月例経済報告

 

月例経済報告(R4.9.30)

基調判断

〈現状〉

・景気は、緩やかに持ち直している。

〈先行き〉              

・先行きについては、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。

 

 

世界経済

世界の景気は、緩やかな持ち直しが続いている。欧米主要国の2022年成長見通しは下方修正となったものの、総じてプラス成長となる見込みと

 なっている。

・失業率は総じておおむね横ばい。欧米の消費者物価は上昇が続いており、物価安定に向けて速いテンポで金融引締めを実施。

 ただし、金融資本市場の変動や物価上昇、供給制約等による下振れリスクの高まりに引き続き留意が必要である。

・英国では消費は弱含んでおり、景気は持ち直しに足踏み。世界的な物価上昇の下で半導体の需要鈍化の影響等から韓国や

 台湾では製造業の景況感が低下し、景気に足踏みが見られる。

 

日本の実質GDP成長率

20224-6月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比+0.9%(年率+3.5%)となった。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。

・足下では、夏場の感染拡大が落ち着きを見せる中で、外食売上や宿泊稼働率も改善の動きとなっている。

・雇用が改善し、賃上げの流れが定着・拡大する中、総雇用者所得は名目ではプラスだが、物価上昇により実質ではマイナス

 となり、消費者マインドも弱含みとなっている。

・家計の消費支出をみると、エネルギー・食料品関連の支出は物価上昇に伴い2019年比でプラスとなっている一方、その他の

 支出はマイナスであり、低所得者層を中心に節約傾向が継続している。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、3+0.2%4+1.1%5+0.8%6+0.4%

  ・消費者態度指数(DI)は前月差で、4+0.2%5+1.1%6月▲2.0%7月▲1.9%8+2.3%。 

  ・7月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.8%となった。

 

物価

○ 国内企業物価は、上昇している。

・国際商品市況は、本年半ば以降、欧米の金融引締め等を背景に下落の動きもみられるなど不安定な動きが続く中、足下では

 円安も進行している。

○ 消費者物価は、8月は前年比+3.0%(総合)と引き続き高い伸びであり、サービス価格もプラスに転じた。物価上昇はエネルギーや食料品といった

   必需品に顕著に現れている。今後も食料品を中心に値上げが予定されており、また、電気代等は市況の動きを時差を伴って反映することから、消費者

   物価の上昇は続くと見込まれる。 

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、底堅い動きとなっている。 

・建設コストの上昇等を背景に持ち家の着工は弱い動きだが、貸家及び分譲の着工は底堅い動きとなっている。

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、4月▲4.6%5月▲6.5%6+2.1%7月▲2.4%

・持家着工数は前月比で、4月▲2.3%5+1.4%6月▲2.0%7月▲2.8%

・貸家着工数は前月比で、4月▲11.8%5月▲4.6%6+2.2%7月▲2.8%

・分譲着工数は前月比で、43.2%5月▲15.4%6+5.9%7月▲0.7%

   公共投資は、底堅さが増している。

・請負金額は前月比で、3+13.6%(出来高+0.8%)、4月▲3.4%(出来高+1.7%)、5月▲2.0%(出来高+2.3%)、6+7.7%

(出来高+2.6%)、7月▲9.0%(出来高▲0.4%)、8+1.4%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、持ち直している。

○ 失業率は、7月はおおむね横ばいとなった。失業率・就業者数は足下で概ね横ばいだが、就業率は女性雇用者の増加等によって上昇傾向が継続

      した。

○ 一人当たり賃金は、前年比でプラスが継続。夏のボーナス(6-7月平均)は、2018年以来の前年比プラスとなった。好調な収益を背景に、規模が

     大きい企業ほどプラス幅が大きい。成長と分配の好循環の実現に向け、引き続き、賃上げの流れの継続・拡大が重要である。

   ・有効求人倍率は、31.2241.2351.2461.2771.29(正社員は1.01)となった。

   ・完全失業率は、22.7%,32.6%42.5%52.6%62.6%72.6%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。

   20224-6月期の企業の経常利益は、大中堅企業を中心に増加し、全体としては過去最高水準となった。他方、中小企業では

      前年同期比・前期比ともにマイナスとなっている。

    ・特に、製造業をみると、大中堅企業では営業利益が微減となる中、円安に伴う為替差益等(営業外収支)が経常利益を押上げ

     ている。一方、中小企業では、原材料高を十分に価格転嫁できずに営業利益が大きく減少した。

  ・円安による営業外収支の押上げも少ない。中小企業の収益力強化に向けては、価格転嫁、輸出促進を含めた販路拡大等が課題

    である

○ 企業の設備投資は、デジタル化等の流れを受けたソフトウェア投資の増加が牽引する中、持ち直しの動きが見られる。

・機械投資も、特に先行指標である機械受注が持ち直した。企業規模別にみると、好調な収益を背景に大中堅企業の投資は

  20224-6月期に前期比で大きくプラスとなった一方、中小企業ではマイナス。収益改善と投資拡大に向けた取組、そのため

  にも価格転嫁が引き続き重要である。

○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

・ 倒産件数はおおむね横ばいとなっている。

・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

  「大企業・製造業」は、20219+1812+1820223+146+99+10

  「大企業・非製造業」は、20219+212+920223+96+139+13

  「中小企業・製造業」は、20219月▲312月▲120223月▲46月▲49月▲5

  「中小企業・非製造業」は、20219月▲1012月▲420223月▲66月、▲19月▲5

 

生産

 生産は、持ち直しの動きがみられる。

・製造業の生産は、ICなどの電子部品・デバイスが横ばいに転じる一方、設備投資向けの資本財は緩やかに増加しており、

  全体として持ち直しの動きとなった。

・鉱工業生産指数は前月比で、5月▲7.5%6+9.2%7+0.8%8月(予測)+5.5%9月(予測)+0.8%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、4月▲2.7%5月▲5.0%6+9.0%7+6.0%

・電子部品・デバイスは前月比で、4月▲6.6%5月▲4.2%6+11.6%7月▲9.2%

   ・輸送機械は前月比で、4月▲0.1%5月▲7.4%6+11.8%7+10.7%

 

外需

○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。

・自動車は供給制約の緩和から持ち直しているが、世界的なPC・スマホ需要の一服等を背景にICは弱含みとなっている。

我が国最大の輸出先の一つである米国向け輸出の動向をみると、日本は相対的に伸び悩みとなっている。EUは医療用品

  の化学工業製品の寄与が高い。日本は半導体製造装置、建設用・鉱山用機械等の機械機器に競争力を有するが、主力の自動車

  がマイナスに寄与した。

○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。

○  貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに上昇した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、4+2.65+3.66月▲1.17月▲9.18月+1.7

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、4+0.25+2.26月▲4.97月▲4.88+6.6

  

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待

      される。ただし、不動産市場の動向や金融資本市場の変動、経済活動の抑制の影響等を注視する必要がある。

 ・224-6月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+0.4%となった。

・消費は持ち直しの動きがみられる。

・生産は、持ち直しの動きがみられる。

・輸出は緩やかに増加している。

・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。

・都市部調査失業率は低下している。

・消費者物価上昇率はこのところ低下している。

・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。

○ 韓国では、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。

○ インド・タイでは、景気は持ち直している。

○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。

○ 台湾では、景気はこのところ回復に足踏みがみられる。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う

      影響等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある

20224-6月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率▲0.6%

○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。

8月の失業率は3.7%となった。

○ 生産はおおむね横ばいとなっている。

○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数は弱い動きとなっている。

○ 設備投資はこのところ横ばいとなっている。

○ 財輸出は緩やかに増加した。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、景気は一部でテンポの鈍化がみられるものの持ち直している。

イギリスでは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。

ドイツは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。

 ・224-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+3.1%

 (イギリスは▲0.3%、ドイツは+0.6%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。

○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ横ばいとなっている。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。

・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+5.5%8月)、イギリス+6.7%8月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直し、イギリスはこのところ横ばいとなっている。

 

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。