月例経済報告(R4.8.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が 進む中で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待 される。ただし、世界的に金融引き締め等を背景とした海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇による家計や企業への影響や供給面での制約に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、持ち直しのテンポが鈍化している。
・失業率が低下傾向で推移する一方、世界的な物価上昇、金融引締めが進む中で、4~6月期GDPは、アメリカ、イギリス、ドイツ
などでマイナスとなった。
・アメリカでは、個人消費はプラスが続く一方、金利上昇等を背景に、住宅投資、設備投資はマイナスとなった。
・ユーロ圏は、旅行や宿泊などのサービス消費は底堅い動きがうかがえる。
・足下にかけて、物価上昇への懸念等を背景に、欧米の消費者や製造業企業のマインドは低下傾向となっている。
金融引締めの進展や一層の物価上昇、供給面での制約等による先行きの下振れリスクには留意が必要である。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年4-6月期(1次速報)の実質GDP成長率は、前期比+0.5%(年率+2.2%)となった。
・感染対策と経済社会活動の両立維持を背景に対人サービスなど個人消費が増加し、企業収益が改善する中で設備投資も増加する
など、民需中心にプラス成長となった。
○ 実質GDPはコロナ前(19年10-12月)の水準を回復した。
・需要項目別にみると、輸出や個人消費がコロナ前を上回る一方、設備投資は下回っている。
○ 実質GDP(国内総生産)が増加する一方、その対価として得られる所得は、輸入価格上昇(交易条件悪化)により海外に流出する形(交易損失)となり、
実質GNI(国民総所得)は減少した。輸出競争力向上や省エネ進展などによる交易条件改善の観点からも、設備投資の回復が課題である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・一部に感染拡大による影響はみられるものの、新車販売が2か月連続で増加するほか、お盆期間の交通機関の利用の高まり、
3年ぶり開催の夏祭り等のイベントが全国各地で実施されるなど、ウィズコロナの下での活動が進展し、消費回復の動きに幅広
さがみられる。
・雇用が改善し、賃上げの流れが継続・拡大する中、総雇用者所得は名目では増加している一方、物価上昇によって実質では前年比
マイナスとなった。こうした中、感染拡大も相まって、消費者マインドは低下した。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、2月▲0.7%、3月+0.2%、4月+1.1%、5月+1.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月▲2.4%、4月+0.2%、5月+1.1%、6月▲2.0%、7月▲1.9%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価は、上昇している。
・国際商品市況は、本年半ば以降、欧米の金融引締めや中国の防疫措置等を背景に下落がみられるなど不安定な動きとなって
いる。
国内企業物価は、石油製品や非鉄金属はこうした動きを受け、上昇が鈍化した。
・一方、電気代等は燃料費調整制度の下で市況の動きを時差を伴って反映するため、当面は上昇する見込みである。
○ 消費者物価は、エネルギーや食料品を中心に7月も前年比+2.6%(総合)と引き続き高い伸びとなった。今後も食料品を中心に値上げが予定されて
おり、消費者物価の上昇は当面続くと見込まれる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月+6.3%、4月▲4.6%、5月▲6.5%、6月+2.1%。
・持家着工数は前月比で、3月▲0.1%、4月▲2.3%、5月+1.4%、6月▲2.0%。
・貸家着工数は前月比で、3月+18.7%、4月▲11.8%、5月▲4.6%、6月+2.2%。
・分譲着工数は前月比で、3月▲2.7%、4月3.2%、5月▲15.4%、6月+5.9%。
○ 公共投資は、底堅さが増している。
・請負金額は前月比で、2月+0.7%(出来高▲0.7%)、3月+13.6%(出来高+0.8%)、4月▲3.4%(出来高+1.7%)、5月▲2.0%
(出来高+2.3%)、6月+7.7%(出来高+2.6%)、7月▲9.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
○ 失業率は、6月は横ばいとなった。就業者数は増加傾向が継続している。
○ 一人当たり賃金は、6月は夏季賞与の大幅なプラスを受け前年比で大きくプラスとなった。過去20年間で2番目に高い賃上げとなった春季労使交渉、
過去最大の最低賃金引上げなど、賃上げモメンタムが継続している。
○ 学び直しや労働移動も賃金・所得の上昇に貢献した。OFF-JTと自己啓発を両方実施する者は、片方のみの者に比べ、年収増加が明確となった。
正社員(40代以下)は転職を通じて平均的に年収が増加、また、足下では転職により賃金が1割以上増加した者の割合は4四半期連続で上昇した。
・有効求人倍率は、2月1.21、3月1.22、4月1.23、5月1.24、6月1.27(正社員は0.99)となった。
・完全失業率は、2月2.7%,3月2.6%、4月2.5%、5月2.6%、6月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・2022年4-6月期の上場企業の経常利益(※注;非製造業について、特殊要因(金融関連)による振れを控除したベース)は、製造業・非製造業とも
に増益となり、水準も4-6月期として過去最高となった。本業の利益である営業利益には原材料価格上昇や供給制約による下押し
の影響がある一方、為替差益等による営業外収益が押し上げの要因となった。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・企業の設備投資マインドは前向きとなっている。
コロナ禍・供給制約下で先送りしていた能力増強投資のほか、脱炭素化・デジタルを活用した自動化など重点分野に向けた投資
意欲も高い。
他方、脱炭素化やイノベーションにおいては人材不足が課題であり、人的資本の蓄積に向けた取り組みも重要となっている。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年9月+18、12月+18、2022年3月+14、6月+9、9月+10。
「大企業・非製造業」は、2021年9月+2、12月+9、2022年3月+9、6月+13、9月+13。
「中小企業・製造業」は、2021年9月▲3、12月▲1、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2021年9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6、6月、▲1、9月▲5。
○ 生産は、持ち直しの動きがみられる。
・生産は、中国のロックダウンの影響によって生じていた減産が概ね解消されるなど、持ち直しの動きがみられる。
・世界的な半導体不足の状況は当面続くと考えられるものの、世界的な物価上昇の下でスマホ・PC需要に鈍化の動きもあり、足下
では国内の在庫率も高まっている。こうした中、世界の半導体市場の成長見通しを下方改定する見方もある。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月▲1.5%、5月▲7.5%、6月+9.2%、7月(予測)+3.8%、8月(予測)+6.0%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月+3.9%、4月▲2.7%、5月▲5.0%、6月+9.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、3月+2.0%、4月▲6.6%、5月▲4.2%、6月+11.6%。
・輸送機械は前月比で、3月▲5.1%、4月▲0.1%、5月▲7.4%、6月+11.8%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・アジアや欧州向けは持ち直しの動きがみられる一方、アメリカ向けは概ね横ばい。引き続き、海外景気の動向に注意が必要で
ある。
○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、3月+10.1、4月+2.6、5月+3.6、6月▲1.1、7月▲9.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月+5.7、4月+0.2、5月+2.2、6月▲4.9、7月▲4.8。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが
期待される。ただし、経済活動の抑制の影響や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
・22年4-6月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+0.4%となった。
・消費はこのところ持ち直しの動きがみられる。
・生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・輸出は増加している。
・固定資産投資は伸びが低下している。
・消費者物価上昇率は上昇している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直しのテンポが鈍化している。
○ インド・タイでは、景気は持ち直している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾では、景気は回復のテンポが鈍化している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直しのテンポが鈍化している。先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、
金融引き締めに伴う影響等による下振れリスクに留意する必要がある。
・2022年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率▲0.9%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・7月の失業率は3.5%となった。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 消費は持ち直しのテンポがこのところ鈍化、自動車販売台数はこのところ弱い動きとなっている。
○ 設備投資はこのところ横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は一部でテンポの鈍化がみられるものの持ち直している。
イギリス・ドイツは、持ち直しのテンポが鈍化している。
・22年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+2.5%
(イギリスは▲0.3%、ドイツは▲0.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ横ばいとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+5.1%(7月)、イギリス+6.6%(7月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直し、イギリスはこのところ横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。