月例経済報告(R4.11.24) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、 景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め 等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、緩やかな持ち直しが続いている。
・2022年7-9月期の実質成長率は、アメリカは+0.6%、ユーロ圏は+0.2%となった。
・欧米の失業率は総じておおむね横ばいとなっている。消費者物価の上昇が続く中、物価安定に向けて速いテンポで金融
引締めを実施している。
・英国では消費が弱含み、設備投資がこのところ横ばいとなるなど、景気は足踏みとなっている。
・台湾では半導体の需要鈍化の影響等から生産がこのところ弱い動きとなり、景気回復に弱まりがみられる。
・今後とも金融資本市場の変動や物価上昇、供給制約等による下振れリスクの高まりに留意が必要となる。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年7-9月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.3%(年率▲1.2%)となった。
・個人消費や設備投資など民需を中心とした回復が続く一方、輸入が供給制約緩和に伴う反動増や一時的な要因による対外
サービス支払い等により前期比で大幅増となり、全体としてはマイナスとなった。
・また、輸入価格上昇(交易条件悪化)により、国内の生産活動の対価として得られる所得が海外に流出する形(交易利得
の減少)となり、その結果、実質GNI(国民総所得)の伸びは前期比▲0.7%と実質GDPの伸びを下回る。
交易条件改善に向けては、価格転嫁や高付加価値化、省エネの推進などの取組が重要となる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・ここ1年間では、ウィズコロナへ移行する中でサービス消費(飲食・宿泊・娯楽等)と半耐久財(洋服等)の回復が牽引
している。他方で、サービス消費は依然コロナ前の水準を下回る。
・10月にかけての動向をカード支出でみると、財は概ね横ばいである一方、サービスが回復することで、消費全体は実質
ベースで増加している。週次データで直近の状況をみても、外出機会の増加や全国旅行支援等の政策効果もあり、外食・
宿泊など対面サービスの回復が続く。
・他方、物価上昇の下で実質所得が制約され、マインドも低下する中、家計では消費の抑制が続いており、コロナ禍で生じた
超過貯蓄はさらに積み上がっている。持続的な消費拡大に向けては、物価上昇に負けない賃上げの実現が重要となる。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、5月+0.8%、6月+0.4%、7月+0.2%、8月▲0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、6月▲2.0%、7月▲1.9%、8月+2.3%、9月▲1.7%、10月▲0.9%。
・9月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.2%となった。
物価
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、上昇している。
輸入物価・輸出物価ともに上昇している。
・国内で生産された付加価値全体の物価動向を示すGDPデフレーターは、輸入デフレーターの上昇率に対して、価格転嫁
の遅れもあって、消費や投資などの国内需要及び輸出のデフレーターの上昇率が下回っていることから、前年比マイナス
で推移した。
・国際商品市況をみると、不安定な動きが続いている中ではあるが、原油価格等の上昇に一服感もみられる。
・こうした中で、輸入物価は足下で上昇テンポが鈍化。一方、これまでの輸入物価の上昇を背景に、国内企業物価と消費者
物価は上昇した。
日次ベースの指標で直近の動向をみると、食料品等の物価は11月に入ってさらに上昇しており、消費者物価は11月も上昇
が続く見込みである。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、6月+2.1%、7月▲2.4%、8月+9.4%、9月▲5.1%。
・持家着工数は前月比で、6月▲2.0%、7月▲2.8%、8月+3.1%、9月+1.9%。
・貸家着工数は前月比で、6月+2.2%、7月▲2.8%、8月+8.0%、9月▲1.3%。
・分譲着工数は前月比で、6月+5.9%、7月▲0.7%、8月+14.6%、9月▲13.7%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、5月▲2.0%(出来高+2.3%)、6月+7.7%(出来高+2.6%)、7月▲9.0%(出来高▲0.4%)、
8月+1.4%(出来高+1.1%)、9月+3.2%(出来高▲0.7%)、10月▲3.2%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
○ ハローワークの新規求人数は横ばいだが、有効求人倍率は引き続き上昇し、民間転職市場における求人倍率も上昇が続く
など、労働需給は引き締まりを見せている。
一人当たり賃金は、賃上げによる所定内給与の増加などから、前年比でプラスが継続。パート賃金も、ウィズコロナが進展
して労働需要が高まる中で、これまでの最低賃金引上げによる押上げもあり、堅調な伸びとなった。
また、転職により賃金が1割以上増加した者の割合は5四半期連続で上昇した。
こうした流れの下、人への投資強化、成長分野への円滑な労働移動の促進等により、構造的な賃上げを実現することが重要
となる。
・有効求人倍率は、5月1.24、6月1.27、7月1.29、8月1.32、9月1.34(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、4月2.5%、5月2.6%、6月2.6%、7月2.6%、8月2.5%、9月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・2022年7-9月期の上場企業の決算は、製造業・非製造業ともに増収増益となり、経常利益は7-9月期としては過去最高となった。
製造業で、売上高に比して営業利益の伸びが低いなど原材料価格上昇の影響はみられる一方、円安によって海外での収益が円建てで増加
したことがプラス要因となった。
○ 設備投資は、持ち直している。
・好調な収益も背景とした企業の高い投資意欲の下、コロナ禍で先送りされていた能力増強の機械投資などによって、設備
投資は持ち直している。7-9月期の投資水準は、名目では過去ピークと同程度まで回復したが、実質では未だ低い水準で
あり、新しい資本主義の実現・成長力強化に向けた投資喚起が重要となる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年12月+18、2022年3月+14、6月+9、9月+8、12月+9。
「大企業・非製造業」は、2021年12月+9、2022年3月+9、6月+13、9月+14、12月+11。
「中小企業・製造業」は、2021年12月▲1、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲4、12月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2021年12月▲4、2022年3月▲6、6月、▲1、9月+2、12月▲3。
○ 生産は、持ち直しの動きがみられる。
・製造業の生産は、輸出の動きと連動し、IC等の電子部品・デバイスが弱含みで推移する一方、供給制約の緩和に伴い
輸送機械が回復しており、また、世界的に需要が堅調である半導体製造装置や建設・鉱山機械などの生産用機械が増加
した。
財別にみると、積極的な設備投資等を背景に、機械や建設資材などの投資財が堅調な伸びとなった。
・鉱工業生産指数は前月比で、7月+0.8%、8月+3.4%、9月▲1.7%、10月(予測)▲0.4%、11月(予測)+0.8%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、6月+9.0%、7月+6.0%、8月+6.2%、9月▲1.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、6月+11.6%、7月▲9.2%、8月▲6.4%、9月+0.4%。
・輸送機械は前月比で、6月+11.8%、7月+10.7%、8月▲1.0%、9月▲10.3%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・品目別にみると、世界的なスマホ・PC需要の一服等に伴い電気機器及び化学製品は減少傾向であるが、自動車等の
輸送機器や一般機械では増加が続く。
○ 輸入は、おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、6月▲1.1、7月▲9.1、8月+1.7、9月+2.9、10月+1.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、6月▲4.9、7月▲4.8、8月+6.6、9月▲0.2、10月▲2.8。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが
期待される。ただし、不動産市場の動向や経済活動の抑制の影響等を注視する必要がある。
・22年7-9月期の実質GDP成長率(前期比)は+3.9%となった。
・消費はこのところ持ち直しのテンポが鈍化している。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出はこのところ増加のテンポが鈍化している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率は低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
参考◎貿易措置の緩和(11月11日発表)
★ 全国統一基準での防疫措置を徹底。
・基準を外れた恣意的な休校、生産停止、交通遮断、診察拒否等を厳禁。
・部品供給や生活保障に関わる重点企業には「ホワイトリスト」制度を実施。
・封鎖対象地域を「高リスク地域」に限定し、封鎖対象者数を最小化(※5日間感染者なしの場合、低リスク地域に移行し、
速やかに封鎖を解除)。
・濃厚接触者の隔離期間を短縮(※「7日間の集中隔離+3日間の在宅健康観察」から「5日間の集中隔離+3日間の自宅隔離」
に変更)、二次濃厚接触者は隔離措置の対象外。
○ 韓国では、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
○ インド・タイでは、景気は持ち直している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾では、景気はこのところ回復が弱まっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な
金融引締めが進む中での金融資本市場の変動や物価上昇、供給面での制約等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある。
・2022年7-9月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・10月の失業率は3.7%となった。
○ 生産は底堅く推移している。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数も持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ コア物価上昇率は高水準でおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は総じてみれば緩やかに持ち直している。
ドイツは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態である。
・22年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.8%
(イギリスは▲0.7%、ドイツは+1.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.4%(10月)、イギリス+7.2%(10月)。
○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスは横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ弱含んでいる。