月例経済報告

 

月例経済報告(R5.2.21)

基調判断

〈現状〉

・景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。

〈先行き〉              

・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、

景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め

等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと

なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動

等の影響や中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある。

 

 

世界経済

○ 世界の景気は一部の地域において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しがみられる。

202210-12月期の実質GDP成長率は、ドイツはマイナス、中国と英国は0%となった一方、アメリカはプラス成長

 が継続した。

2022年末にかけて、世界的な半導体需要の鈍化や中国の景気減速があり、韓国、台湾、タイでは生産・輸出が減少し、

 景気に弱さがみられる。

・欧州では暖冬やエネルギー消費抑制策もあり、天然ガスの在庫確保が進展した。こうした背景もあり、エネルギー価格

 は下落し、欧米の消費者物価の上昇に一服感がみられる。ただし、上昇率の水準は依然高く、物価安定に向けた金融

 引締めが継続している。今後も世界的な金融引締めに伴う影響、物価上昇等による下振れリスクに留意が必要である。

 

日本の実質GDP成長率

 202210-12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.2%(年率+0.6%)となった。

・ウィズコロナの下で、旅行・外食等のサービス消費を中心に個人消費が増加するとともに、水際対策の緩和に伴う

 インバウンドの増加もあって外需がプラスに寄与した。

・コロナ禍前(1910-12月期)対比での先進各国の実質GDPの回復状況をみると、我が国は他の先進国と比べて遜色

 ない水準となっている。

・実質GNI(国民総所得)は、輸入物価下落による交易条件の改善や海外からの所得受取増により、実質GDP(国内

 総生産)の伸びを上回る水準となった。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。

・財消費が底堅く推移する中、外食・旅行等のサービス消費の回復が継続している。

・宿泊者数(延べ人数)は、全国旅行支援の効果やインバウンド再開により、12月にはコロナ禍前の水準をほぼ回復

 した。

 新車販売は、供給制約が徐々に緩和される中で、振れを伴いつつ、このところ持ち直してきている。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、80.0%9+0.5%10月▲0.1%11月▲0.8%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、9月▲1.7%10月▲0.9%11月▲1.3%12+1.7%20231+0.7%。 

12月の実質総雇用者所得は、前期比で0.0%となった。

 

物価

  ○ 国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。

   消費者物価は、上昇している。 

 ・国内で生産された付加価値全体の物価動向を示すGDPデフレーター上昇率は、昨年末にかけての原油価格下落等に

  伴い輸入デフレーターの押下げ寄与が低下する一方、価格転嫁の進展により消費や投資等の内需デフレーターの

  押上げ寄与が拡大した結果、202210-12月期にプラス転換した。

・国際商品市況は、欧州の暖冬等を背景に、原油・LNG・石炭の価格がロシアによるウクライナ侵略前の水準まで

 低下している。

23年1月の国内企業物価は前月比で横ばいとなっている。電力・都市ガスのプラス寄与が縮小するとともに、石油・

 石炭製品の価格が低下してマイナスに寄与した。

・消費者物価は、財に加えて、一般サービスにおいても上昇するなど、物価上昇に広がりがみられる。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、底堅い動きとなっている。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、9月▲5.0%10+0.9%11月▲2.9%12+0.5%

・持家着工数は前月比で、9+1.9%10月▲4.4%11月▲1.5%12+0.7%

・貸家着工数は前月比で、9月▲1.1%10+1.7%11月▲2.5%12月▲1.0%

・分譲着工数は前月比で、9月▲13.7%10+2.5%11月▲2.2%12+1.9%

   公共投資は、底堅く推移している。

・請負金額は前月比で、8+1.4%(出来高+1.1%)、9+3.2%(出来高▲0.7%)、10月▲3.5%(出来高▲1.0%)、

 11月▲6.9%(出来高▲0.5%)、12+0.9%(出来高+0.2%)、20231+0.9%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、持ち直している。

・一人当たり賃金は、2022年は前年比で2.1%と31年ぶりの高い伸びとなった。月次でみると、12月はボーナスの増加を

 受けて大幅なプラスとなった。また、22年の冬のボーナスは31年ぶりの伸びとなり、事業所規模別にみても、中小企業

 を含めて全般的に高い伸びとなった。

・大企業の今春の賃上げについて、各社の個別動向をみると、物価上昇や人手不足の状況下で積極的な賃上げの動きが

 みられる。また、中小企業は過半が22年度に賃上げを実施したが、その理由をみると、物価上昇を理由にする企業割合

 が増加した。物価上昇を意識した賃上げの機運に高まりがみられる。

・物価上昇を超える賃上げの実現に向けては、原材料やエネルギーコストのみならず、賃上げ原資も含めた適切な価格転嫁

 が重要である。

・有効求人倍率は、81.3291.34101.35111.35121.35(正社員は1.03)となった。

・完全失業率は、72.6%82.5%92.6%102.6%112.5%122.5%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。

202210-12月期の上場企業の決算をみると、経常利益は、為替変動による評価損で営業外収支が縮小して 前年比

 マイナスとなるも、引き続き高い水準で推移している。本業の動向を示す売上高と営業利益は、ウィズコロナの下での

 人流回復や供給制約の緩和などを背景に堅調に増加している。

○ 設備投資は、持ち直している。

・企業の設備投資は、名目ベースでは過去最高となるなど持ち直し基調が継続している。ただし、資材価格上昇の影響に

 より、実質ベースでは回復が緩やかとなっている。

 投資の内訳をみると、機械投資は足下で持ち直しの動きに足踏みがみられるが、ソフトウェア投資はデジタル化の進展等

 を背景に堅調に増加した。

○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。

・ 倒産件数は、低い水準ではあるものの、このところ増加がみられる。

・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

  「大企業・製造業」は、20223+146+99+812+720233+6

  「大企業・非製造業」は、20223+96+139+1412+1920233+11

  「中小企業・製造業」は、20223月▲46月▲49月▲412月▲220233月▲5

  「中小企業・非製造業」は、20223月▲66月、▲19+212+620233月▲1

 

生産

 生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

・鉱工業生産指数は前月比で、10月▲3.2%110.2%12+0.3%1月(予測)0.0%2月(予測)+4.1%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、9月▲1.8%10月▲5.4%11月▲6.0%12+0.8%

・電子部品・デバイスは前月比で、9+0.4%10月▲4.1%11+0.5%12月▲0.7%

   ・輸送機械は前月比で、9月▲10.3%10+4.5%11月▲0.5%12+0.9%

 

外需

○ 輸出は、このところ弱含んでいる。

・我が国の輸出は、半導体市況の軟化や中国の感染拡大を背景にアジア向けで減少し、全体として弱含みとなって

 いる。こうした中、製造業の生産も持ち直しの動きに足踏みがみられる。

2022年の経常収支は、秋ごろまでの資源価格上昇や円安などを受け、貿易収支は過去最大の赤字幅となっている。

 一方、所得収支は過去最大の黒字幅となった。貿易収支を月次の季節調整値でみると、昨年秋以降は原油価格の下落

 等を背景に鉱物性燃料の赤字幅が緩やかに縮小し、1月は前月比で横ばいとなっている。

・訪日外客数は堅調に増加した。国別に19年比での回復状況をみると、23年1月は多くの国で7割程度かそれ以上の

 水準まで回復している。

○ 輸入は、このところ弱含んでいる。

○  貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、9+2.910+1.511月▲1.812月▲0.71月▲0.2

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。

・物価上昇への懸念が引き続き下押し要因となる一方、インバウンド拡大に加え、新型コロナ5類移行が先行き期待の

  押上げに寄与した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月▲0.210月▲2.811月▲1.312+0.51+2.5

  

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、このところ弱さがみられる。

   先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、感染拡大の影響の長期化による下振れリスクに留意

    する必要がある。

 ・2210-12月期の実質GDP成長率は前期比で0.0%(前年比+2.9%)となった。

・消費はこのところ弱含みとなっている。

・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

・輸出はこのところ減少している。

・固定資産投資はこのところ弱含みとなっている。

・都市部調査失業率はこのところおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。

○ 韓国・台湾では、景気はこのところ弱い動きとなっている。

○ インドでは、景気は持ち直している。

○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。

○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融

    引締めに伴う影響等による下振れリスクに留意する必要がある。

202210-12月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.9%

○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。

1月の失業率は3.4%となった。

○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。

○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。

○ 住宅着工は減少し、住宅価格は下落している。

○ コア物価上昇率はこのところやや低下した。

○ 財輸出はこのところ弱い動きとなっている。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、景気は緩やかに持ち直している。

   ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。

 ・2210-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.4% (イギリスは+0.1%、ドイツは▲1.0%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は上昇、イギリスはおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+7.0%1月)、イギリス+6.7%1月)。

○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ横ばいとなっている。 

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。