者物価を需要段階別にみると、原材料等の上昇に対し、中間需要や最終需要では相対的に上昇幅が小さい。引き続き価格転嫁が
課題となっている。
一方、アメリカでは、中間需要、最終需要ともに上昇した。
○ 消費者物価は、エネルギーや食料品の値上げを背景に上昇した。6月の前年比は+2.4%と引き続き高い伸び(総合)。民間調査によれば、今後も
食料を中心に値上げが予定されており、8月以降も食品の多くの品目で値上げが続くと見込まれる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、賃貸マンションや分譲マンションの需要増加を反映し、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月+6.4%、3月+6.3%、4月▲4.6%、5月▲6.5%。
・持家着工数は前月比で、2月+2.6%、3月▲0.1%、4月▲2.3%、5月+1.4%。
・貸家着工数は前月比で、2月+1.3%、3月+18.7%、4月▲11.8%、5月▲4.6%。
・分譲着工数は前月比で、2月+17.7%、3月▲2.7%、4月3.2%、5月▲15.4%。
○ 公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。
・請負金額は前月比で、22年1月▲2.4%(出来高▲2.0%)、2月+0.7%(出来高▲0.7%)、3月+13.6%(出来高+0.8%)、4月▲3.4%(出来高+3.2%)、
5月▲2.0%(出来高+2.9%)、6月+7.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
○ 就業者数は増加傾向にあり、失業率は低下傾向となっている。就業率(就業者数/15歳以上人口)も、主に女性の正規雇用の増加により、コロナ
前を上回る水準まで上昇した。
○ 雇用の過不足感が、宿泊・飲食サービスを中心に幅広い業種で不足超となる中で、ハローワークによるネット経由の日次有効求人も、引き続き増加
して いる。
○ 総雇用者所得は、雇用者数の増加や賃金の上昇により、名目では前年比プラスとなる一方で、物価上昇の影響で、実質では前年比マイナスと
なった。2022年春季労使交渉について、賃上げ率は2.07%と昨年を上回った。
民間機関の調査によると、夏のボーナスも、前年比で大幅なプラスとなる見込みである。
・有効求人倍率は、1月0.20、2月1.21、3月1.22、4月1.23、5月1.24(正社員は0.98)となった。
・完全失業率は、12月2.7%、1月2.8%、2月2.7%,3月2.6%、4月2.5%、5月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・企業の景況感は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。日銀短観6月調査によると、中国の活動制限に伴う供給制約や原材料高を背景に、製造業
では幅広い業種で前回3月調査から小幅に悪化した。一方、非製造業では、経済活動の回復により、宿泊・飲食サービスなどを中心に小幅に改善
した。
・2022年度の経常利益は、宿泊・飲食サービスの黒字転化が見込まれていることもあり、非製造業では2021年度と同程度の利益が見込まれている。
一方、多くの製造業では、前年度比マイナスの見込みとなった。
・製造業を中心に、仕入価格DIが大幅に上昇しており、価格転嫁の程度を表す疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)は厳しい状況が続く。
引き続き賃上げと価格転嫁が重要となる。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備の過不足感は、日銀短観6月調査によると、製造業・非製造業ともに概ね解消したものの、設備投資はコロナ前に比べて、依然として低い水準と
なった。2022年度の設備投資計画は、引き続き前年より増加し、特にソフトウェア投資が大きく増加する見込みとなっている。
・業種別にみると、各種機械製造業やサービス業などで前年度比大幅プラスとなった。
・売上対比でみた設備投資計画は、過去に比べて積極的であり、今後の売上改善が積極的な設備投資につながることを期待したい。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・ 倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年9月+18、12月+18、2022年3月+14、6月+9、9月+10。
「大企業・非製造業」は、2021年9月+2、12月+9、2022年3月+9、6月+13、9月+13。
「中小企業・製造業」は、2021年9月▲3、12月▲1、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2021年9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6、6月▲1、9月▲5。
○ 生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・供給制約等により、輸送機械は持ち直しに足踏みがみられる。
また、電子部品・デバイスや生産用機械も、中国の活動制限の影響が残り、増勢が鈍化した。
工作機械受注は、内需が底堅い一方で、中国等のアジア向けの外需には足踏み感がみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月+0.3%、4月▲1.5%、5月▲7.5%、6月(予測)+12.0%、7月(予測)+2.5%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月▲0.6%、3月+3.9%、4月▲2.7%、5月▲5.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、2月▲0.7%、3月+2.0%、4月▲6.6%、5月▲4.2%。
・輸送機械は前月比で、2月+14.8%、3月▲5.1%、4月▲0.1%、5月▲7.4%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・アメリカや欧州向けは、持ち直しの動きがみられる一方、アジア向けは横ばいとなっている。
○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。
・内需の底堅さやアジアからの輸入の堅調さを反映して、持ち直しの動きがみられる。中国の活動制限の影響の緩和などから下げ止まりとなった。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月▲0.2、3月+10.1、4月+2.6、5月+3.6、6月▲1.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月+1.9、3月+5.7、4月+0.2、5月+2.2、6月▲4.9。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は一部地方での経済活動の抑制の影響が残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、当面は一部地方での経済活動の抑制の影響が続くと見込ま
れる。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
・22年4-6月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+0.4%となった。
・消費はこのところ持ち直しの動きがみられる。
・生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・輸出は増加している。
・固定資産投資はこのところ伸びやや低下している。
・消費者物価上昇率は上昇している。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復のテンポが鈍化している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。
ただし、金融引き締めに伴う影響等による下振れリスクに留意する必要がある。
・2022年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率▲1.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・6月の失業率は3.6%となった。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 消費は緩やかに持ち直し、自動車販売台数はこのところ弱い動きとなっている。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部で厳しい状況が残る中で持ち直している。
イギリスは、持ち直している。
・22年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+2.0%
(イギリスは+3.1%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+4.6%(6月)、イギリス+6.1%(6月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直し、イギリスはこのところ増加している。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。