月例経済報告

 

月例経済報告(R6.6.27)

基調判断

〈現状〉

・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。

〈先行き〉              

・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の

 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、

 欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き

 懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク

 となっている。

 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等

 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震

 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。

 

 

世界の経済情勢

○  世界の景気は、持ち直している。

   先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産

   市場の停滞に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動

   の影響を注視する必要がある。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。

・名目個人消費は、総雇用者所得とともに緩やかに増加の一方、実質消費は、実質所得が伸び悩む中、力強さを欠く。

・消費者マインドは、円安の影響もあり家計の予想物価上昇率の上昇を背景に足踏み。年収別のばらつき拡大にも留意が

 必要である。

近年、GDPには原則として計上されない中古品消費が6兆円規模にまで拡大している。中古車に加え、衣服やブランド

 品での利用が多い。節約志向のほか、CtoC(消費者間取引)アプリの取引市場の発展や環境志向等が背景にあると

 みられる

実質総消費動向指数は、前期比で、10.0%2+0.4%3月▲0.1%4月▲0.1%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、1+0.8%2+0.9%3+0.5%4月▲1.2%5月▲2.1%。 

4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。

 

物価

○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。

 消費者物価は、緩やかに上昇している。

消費者物価は、年1回の再エネ賦課金改定の影響はあるが、引き続き2%台で推移している。電気・ガスの激変緩和措置は

 一旦終了するが、今夏の一時再開により、消費者物価上昇率を抑制する見通しである。ガソリンの激変緩和措置の継続

 も物価上昇率の抑制に寄与した。

・コメ価格は、昨夏の猛暑の影響により上昇傾向にある。生鮮野菜も生育不良により一部の品目で5月に平年比を大きく

 上回る など、天候不順の影響には注意が必要である。また円安も相まって、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げる

 リスクにも留意が必要である

・物価と収入・賃金に関する最新のアンケート結果(20244月)によれば、①消費者は、約半数が「物価と収入がともに

 緩やかに上昇する状態」を望ましいとする、②企業も、業種・規模によらず、7割超が「物価と賃金がともに緩やかに

 上昇する状態」を望ましいとする。安定的な物価上昇とこれを上回る継続的な賃金・所得の増加を実現することが極めて

 重要となってくる。

・日米欧の消費者物価を比較すると、欧米では財価格の伸びは縮小し、サービス価格が安定的にプラスとなる。日本もその

 姿に近づきつつある。サービス物価は、BtoB(企業間取引)、BtoC(企業対消費者間取引)ともに、人件費比率が

 高い品目の伸びが徐々に高まる傾向にある。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は弱含んでいる。 

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲1.5%2月▲0.9%3月▲4.4%4+15.8%

・持家着工数は前月比で、1+0.4%2+7.1%3月▲1.7%4月▲1.1%

・貸家着工数は前月比で、1+5.0%2月▲1.0、▲7.9%4+24.5%

・分譲着工数は前月比で、1月▲11.0%2月▲9.3%3+0.5%415.1%

   公共投資は、底堅く推移している。

6月に公表された「建設総合統計」の公共工事出来高は過去に遡って改定された(建設工事受注動態統計の訂正の反映分を

 含む。

 5月の月例経済報告ではその時点で利用可能であったデータを踏まえ、堅調に推移していると判断。改定後のデータでは、

 高水準で底堅い姿にあり、20244月の出来高は、年初来増加に転じた受注等を反映し、大きく増加した。

2023年後半以降、都道府県発注工事等で出来高が減少していたが、足下では、市区町村を含め地方政府発注の公共事業の

 進捗がみられる。ただし、都道府県工事は契約率が近年低下しており、引き続き、公共工事の円滑な執行が重要となる。

・請負金額は前月比で、12+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%

 (出来高▲0.4%)、4+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%             

 

雇用・賃金の動向

○ 実質賃金を就業形態別にみると、雇用者の3割を占めるパート労働者は、昨年秋以降、時給ベースで前年比1%弱のプラスに

  なった。7割を占めるフルタイム労働者は、時給ベースでは前年比でゼロ近傍まで回復しており、月給ベースでもマイナス幅が

  着実に縮小した。一方、パート労働者比率は上昇傾向が続いており、平均の賃金上昇率を下押しする要因になっている。

○ フルタイム労働者の所定内給与の伸びは、2024年4月は2.3%199410月以来の高さとなった。30人以上の事業所で賃金

  上昇が先行している。経営側の集計における定昇込みの春闘賃上げ率は、大企業の5.58%に対し、中小企業は3.62%となった。

  今後、中小事業所に春闘賃上げを波及させるためには、サプライチェーン全体での適正な価格転嫁の促進が重要である。

○ フルタイム労働者の所定内給与は、医療・福祉、教育といった公定価格分野以外では着実な増加傾向となっている。医療・

  福祉は、診療報酬改定等が反映される6月以降の賃上げが期待される。教育に含まれる学校教員等は、地方公務員の4割弱

  を占め、12月に反映される公務員給与の改定が鍵になる。

○ 23年度の地方公務員一般行政職の給料月額の平均伸び率は0.1%程度。公務員給与のGDP比が高い県では、賃上げによる

  波及効果も高い。公務員の月例給勧告率は、過去は民間ベアと同様であった一方、近年は民間ベアを下回る。

○ パート労働者の時給は増加する一方で、年収の壁の範囲内で収入を抑える就業調整もあって、労働時間は緩やかな減少傾向

  が継続し、現金給与総額の上昇が抑制されている。女性の有配偶就業者の年収分布を学歴別にみると、年収200万円未満の

  割合は、高校卒では6割、専門学校・短大卒では5割、大学卒では4割弱となっており、能力発揮により世帯所得を向上させる

  余地がある。

○ 一定の仮定を置いた試算では、妻が年収の壁を超えて働く場合、世帯の生涯可処分所得として、給与所得分に加え、年金

  所得分の増加が、配偶者手当等の減少を大きく上回る。人手不足への対応という観点に加え、世帯の生涯可処分所得の向上

  という観点からも、女性が年収の壁を超えて働くことをためらうことがないような情報の周知と環境整備が重要である。

○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。

・有効求人倍率は、11.2721.2631.2841.26(正社員は1.02)となった。

・完全失業率は、122.5%12.422.632.642.6となった。

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、総じてみれば改善している。

  ・企業収益は経常利益、営業利益ともに過去最高を更新し、企業部門は好調である。

○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。

名目設備投資は過去最高水準となった。知的財産投資や建設投資が増加の一方、機械投資は足踏みがみられていた。先行

 指標の機械受注は持ち直し傾向に転じており、今後の機械投資の回復が期待される。

○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。

  倒産件数は、増加がみられる。

・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

  「大企業・製造業」は、20236+59+912+1220243+116+10

  「大企業・非製造業」は、20236+239+2712+3020243+346+27

  「中小企業・製造業」は、20236月▲59月▲512+120243月▲16+0

  「中小企業・非製造業」は、20236+119+1212+1420243+136+8

 

生産

 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。

生産は、半導体製造装置を含む生産用機械を含め持ち直しの動きとなっている。ただし、新たに発生した自動車メーカーの

 不正事案に伴う生産停止の影響が懸念される。

・鉱工業生産指数は前月比で、2月▲0.6%3+4.4%4月▲0.9%5月(予測+6.9%)、6月(予測▲5.6%)。

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲6.1%2月▲3.2%3+11.6%4+4.1%

・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲4.0%2+0.2%3+9.2%4月▲1.3%

   ・輸送機械は前月比で、12+2.0%1月▲9.9%2月▲11.5%3+12.6%4月▲1.7%

 

外需

○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入おおむね横ばいとなっている。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3月連続で下降した

・現状・季節調整値DIは前月差で、2+1.13月▲1.54月▲2.45月▲1.7

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、2+0.53月▲1.8%4月▲2.75月▲2.2

  

アジア経済の動向  

○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに

   向かうことが期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。

・中国の20241-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。

・消費は持ち直しに足踏みがみられる。

・生産は、持ち直している。

・財輸出は持ち直しの動きとなっている。

・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。

・新築住宅販売価格は下落している。

・消費者物価は下落した。

・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きとなっている。

○ 韓国では、景気は持ち直している。

○ インドでは、景気は拡大している。

○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。

○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ

   止まりに伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。

アメリカでは高い金利水準が継続し、その長期化が懸念されている。物価上昇率の下げ止まりが背景にある。身近な

 財・サービス価格は、一部でコロナ禍前と比較して3割程度高くなっており、低所得者層を中心に個人消費への影響

 が懸念される。

・支持政党別の消費者マインドは大統領選前後で逆転する傾向となった。政治情勢が個人消費に与える影響にも留意が

 必要である。

・先月発表された中国からの輸入品に対する関税引上げの影響は、2026年以降に本格化する可能性がある。

20241-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+1.3%

○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。

5月の失業率は4.0%となった。

○ 設備投資は緩やかに増加している。

○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。

○ 生産はおおむね横ばいとなっている。

○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。

○ コア物価上昇率はおゆるやかに上昇した。

○ 財輸出は緩やかに増加した。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの兆しがみられる。

2023年秋以降、ドイツ経済は弱含んでいたものの、20241-3月期には、輸出がけん引し、景気は持ち直しの兆しが

 ある。

フランス経済は、輸出に加え家計消費も景気をけん引した。

20246月、ECBは消費者物価上昇率の低下を受け、政策金利を引下げた。フランス下院総選挙をめぐる財政への

 警戒感からフランス長期金利は上昇傾向にある。一方、ドイツ長期金利は、政治的なリスク回避の動きから低下した

241-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは+2.5%、ドイツは+0.9%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの兆しがみられる。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっている。イギリスは低下している。

・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.9%5月)、イギリス+3.6%5月)。

○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱含んでいる。イギリスのサービス輸出は持ち直して

   いる。

○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。