月例経済報告

 

月例経済報告(R5.5.25)

基調判断

〈現状〉

・景気は、緩やかに回復している。

〈先行き〉              

・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果

もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な

金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しする

リスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に

十分注意する必要がある。

 

 

世界経済

○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。

・アメリカでは、雇用・所得環境の着実な改善がみられる中で、20231-3月期は消費の増加等がけん引しプラス成長が続くなど、

 景気は緩やかに回復している。

・中国では、感染収束に伴う経済活動の回復の下で1-3月期はプラス成長となり、4月は一服感がみられるものの、消費を中心に

 景気は持ち直しの動きがみられる。

・欧米の失業率はおおむね横ばい。労働市場のひっ迫が続く中、金融引締めが継続している。世界的な金融引締めに伴う影響等に

 よる下振れリスクに引き続き留意が必要である。また、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。

 

 

日本の実質GDP成長率

○  20231-3月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率+1.6%)となった。供給制約の緩和を通じた自動車販売の増加や

  ウィズコロナの下でのサービス消費の持ち直しなど、内需が牽引した。外需は、アジア向けの輸出減少等によりマイナスに寄与

  した。

○ 名目GDPは、輸入物価上昇の転嫁が進むことで、コロナ禍以前の過去最高水準(197-9月期)を3年半ぶりに更新するなど、

  堅調に増加した。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、持ち直している。

・新車販売が増加するほか、持ち直しが遅れていた高齢者の外食消費も増加した。

・家計動向をみている景気ウォッチャーの評価は、現状・先行きともに4月にさらに上昇した。

5月も、新型コロナの感染症法上の位置づけ変更等も背景として、GWの交通機関の利用実績は新幹線や国内線航空でコロナ禍

前の水準まで回復し、4年ぶりに各地でイベントが通常開催されるなど、コロナ禍から平時への移行が進展した。

実質総消費動向指数は、前期比で、10.0%2+0.1%3+0.1

  ・消費者態度指数(DI)は前月差で、12+1.3%20231+0.3%2+0.0%3+2.6%4+1.5%。 

  ・3月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。

 

物価

○ 国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。

消費者物価は、上昇している。

・国内で生産された付加価値全体の物価動向を示すGDPデフレーターは、原油価格の下落等に伴い輸入デフレーターの押下げ

 寄与が縮小したことで、231-3月期は前期からプラス幅を拡大させている。

・輸入物価は、石油やLNG等の価格下落に伴い、4月の前年比はマイナスに転じた(22か月ぶり)。

・消費者物価は、4月の前年比は3.4%。食料品の値上げなど財を中心とした上昇が続く中、サービスもこれに遅れて徐々にプラス

 寄与を拡大している。一方、エネルギーは、昨年の原油価格下落等が時間差を伴って反映されるのに加え、電気・ガス価格激変

 緩和対策の効果もあり、マイナスに寄与した。

・消費者の物価予想は、電気・ガス代といった生活に身近な価格が抑えられたことも背景に、「5%以上」と大幅な上昇を予想する

 割合が足下では減少の動きとなっている。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、底堅い動きとなっている。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12+0.5%20231+5.5%2月▲3.8%3+2.0%

・持家着工数は前月比で、12+0.7%20231月▲0.8%2+3.6%3月▲8.0%

・貸家着工数は前月比で、12月▲1.0%20231+0.1%2+1.0%3+9.8%

・分譲着工数は前月比で、12+1.9%20231+20.0%2月▲15.1%3+0.1%

   公共投資は、底堅く推移している。

・請負金額は前月比で、12+0.9%(出来高+0.2%)、20231+0.9%(出来高+2.1%)、2+51.7%(出来高+0.5%)、3月▲22.8%

(出来高▲1.2%)、4月▲4.1%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、持ち直している。

・就業率は全体としては横ばいである中、足下では女性で高まりがみられる。

失業率は足下で上昇したが、失業期間別にみると、231-3月期は長期的な失業が前年比で減少する一方、3か月未満の短期的

な失業が増加した。経済社会活動の正常化に伴い、新たに労働市場に参入する者が職探しを始める中で、一時的に失業が増加

している面もみられる。

・一人当たり賃金は、緩やかに増加した。こうした中、転職市場では処遇改善を目的とした転職者が増加しており、転職によって

 賃金が1割以上増加した者の割合は上昇傾向となっている(7四半期連続)。

・構造的な賃上げの実現に向けては、リスキリングの促進、失業者のマッチング強化や職業訓練等の支援充実など、処遇改善を

 伴う労働移動の円滑化の取り組みが重要である

・有効求人倍率は、111.35121.35202311.3521.341.32(正社員は1.02)となった。

・完全失業率は、102.6%112.5%122.5%202312.4%22.6%32.8%

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、総じてみれば改善しているが、そのテンポは緩やかになっている。

  ・上場企業の決算をみると、231-3月期は、売上高が前年比で増加となる中、本業の動向を示す営業利益は増益が継続している。

   経常利益の前年比は減益したものの、2022年度計では過去最高となった。

・業種別の営業利益をみると、素材関係の製造業は市況の悪化を受け前年比マイナスとなる一方、ウィズコロナの下での人流回復

 や供給制約の緩和等を背景に、陸運・空運や輸送用機器で好調が続く。

・企業の景況感は、サービス業を中心に改善が継続。原材料コスト増等を受けて22年以降は低下が続いていた製造業も、輸入物価

   の下落や生産の増加等を背景に、このところ改善傾向にある。

○ 設備投資は、持ち直している。

○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。

・ 倒産件数は、増加がみられる。

・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

  「大企業・製造業」は、20226+99+812+720233+16+3

  「大企業・非製造業」は、20226+139+1412+1920233+206+15

  「中小企業・製造業」は、20226月▲49月▲412月▲220233月▲66月▲4

  「中小企業・非製造業」は、20226月、▲19+212+620233+86+3

 

生産

 生産は、持ち直しの兆しがみられる。

・製造業の生産は、持ち直しの兆しがある。世界的な半導体需要の軟化の下、メモリ等の電子部品・デバイスは在庫調整により減少

 傾向となっている。一方、乗用車等の輸送機械は、供給制約が緩和する中で増加傾向が強まっている。

・鉱工業生産指数は前月比で、1月▲5.3%2+4.6%3+1.1%4月(予測)+4.1%5月(予測)▲2.0%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12+0.8%20231月▲15.3%2+8.9%3+5.8%

・電子部品・デバイスは前月比で、12月▲0.7%20231月▲4.2%2+7.1%3月▲10.6%

   ・輸送機械は前月比で、12+0.9%20231月▲9.9%2+13.9%3+4.9%

 

外需

○ 輸出は底堅い動きとなっている。輸入はおおむね横ばいとなっている。

・財輸出は、昨年秋以降、半導体需要の軟化や中国の感染拡大等を背景に弱含みが続いてきたが、このところは生産の増加を受けた

 自動車輸出の増加等によって底堅い動きとなっている。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、12月▲0.71月▲0.22+3.53+1.34+1.3

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5か月連続で上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、12+0.51+2.52+1.53+3.34+1.6

  

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は持ち直しの動きがみられる。

 先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、不動産市場の動向等を注視する必要がある。

 ・231-3月期の実質GDP成長率は前期比で2.2%(前年比+4.5%)となった。

・消費はこのところ持ち直している。

・生産は、持ち直しの動きがみられる。

・輸出は持ち直しの動きがみられる。

・固定資産投資はおおむね横ばいとなっている。

・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率は低下している。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。

○ 韓国では、景気は下げ止まりの兆しがみられる。

○ 台湾では、景気は減速している。

○ インドでは、景気は持ち直している。

○ タイでは、景気はこのところ持ち直している。

○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は緩やかに回復している。 先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、金融引締めに

  伴う影響等による下振れリスクに留意する必要がある。

20231-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+1.1%

○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。

4月の失業率は3.4%となった。

○ 設備投資は緩やかに持ち直している。

○ 消費は緩やかに増加しており、自動車販売台数は持ち直している。

○ 住宅着工はおおむね横ばいとなっており、住宅価格は下落している。

○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。

○ 財輸出は緩やかに増加している。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、景気は持ち直しに足踏みがみられる。

   ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。

 ・231-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.3% (イギリスは+0.5%、ドイツは+0.2%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスは弱含んでいる。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともにおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+7.3%4月)、イギリス+7.2%3月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはおおむね横ばいとなっている。

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはおおむね横ばいとなっている。