2024年
8月
29日
木
月例経済報告(R6.8.29) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米に おける高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に 伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場 の変動等の影響に十分注意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響
を注視する必要がある。
GDPの動向
○ 我が国の名目GDPは、1973年度に初めて100兆円を超えて以降、約5年毎に約100兆円ずつ増加し、1992年度に500兆円
を超えたが、その後約30年の間、500兆円台で推移してきた。2024年4-6月期に年率換算で史上初めて600兆円を超えた。
○ 4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(年率+3.1%)と、2四半期ぶりのプラス成長となった。消費や投資をはじめ内需が押上げ
に寄与した。個人消費は、物価上昇の下でも増加し、5四半期ぶりに実質でもプラスとなった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。。
・2024年4-6月期の個人消費は、実質GDP成長率を0.5%pt押上げ。1-3月期に消費を大きく押し下げた自動車出荷停止事案の
反動により耐久財が増加したことに加え、半耐久財・非耐久財が共にプラスに寄与。サービスは増加傾向の中で横ばい。
特殊要因の大きい耐久財を除くと、1-3月期、4-6月期ともにプラスの伸びとなった。
・家計の可処分所得は、賃上げの反映や夏のボーナスによる実収入の増加に加え、定額減税の効果もあり、名目・実質ともに
大きく増加した。超過貯蓄の取り崩しはアメリカと比べ限定的となった。今後の消費の下支えに期待。
・4月以降の高気温の影響もあって、家電販売ではエアコンの売上が好調、オリ・パラ需要もありテレビの売上も増加し、全体
として持ち直しの動きとなっている。夏物衣料品の売上も堅調。大手アパレルチェーンは客単価・客数ともに増加傾向にある。
・今年の夏は、全国的に平年を大きく上回る気温を観測した。猛暑日を記録した地点数は、過去5年で突出した多さだった昨年
を上回る傾向。猛暑の影響について、景気ウォッチャーによると、
①エアコンや日傘、アイスクリーム等の季節商材の消費が増加する一方、
②テーマパークやレストラン等で、外出控えにより客足が遠のくなど、プラス・マイナス両面あった。
・報道等によると、8月8日の南海トラフ地震臨時情報発表後、太平洋側を中心にイベント中止、旅館等の宿泊キャンセル等の
影響がみられた一方、POSデータでみると、水や非常食といった防災関連財の売上高は急増した。
・実質総消費動向指数は、前期比で、3月▲0.1%、4月0.0%、5月0.0%、6月+0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%、6月+0.2%、7月+0.3%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で+2.9%となった。
物価
○ 消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移(1図)。8月以降「酷暑乗り切り緊急支援」による電気・ガス料金補助
が開始され、9月から11月にかけて、消費者物価上昇率の押下げに寄与する見込み。
○ 輸入物価は、契約通貨ベースでは23年夏ごろから横ばいの一方、円ベースでは円安の進行により緩やかに上昇してきたが、足下
で円安が是正されたこともあり、下落方向に向かうと見込まれる。
○ 購入頻度の高い品目の価格は、全体平均より高い上昇率となった。主食品では、米の価格は2023年末以降上昇し、7月は前年
同月比+17%と上昇。新米流通による供給量増加を今後見込むが、食料支出割合の高い低所得層等への影響は注視する必要が
ある。
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、緩やかに上昇している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月▲4.4%、4月+15.8%、5月▲+7.5%、6月▲5.9%。
・持家着工数は前月比で、3月▲1.7%、4月▲1.1%、5月▲4.5%、6月+1.9%。
・貸家着工数は前月比で、3月▲7.9%、4月+24.5%、5月▲13.5%、6月▲7.2%。
・分譲着工数は前月比で、3月+0.5%、4月+15.1%、5月+3.3%、6月▲11.7%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%(出来高▲0.4%)、4月+1.4%(出来高+8.1%)、
5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%(出来高▲0.6%)、7月+2.1%。
雇用・賃金の動向
○ フルタイム労働者の現金給与総額(名目)は、2024年上半期は前年比2.7%と27年ぶりの高い伸び率となった。実質賃金では、
パート時給は前年比プラスが継続、フルタイム労働者も、春闘賃上げが反映され始めていることに加え、夏のボーナスが堅調で
あったことから、6月は前年比でプラスとなった。振れの大きい特別給与(ボーナス等)を除く定期給与でも着実に持ち直している。
○ こうした結果、実質総雇用者所得は約3年ぶりに前年比プラスに転じた。
○ 特別給与(ボーナス等)の伸びを事業所規模別にみると、今年は中小規模の事業所の伸びが寄与した。
産業別の所定内給与の伸びをみると、人手不足感の強い建設、運輸等で高い伸びが続くとともに、6月の診療報酬改定等に伴い、
医療・福祉の賃金も伸び始めている。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、3月1.28、4月1.26、5月1.24、6月1.23(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、2月2.6、3月2.6、4月2.6、5月2.6、6月2.5となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・民間企業の設備投資は、2023年1-3月期に名目で年率換算100兆円を超え、2024年4-6月期には106.3兆円と、1991年
(104.9兆円)以来33年ぶりに過去最高を更新した。実質でも持ち直しの動きが続く。
・設備投資の約2割を占める研究開発投資は、24年度計画が+8.7%と、引き続き高い意欲がある。一方、日本企業の研究
開発投資は、米英と比較して製造業に偏っており、情報通信や専門・科学技術サービスなど非製造業で投資拡大の余地がある。
・研究開発は将来の成長の源泉である。日本の15歳時点での数学的・科学的リテラシーは男女ともにOECD加盟国中1位で
あり、研究開発のポテンシャルは高い。能力の高い人材が存分に力を発揮するための教育や組織マネジメントが重要となって
くる。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+12、9月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月+3.6%、6月▲4.2%、7月(予測)+6.5%、8月(予測)0.7%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月+11.6%、4月+4.1%、5月▲6.8%、6月▲9.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、3月+9.2%、4月▲1.3%、5月+2.3%、6月▲5.8%。
・輸送機械は前月比で、3月+12.6%、4月▲1.7%、5月+12.1%、6月▲6.6%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気に敏感な職場で働く人々(景気ウォッチャー)に景気の状況を尋ねた「景気ウォッチャー調査(2024年7月調査:7月25日
~31日)」によれば、①景気の現状判断(3か月前と比べた景気の方向性)、②景気の先行き判断(現状と比べた2~3か月先
の景気の方向性)は2か月連続の上昇となっている。
景気ウォッチャーのコメントでは、インバウンドなどで来客者数の増加に関するコメントがみられた。猛暑による季節商材の販売
好調の一方、外出控えの影響もみられた。物価高に関するコメントは減ってはいるものの、引き続き多くみられた。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、4月▲2.4、5月▲1.7、6月+1.3、7月+0.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、4月▲2.7、5月▲2.2、6月+1.6、7月+0.4。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、足踏み状態が続くと見込まれる。さらに、不動産市場の停滞の継続や物価下落の継続による影響等に留意
する必要がある。
・中国の2024年4-6月期の実質GDP成長率は4.7%(前期比年率+2.8%)。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ止まりに
伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカは個人消費を中心に景気は拡大している。
設備投資は、半導体法等に加えAI需要により情報通信機器が増加。消費者物価上昇率は2%台に低下した。ただし、食料品
等の身近な財・サービスの価格は、コロナ禍前と比較して高い状況。雇用者数は増勢が鈍化した。特に、ヘルスケア等を除く
民間部門の増加幅は縮小。局面が変化しつつある。
・長期的な予想物価上昇率の安定が、雇用の大幅減少なき物価上昇率の低下につながってきた可能性がある。物価と賃金の
ノルムの定着が、安定的なマクロ経済環境の維持のためにも重要であることが示唆されている。
・いわゆるラストベルトと呼ばれる州(オハイオ・ペンシルバニア・ウィスコンシン・カリフォルニア・ミシガン)では、
製造業従事者比率が高いが、ラストベルトの製造業の労働生産性は、全米平均と比較して伸びが低い傾向にある。 世帯所得
中央値は、20世紀には全米平均を上回っていたが、現在は下回っている。また、ラストベルトでは、大卒未満の白人の人口
割合、高齢化率が高い。
・2024年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.8%。
○ 雇用者数は増勢が鈍化した、失業率はやや上昇した。
・7月の失業率は4.3%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの動きがみられる。
・ユーロ圏経済及び英国経済は、実質GDP成長率が2024年4-6月期もプラスになり、景気は持ち直しの動きがある。
・消費者物価上昇率の低下を受け、欧州中央銀行は6月に、イングランド銀行は8月に利下げした。
・24年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.2% (イギリスは+2.3%、ドイツは▲0.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は、おおむね横ばいとなっている。イギリスは、このところ横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(7月)、イギリス+3.4%(7月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱い動きとなっている。イギリスのサービス輸出は緩やかに増加
している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
7月
25日
木
月例経済報告(R6.7.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き 懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
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○ 世界の景気は、一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場
の停滞の継続に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の
影響を注視する必要がある。
○ 欧米の輸入物価は、2023年は前年比でマイナスとなり、為替レートの安定を背景とした足下でのゼロ近傍となっている。
一方、アジア諸国はアメリカとの金利差から為替レートが下落した。輸入物価を通じた物価上昇を避け、それぞれの物価安定
目標を達成するために、各中央銀行(中国を除く)は政策金利を引上げた。一部の国は経済政策上の困難に直面している。
令和6年能登半島地震の影響
○ 定額北陸地域の景気ウォッチャーの景況感をみると、2024年1月に大きく落ち込んだ後、足下では全国平均を上回って
回復傾向となっている。北陸及び石川県の鉱工業生産指数も、4~5月にかけて緩やかに持ち直している。地震の影響に
よる稼働停止もあって、2024年1月に大きく減少した混成ICの生産も、昨年末の水準まで回復した。
○ 旅行需要も回復。被害が大きかった石川県の宿泊者数は、「北陸応援割」の効果もあって、3月以降大きく増加した。特に
インバウンドの宿泊者は、3月以降、全国平均を大きく上回る伸びとなっている。
○ 引き続き、現場が抱える課題を速やかに把握し、被災者の生活・生業の再建を始め復旧・復興を進めることが重要となる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・定額減税が6月から始まる中、オルタナティブデータによる週次データでは、6月下旬からは消費支出は増加傾向で推移
している。消費者の景況感も持ち直し傾向にあり、景気ウォッチャーの先行き判断でも、定額減税に対する期待感がみら
れる。
・車販売台数は、昨年末以降の一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響が縮小し、持ち直し。6の新たな認証不正
事案に伴う販売台数への下押しは前回に比べると限定的となった
・消費者マインドのうち物価に敏感な「暮らし向き」を世帯年収別にみると、相対的に収入の高い世帯では横ばいの一方、
相対的に収入の低い世帯では低下しており、ばらつきが拡大していることに留意が必要である。
・実質総消費動向指数は、前期比で、2月+0.4%、3月▲0.1%、4月0.0%、5月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%、6月+0.2%。
・5月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.1%となった。
物価
○ 資源価格をみると、ドルベースでは、原油の上昇は緩やかで、銅の上昇にも一服感がみられるが、円安の進行を背景に、
円ベースでは高止まりとなっている。仕入価格が上昇する中で、企業においては、世界金融危機前とは異なり、販売価格
への転嫁の動きが進んでいる。
○ 中小企業の半数以上が、円安は、原材料や部品、燃料・エネルギーの負担増等により、業績に対してデメリットが大きいと
認識している。また、自社にとって望ましい為替レート水準として、中小企業の約7割は1ドル110円以上135円未満と回答した。
・為替レートは、2022年以降、円安ドル高が進行し、2024年7月初めには1ドル161円台に。
実質実効為替レートでみると、1990年代半ば以降、円安傾向で推移し、直近2024年5月には1973年の変動相場制移行以来
最も低い水準となった。
・実質実効為替レートの長期的な円安傾向は、
①我が国の物価上昇率が貿易相手国よりも低く推移したことに加え、
②足下では、内外金利差の拡大による名目為替レートの円安が主因。
・国際収支も構造変化した。貿易収支は資源価格の高騰で赤字化しやすい構造となり、サービス収支も赤字傾向が継続して
いる。第1次所得収支は拡大し、大幅な黒字である一方、海外子会社の内部留保分など海外に再投資され、円として戻ら
ない部分も多い。
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、緩やかに上昇している。
・消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移している。一方、家計の予想物価上昇率は、本年初め以降、
上昇傾向に転じている。
・サービス物価(消費者物価全体の約5割)は、前年比2%程度で推移しているが、12%を占める公共サービスや18%を占める
家賃の伸びはゼロ近傍で推移している。我が国では、これらの伸びが抑制されている一方、諸外国においては、公共
サービス、家賃ともに物価は上昇した。物価と賃金がともに上昇することがノルムとして定着していく中にあっては、
公共サービス価格においても、賃金引上げにつながるよう人件費の増加が適切に転嫁されることと、国民生活の安定と
のバランスが重要となってくる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月▲0.9%、3月▲4.4%、4月+15.8%、5月▲+7.5%。
・持家着工数は前月比で、2月+7.1%、3月▲1.7%、4月▲1.1%、5月▲4.5%。
・貸家着工数は前月比で、2月▲1.0、▲7.9%、4月+24.5%、5月▲13.5。
・分譲着工数は前月比で、2月▲9.3%、3月+0.5%、4月+15.1%、5月+3.3%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%(出来高▲0.4%)、
4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%(5月+0.6%)、6月▲3.1%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年の春闘の賃上げ率は、7月の最終集計で、定昇込み5.10%、ベア3.56%と、33年ぶりの高水準となった。5月のフルタイム
労働者の所定内給与は、春闘賃上げの反映により、前年比+2.6%と1994年以来最高となった。産業別には、人手不足感の強い
建設、運輸等で特に高い伸びとなった。
○ 実質賃金の伸びを就業形態別にみると、パート時給は昨年半ばよりプラスに転化し、フルタイム労働者もマイナス幅が縮小した。
30人以上の事業所について、振れの大きい特別給与を除く定期給与の前年比をみると、26か月ぶりにプラスとなった。この夏の
民間企業のボーナスも過去最高額を更新し、高い伸びとなっている。公的部門への広がりも期待がもてる。
○ 職種別の有効求人倍率をみると、人手不足感の高い建設や介護等では3~4倍となる一方、事務職は0.4倍と低い。民間職業
紹介における転職求人倍率でも、事務・アシスタントは足下で0.5倍を下回る低い水準で推移している。さらに、今後は、 多くの
企業が、事務職の業務である定型的な書類作成やスケジュール調整等をAIに代替する意向となっている。
○ AIの導入は、職種や仕事内容によって影響が異なる。IMFの研究によると、英国では、管理職や専門職はAIからより多くの便益
を得る可能性がある一方、事務補助員はAIに代替される可能性が高い。我が国では、AIに代替される可能性がある事務従事者
のシェアが就業者の2割となっており、事務職等の労働者のリ・スキリングは喫緊の課題となっている。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、2月1.26、3月1.28、4月1.26、5月1.24(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、1月2.4、2月2.6、3月2.6、4月2.6、5月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業の業況(全規模)は、製造・非製造業とも改善し、売上の7割を占める非製造業は、引き続きバブル期以降最高水準と
なった。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備投資意欲は引き続き旺盛となっている。23年度実績は前年度比+9%と高い伸びとなった後、24年度計画も6月時点で
10%増と堅調である。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+13、9月+14。
「大企業・非製造業」は、2023年9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+33、9月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月▲1、9月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8、9月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月+3.6%、6月(予測)▲4.8%、7月(予測)3.6%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月▲3.2%、3月+11.6%、4月+4.1%、5月▲6.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、2月+0.2%、3月+9.2%、4月▲1.3%、5月+2.3%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、2月▲11.5%、3月+12.6%、4月▲1.7%、5月+12.1%。
外需
○ 輸出・輸入おおむね横ばいとなっている。
・輸出数量は、約半分を占めるアジア向けのうち、韓国・台湾等向けは、世界的な半導体需要の回復により、情報関連財を
中心に持ち直し、ASEAN向けも下げ止まる一方で、景気が足踏み状態にある中国向けは軟調に推移し、全体として
横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.5、4月▲2.4、5月▲1.7、6月+1.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.8%、4月▲2.7、5月▲2.2、6月+1.6。
アジア経済の動向
○ 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっている。
先行きについては、足踏み状態が続くと見込まれる。さらに、不動産市場の停滞の継続や物価下落の継続による影響等に留意
する必要がある。
・中国の成長率は4.7%に低下。不動産市場の停滞が続く中で、政策効果が内需の好循環に繋がらず、景気は足踏み状態となって
いる。家計の可処分所得の伸びが低下し、消費は横ばい。構造的な需要不足を反映し、物価は5四半期連続で下落基調となり、
新規貸出は減少した。
・不動産開発の停滞により、地方政府の土地使用権譲渡収入は大幅に減少した。地方財政にも影響がみられる。
・中国の2024年4-6月期の実質GDP成長率は4.7%(前期比年率+2.8%)。
・消費はおおむね横ばいとなっている。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ止まりに
伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカでは景気拡大が継続。実質可処分所得の増加により、個人消費は増加傾向となっている。自動車販売台数は、
高金利が続く中でおおむね横ばいで推移した。コロナ禍後、政策効果等によりEV車が増加するも、24年以降は伸び悩み
がみられる。
・住宅着工件数は、住宅ローン金利が高止まる中で、このところ弱い動きがみられる。
・FRB(連邦準備制度理事会)の使命は物価の安定と雇用の最大化。物価上昇率は高止まりし、失業率は4%程度で推移
している。
・2024年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+1.4%。
○ 雇用者数は増加、失業率はやや上昇した。
・6月の失業率は4.1%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの兆しがみられる。
・24年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.1% (イギリスは+2.9%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの兆しがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに、このところ横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(6月)、イギリス+3.6%(6月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱い動きとなっている。イギリスのサービス輸出は持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
6月
27日
木
月例経済報告(R6.6.27) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き 懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク となっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産
市場の停滞に伴う 影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動
の影響を注視する必要がある。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・名目個人消費は、総雇用者所得とともに緩やかに増加の一方、実質消費は、実質所得が伸び悩む中、力強さを欠く。
・消費者マインドは、円安の影響もあり家計の予想物価上昇率の上昇を背景に足踏み。年収別のばらつき拡大にも留意が
必要である。
・近年、GDPには原則として計上されない中古品消費が6兆円規模にまで拡大している。中古車に加え、衣服やブランド
品での利用が多い。節約志向のほか、CtoC(消費者間取引)アプリの取引市場の発展や環境志向等が背景にあると
みられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、1月0.0%、2月+0.4%、3月▲0.1%、4月▲0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%、5月▲2.1%。
・4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。
消費者物価は、緩やかに上昇している。
・消費者物価は、年1回の再エネ賦課金改定の影響はあるが、引き続き2%台で推移している。電気・ガスの激変緩和措置は
一旦終了するが、今夏の一時再開により、消費者物価上昇率を抑制する見通しである。ガソリンの激変緩和措置の継続
も物価上昇率の抑制に寄与した。
・コメ価格は、昨夏の猛暑の影響により上昇傾向にある。生鮮野菜も生育不良により一部の品目で5月に平年比を大きく
上回る など、天候不順の影響には注意が必要である。また円安も相まって、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げる
リスクにも留意が必要である。
・物価と収入・賃金に関する最新のアンケート結果(2024年4月)によれば、①消費者は、約半数が「物価と収入がともに
緩やかに上昇する状態」を望ましいとする、②企業も、業種・規模によらず、7割超が「物価と賃金がともに緩やかに
上昇する状態」を望ましいとする。安定的な物価上昇とこれを上回る継続的な賃金・所得の増加を実現することが極めて
重要となってくる。
・日米欧の消費者物価を比較すると、欧米では財価格の伸びは縮小し、サービス価格が安定的にプラスとなる。日本もその
姿に近づきつつある。サービス物価は、BtoB(企業間取引)、BtoC(企業対消費者間取引)ともに、人件費比率が
高い品目の伸びが徐々に高まる傾向にある。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲1.5%、2月▲0.9%、3月▲4.4%、4月+15.8%。
・持家着工数は前月比で、1月+0.4%、2月+7.1%、3月▲1.7%、4月▲1.1%。
・貸家着工数は前月比で、1月+5.0%、2月▲1.0、▲7.9%、4月+24.5%。
・分譲着工数は前月比で、1月▲11.0%、2月▲9.3%、3月+0.5%、4月15.1%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・6月に公表された「建設総合統計」の公共工事出来高は過去に遡って改定された(建設工事受注動態統計の訂正の反映分を
含む。
5月の月例経済報告ではその時点で利用可能であったデータを踏まえ、堅調に推移していると判断。改定後のデータでは、
高水準で底堅い姿にあり、2024年4月の出来高は、年初来増加に転じた受注等を反映し、大きく増加した。
・2023年後半以降、都道府県発注工事等で出来高が減少していたが、足下では、市区町村を含め地方政府発注の公共事業の
進捗がみられる。ただし、都道府県工事は契約率が近年低下しており、引き続き、公共工事の円滑な執行が重要となる。
・請負金額は前月比で、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%(出来高▲0.1%)、3月▲10.1%
(出来高▲0.4%)、4月+1.4%(出来高+8.1%)、5月▲3.6%。
雇用・賃金の動向
○ 実質賃金を就業形態別にみると、雇用者の3割を占めるパート労働者は、昨年秋以降、時給ベースで前年比1%弱のプラスに
なった。7割を占めるフルタイム労働者は、時給ベースでは前年比でゼロ近傍まで回復しており、月給ベースでもマイナス幅が
着実に縮小した。一方、パート労働者比率は上昇傾向が続いており、平均の賃金上昇率を下押しする要因になっている。
○ フルタイム労働者の所定内給与の伸びは、2024年4月は2.3%と1994年10月以来の高さとなった。30人以上の事業所で賃金
上昇が先行している。経営側の集計における定昇込みの春闘賃上げ率は、大企業の5.58%に対し、中小企業は3.62%となった。
今後、中小事業所に春闘賃上げを波及させるためには、サプライチェーン全体での適正な価格転嫁の促進が重要である。
○ フルタイム労働者の所定内給与は、医療・福祉、教育といった公定価格分野以外では着実な増加傾向となっている。医療・
福祉は、診療報酬改定等が反映される6月以降の賃上げが期待される。教育に含まれる学校教員等は、地方公務員の4割弱
を占め、12月に反映される公務員給与の改定が鍵になる。
○ 23年度の地方公務員一般行政職の給料月額の平均伸び率は0.1%程度。公務員給与のGDP比が高い県では、賃上げによる
波及効果も高い。公務員の月例給勧告率は、過去は民間ベアと同様であった一方、近年は民間ベアを下回る。
○ パート労働者の時給は増加する一方で、年収の壁の範囲内で収入を抑える就業調整もあって、労働時間は緩やかな減少傾向
が継続し、現金給与総額の上昇が抑制されている。女性の有配偶就業者の年収分布を学歴別にみると、年収200万円未満の
割合は、高校卒では6割、専門学校・短大卒では5割、大学卒では4割弱となっており、能力発揮により世帯所得を向上させる
余地がある。
○ 一定の仮定を置いた試算では、妻が年収の壁を超えて働く場合、世帯の生涯可処分所得として、給与所得分に加え、年金
所得分の増加が、配偶者手当等の減少を大きく上回る。人手不足への対応という観点に加え、世帯の生涯可処分所得の向上
という観点からも、女性が年収の壁を超えて働くことをためらうことがないような情報の周知と環境整備が重要である。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、1月1.27、2月1.26、3月1.28、4月1.26(正社員は1.02)となった。
・完全失業率は、12月2.5%、1月2.4、2月2.6、3月2.6、4月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業収益は経常利益、営業利益ともに過去最高を更新し、企業部門は好調である。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・名目設備投資は過去最高水準となった。知的財産投資や建設投資が増加の一方、機械投資は足踏みがみられていた。先行
指標の機械受注は持ち直し傾向に転じており、今後の機械投資の回復が期待される。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・生産は、半導体製造装置を含む生産用機械を含め持ち直しの動きとなっている。ただし、新たに発生した自動車メーカーの
不正事案に伴う生産停止の影響が懸念される。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月▲0.6%、3月+4.4%、4月▲0.9%、5月(予測)+6.9%、6月(予測)▲5.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲6.1%、2月▲3.2%、3月+11.6%、4月+4.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲4.0%、2月+0.2%、3月+9.2%、4月▲1.3%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%、3月+12.6%、4月▲1.7%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月+1.1、3月▲1.5、4月▲2.4、5月▲1.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月+0.5、3月▲1.8%、4月▲2.7、5月▲2.2。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに
向かうことが期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直している。
・財輸出は持ち直しの動きとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きとなっている。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は拡大している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、物価上昇率の下げ
止まりに伴う影響による下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカでは高い金利水準が継続し、その長期化が懸念されている。物価上昇率の下げ止まりが背景にある。身近な
財・サービス価格は、一部でコロナ禍前と比較して3割程度高くなっており、低所得者層を中心に個人消費への影響
が懸念される。
・支持政党別の消費者マインドは大統領選前後で逆転する傾向となった。政治情勢が個人消費に与える影響にも留意が
必要である。
・先月発表された中国からの輸入品に対する関税引上げの影響は、2026年以降に本格化する可能性がある。
・2024年1-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+1.3%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・5月の失業率は4.0%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はこのところ弱い動き・住宅価格はゆるやかに上昇している。
○ コア物価上昇率はゆるやかに上昇した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きがみられる。ドイツ・イギリスでは、景気は持ち直しの兆しがみられる。
・2023年秋以降、ドイツ経済は弱含んでいたものの、2024年1-3月期には、輸出がけん引し、景気は持ち直しの兆しが
ある。
フランス経済は、輸出に加え家計消費も景気をけん引した。
・2024年6月、ECBは消費者物価上昇率の低下を受け、政策金利を引下げた。フランス下院総選挙をめぐる財政への
警戒感からフランス長期金利は上昇傾向にある。一方、ドイツ長期金利は、政治的なリスク回避の動きから低下した。
・24年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは+2.5%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは持ち直しの兆しがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっている。イギリスは低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.9%(5月)、イギリス+3.6%(5月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっている。イギリスは弱含んでいる。イギリスのサービス輸出は持ち直して
いる。
○ 生産は、ユーロ圏は下げ止まりつつある。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
2024年
5月
27日
月
月例経済報告(R6.5.27) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的 な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、 海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う
影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要が
ある。
GDPの動向
○ 2023年度のGDP成長率は、名目で5.3%、実質で1.2%となった。名目成長率は1991年度(5.3%)以来の高い伸びである。
○ 2024年1-3月期(1次速報)のGDP成長率は、名目においては前期比プラス0.1%と2四半期連続のプラスとなり、名目GDPの
実額は599兆円と過去最高を更新した一方、実質では前期比▲0.5%(年率▲2.0%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。
・景気の動きによるものとは言えない各種特殊要因がマイナスに寄与した。
具体的には、令和6年能登半島地震の影響のほか、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響もあって、実質前期比
で、個人消費は▲0.7%、設備投資も▲0.8%となった。
・輸出は、前期のサービス輸出の大幅増の反動もあって、実質前期比で▲5.0%となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・2024年1-3月期は、耐久財では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響で大幅に減少(実質GDP成長率への寄与度で
▲0.6%)したものの、消費の過半を占めるサービスは、外食等を中心に増加傾向が継続している。
・4月の状況をみると、一部自動車メーカーの出荷の再開が徐々に進む中、新車販売台数は持ち直しの動きがみられる。
家電販売は、平年比高めの気温もあり、エアコン販売に例年より早めの動きがみられる。
1月に落ち込んだ携帯電話も4月は増加に転じた。
外食売上高は、コロナ禍を経て、店舗数は減少傾向の一方、一店舗当たりの売上は増加、構造変化もみられる。
・実質総消費動向指数は、前期比で、12月▲0.3%、1月0.0%、2月+0.4%、3月▲0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、12月+0.9%、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%、4月▲1.2%。
・3月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.3%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価上昇率はピーク時(2023年1月の4.3%)から低下し、2023年11月以降は2%台で推移している。
・他方、円安により、円ベースの輸入物価に上昇圧力がみられる。中東情勢の不安定化や中国経済の持ち直し期待によって、
原油や銅価格は上昇傾向、小麦など穀物価格も気候要因もあって上昇の兆しがみられる。これらが、国内物価を押し上げる
リスクに留意する必要がある。
・ BtoB(企業間取引)のサービス価格は、過去は1%程度以下で推移してきたが、ここ1年ほどは2%台にレベルシフトしている。
人件費比率が高い分野で顕著な上昇がみられる。広告では、インターネット広告の価格が大きく伸びるなど構造に変化がみら
れる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月+3.1%、1月▲1.5%、2月▲0.9%、3月▲4.4%。
・持家着工数は前月比で、12月+1.7%、1月+0.4%、2月+7.1%、3月▲1.7%。
・貸家着工数は前月比で、12月+0.6%、1月+5.0%、2月▲1.0、▲7.9%。
・分譲着工数は前月比で、12月+9.1%、1月▲11.0%、2月▲9.3%、3月+0.5%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・設備投資の25%を占める建設投資は、着工ベースの工事費予定額では、昨年秋以降増加傾向にあるが、進捗ベースの工事出来高
の増加は途上にある。手持ち工事高は積み上がっており、今後これらが進捗し、投資につながることが期待される。
・公共投資については、進捗ベースの公共工事出来高は、防災・減災、国土強靱化予算の執行の効果もあり、増加が続いており、
堅調に推移している。手持ち工事高も高水準で増加傾向にあり、引き続き、投資としての発現が期待される。
・請負金額は前月比で、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%
(出来高+2.9%)、3月▲10.1%(出来高+1.9%)、4月+1.4%。
雇用・賃金の動向
○ 新たなビッグデータ(給与計算代行サービス)から、本年4月の賃金上昇率をみると、昨年同様、若年層の伸びが高いことに加え、
昨年は横ばいだった40代でも伸びがみられた。33年ぶりの高い伸びとなった今年の春闘賃上げの広がりがみられる。
○ 初任給も、幅広い産業で増加させる企業が増え、伸び率も昨年を大きく上回る。夏季ボーナスも、連合集計では平均支給月数が
前年を上回り、上場企業では、支給金額が前年比4.6%と昨年を上回る伸びとなった。
○ 労働需給のひっ迫に加え、昨年10月の最低賃金引上げもあって、パート・アルバイトの募集時の時給は、全国平均で1,141円、
前年比で3%台半ばの伸び。最低賃金引上げと募集時の時給には正の相関が見られる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、12月1.27、1月1.27、2月1.26、3月1.28(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4、2月2.6、3月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・上場企業の経常利益は1-3月期として過去最高、産業計で年度でも過去最高となった。企業の現預金の水準は他国より高く、
増加傾向。2000年代後半以降、総資産に対する比率も上昇している。企業部門の資金を賃金や投資に回していくことが重要
となる。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、生産活動が低下していたが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・製造業の生産活動は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案により、輸送機械を中心に低下していたが、生産再開に伴い、
3月以降持ち直しの動きがみられる。設備投資に含まれる貨物車(トラック、バン等)の登録台数も、3月以降徐々に持ち直し
の動きがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、1月▲6.7%、2月▲0.6%、3月+4.4%、4月(予測+4.1%)、5月(予測+4.4%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月+4.4%、1月▲6.1%、2月▲3.2%、3月+11.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、12月+2.0%、1月▲4.0%、2月+0.2%、3月+9.2%。
・輸送機械は前月比で、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%、3月+12.6%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入おおむね横ばいとなっている。
・財の輸出は、自動車や建設用・鉱山用機械は、供給制約もあって軟調である一方、世界的な半導体需要の回復に伴い、半導体
製造装置は持ち直し傾向が続く。
・鉄鋼輸出は、日本は緩やかな減少傾向の一方、中国が供給過剰を背景に、アジア向けを中心に低価格品の輸出を増大。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
・サービス収支は、旅行では黒字の一方、大宗を占めるその他サービスでは、デジタル関連や保険等で赤字が拡大した。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲1.6、2月+1.1、3月▲1.5、4月▲2.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月+2.1、2月+0.5、3月▲1.8%、4月▲2.7。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうこと
が期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直している。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
★最近の政策対応
○ 自動車の買換え補助金(4/26発表)
・2024年中の買換えに対し最高1万元(約 20万円)を支給。
○ 住宅在庫の買取り等(5/17発表)
・地方政府が国有企業を通じて、住宅在庫の一部を買い取り、低所得者向けの公営住宅に転換。
・地方政府が開発の進んでいない土地を買い戻し、不動産企業の債務を圧縮。
・住宅ローン金利の下限を撤廃、頭金比率の引下げ。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は回復している。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等に
よる下振れリスクに留意する必要がある。
・個人消費主導で景気は拡大している。金融引締めが続く中でも高成長が続く背景には、移民流入の上振れや、半導体法
等による設備投資の緩やかな増加がある。
・労働需給は緩和傾向にあり、名目賃金上昇率に一服感がみられるものの、依然として高水準となっている。
・物価上昇率は、前月比でみると、財の寄与が縮小する中で、サービスを中心に緩やかに上昇した。
・2024年1-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+1.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・4月の失業率は3.9%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はおおむね横ばい・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおゆるやかに上昇した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・EUは、1980年代以降市場統合が進展し、2004年には東欧諸国が加盟するなど拡大、中国と同程度の経済規模となった。
実質GDPは、2023年秋以降、ドイツを含むユーロ圏で弱含むものの、底入れに向かうことが期待される。
2023年第3四半期以降、消費者物価上昇率の低下を受け、実質賃金はプラスで推移している。
・2020年にEUを離脱したイギリスは、サービス業が経済成長をけん引してきた。経常収支は赤字傾向となっている。
広告・専門的コンサル等のサービス貿易は黒字傾向である一方、財貿易は赤字傾向にある。
所得収支は、証券投資による収益(株式配当、債券利子)の赤字額が直接投資による収益の黒字額を上回り、赤字傾向。 ・ユーロ圏で急速に存在感を高めているアイルランド経済は、製薬、IT企業を積極的に誘致し高い経済成長を実現した。
イギリスのサービス貿易相手国としても重要な地位を占める。
・2024年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは+2.5%、ドイツは+0.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.8%(4月)、イギリス+4.0%(4月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出は持ち直しの動きがみられる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
4月
23日
火
月例経済報告(R6.4.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外 景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の 影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の 経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う 影響
による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP速報
○ 2023年10-12月期(2次速報)のGDP成長率は、実質では前期比+0.1%(年率+0.4%)となった。
令和6年能登半島地震の影響
○ 令和6年能登半島地震では、1.1~2.6兆円程度のストック毀損が生じたことに加え、石川県・富山県・新潟県の3県で1-3月期に
1,000億円程度の直接的なGDPの損失があったと試算される。
○ 3月16日に延伸した北陸新幹線(金沢~敦賀間)は、開業1か月で72万人(1日平均2.3万人)が利用、北陸応援割をはじめと
する政策効果も相まって、北陸経済の活性化に寄与した。
「景気ウォッチャー調査」の北陸地域の現状・先行き判断DIは2月以降50を超える水準に回復した。
引き続き、復旧・復興支援を切れ目なく進めていくことが必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・個人消費は、名目では過去最高水準に拡大する一方、実質では力強さを欠く。
実質の耐久財消費は相対的に堅調な一方、非耐久財消費は長期的に緩やかな減少傾向となっている。
サービス消費も、実質ではコロナ禍前を下回る。
・足下の小売販売は、一部自動車メーカーの出荷停止の影響で自動車は減少する一方、百貨店等が増加した。
かばん・アクセサリー等の高額品が増加しており、インバウンド増加の影響のほか、株価上昇の影響もあり日本人の消費も
増加した。
・外食売上高はコロナ禍前のトレンドを超えて増加している一方、客数の回復は途上にある。消費に占める60歳以上世帯のシェア
は4割超まで拡大した。外食支出の小さい高齢世帯の増加、コロナ禍後の高齢者の外出回復の遅れも影響している可能性がある。
・ 大型連休の旅行者数は、国内はほぼコロナ禍前水準に戻り、海外も持ち直す見込みとなっている。そのほか、ライブやテーマ
パーク、 スポーツ観戦は、売上高・人数ともに挽回消費の動き。学習塾は、少子化の中でも受講生数、売上高ともに底堅い動き
となっている。
・実質総消費動向指数は、前期比で、11月▲0.2%、12月▲0.3%、1月0.0%、2月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月+0.4%、12月+0.9%、1月+0.8%、2月+0.9%、3月+0.5%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価は、前年比2%台で、引き続き緩やかに上昇した。4月には、食料品や日用品等で値上げが実施されているが、POS
データ(レジから収集される顧客の消費行動をデータ化したもの。販売実績のデータ)でみると、全体として食料品価格等の前年比は、現時点では、
引き続き縮小傾向で推移している。
・中東情勢が不安定化する中、原油価格は再び上昇しており、輸入物価を通じた影響に留意が必要である。
・サービスの物価上昇率は、0%の割合が縮小、プラスの割合が増加し、1980年代の姿に近づいている。企業の中期的な予想
物価上昇率は、ここ2年程度は2%程度の安定的な水準にレベルシフトした状態が継続している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月▲2.0%、12月+3.1%、1月▲1.5%、2月▲0.9%。
・持家着工数は前月比で、11月+1.7%、12月+1.7%、1月+0.4%、2月+7.1%。
・貸家着工数は前月比で、11月▲2.7%、12月+0.6%、1月+5.0%、2月▲1.0。
・分譲着工数は前月比で、11月▲4.8%、12月+9.1%、1月▲11.0%、2月▲9.3%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、10月▲3.3%(出来高▲0.3%)、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%
(出来高+2.6%)、2月+21.7%、3月▲10.1%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年の春闘(第4回集計)の賃上げ率は、引き続き定昇込みで5%超、ベアで3%台半ばと、33年ぶりの高水準となった。
○ 定昇込みの賃上げ率の分布は、昨年は3%強に山があったのに対して、今年は5%強にシフト。ベアの分布は、昨年は2%弱に
山があったのに対して、今年は3%台半ばにシフトしており、より多くの企業で高い賃上げ率が実現している。
○ 昨年2023年の賃上げ率は、若年層、特に高校卒で男女ともに高めだった一方、大学卒は男女ともに中年層で低い傾向と
なった。 また女性の賃金は、男性に比べ、水準が低く、年齢を重ねても上昇幅が小さい。
○ 産業別にみると、昨年は、男女とも、人手不足感の高い建設業等で高い賃上げ率となった一方、医療、福祉など公定価格
部門で は横ばいとなった。本年は、診療報酬改定等における加算措置等により、同分野の高い賃上げに期待される。
(※)診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定において、賃上げに必要な改定率として、医療では+0.88%、介護では+1.59%
(処遇改善加算の一本化による賃上げ効果等も含め ると、2.04%)、障害福祉では+1.12%(同1.5%を上回る水準)を確保。賃上げ促進税制の
活用を組み合わせることにより、2024年度に+2.5%、25年度+2.0%のベアの実現が期待される。
○ 2024年の賃上げの流れを広げるため、適切な価格転嫁や省力化投資の継続、賃金の高い分野への労働移動の後押し、大卒中年
層を含む全世代リ・スキリングが重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・就業者数は、最近、中高年を中心に増加傾向にある。長期的にみると、中高年の労働参加率は男女ともに上昇した。
・日本人の寿命の最頻値は、男性88歳、女性93歳と長く、男性の4分の1、女性の半分が90歳以上まで生きる状況であり、意欲ある
高齢者が長く活躍できる環境をつくることが重要となる。
・主要先進国間で比較すると、日本の高齢者の労働参加率は高く、伸びも大きい。
・有効求人倍率は、11月1.28、12月1.27、1月1.27、2月1.26(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、10月2.5%、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4、2月2.6となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・設備投資のうち、商用車や船舶等の輸送用機械は約6%である。トラックやバンなど貨物車の新車登録台数は、一部自動車メーカー
の生産・出荷停止の影響で、小型と軽を中心に大幅減となった。24年1-3月期の設備投資への一時的な影響に注意が必要である。
・企業の設備投資は、2023年度は実績見込みで前年度比プラス10.2%、2024年度は3月時点の計画としては1990年度以来の伸びとなる
など、企業の投資意欲には力強さがある。ただし、中小企業では、非製造業で2023年度の実績見込みが23%と高い伸びとなった
一方、製造業では一部自動車メーカーの生産停止の影響もあって投資先送りの動きもあるなど、ばらつきもある。
○ 業況判断は、改善している。ただし、製造業の一部では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による影響がみられる。
・ 企業の業況は、売上の約7割を占める非製造業で、バブル期以降の最高水準となった。建設業は過去10年程度、業況が「良い」と
答える企業が、「悪い」と答える企業を上回る。運輸業では近年、「良い」が増加の一方、「悪い」が減少傾向となっている。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+11、6月+10。
「大企業・非製造業」は、2023年6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+34、6月+27。
「中小企業・製造業」は、2023年6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1、6月+0。
「中小企業・非製造業」は、2023年6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+13、6月+8。
○ 生産は、持ち直しに向かっていたものの、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ生産活動が低下している。
・製造業では、一部の業種に、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響がみられる。ただし、3月以降、輸送機械の生産は、
これらのメーカーの生産再開に伴い、徐々に持ち直す見込みとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月+1.2%、1月▲6.7%、2月▲0.6%、3月(予測)+4.9%、4月(予測)+3.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月+1.6%、12月+4.4%、1月▲6.1%、2月▲3.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月▲0.9%、12月+2.0%、1月▲4.0%、2月+0.2%。
・輸送機械は前月比で、11月▲1.6%、12月+2.0%、1月▲9.9%、2月▲11.5%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入はこのところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、12月+1.0、1月▲1.6、2月+1.1、3月▲1.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5か月ぶりに月下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、12月+0.1、1月+2.1、2月+0.5、3月▲1.8%。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は政策効果により持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうこと
が期待される。ただし、不動産市場の停滞や物価の下落が続くことによる影響等に留意する必要がある。
・中国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は5.3%(前期比年率+6.6%)。政策効果により、自動車販売やインフラ投資が増加
した。景況感にも改善がみられる。
・一方、不動産市場の停滞は、企業・家計の資金需要や銀行の融資姿勢に影響し、足下で新規貸出は低調となっている。また
消費者物価は4四半期連続ゼロ近傍、GDPデフレーターはマイナスが継続している。物価の下落が続くことによる影響に
留意が必要である。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びが上昇した。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
○ インドでは、景気は回復している。
・乗用車販売台数が伸びるなど、内需にけん引されて8%台の成長が続いている。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・2023年10-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.4%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・3月の失業率は3.8%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はおおむね横ばい・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.2% (イギリスは▲1.2%、ドイツは▲1.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.1%(3月)、イギリス+4.6%(3月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
3月
22日
金
月例経済報告(R6.3.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外 景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等 の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震 の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う
影響による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP速報
○ 2023年10-12月期(2次速報)のGDP成長率は、実質では前期比+0.1%(年率+0.4%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・新車販売(消費に占める輸送機械の割合は2.6%)は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ弱い動きと
なっている。
・国内旅行消費については、宿泊施設の稼働率は、コロナ禍の落ち込みから回復した。一方、宿泊業の就業者数はコロナ禍前に
戻っておらず供給制約。こうした中で、客室単価は上昇する一方、日本人宿泊者数はこのところ横ばいとなっている。
・消費者のマインドや資産価値(株式等)に関する見方は改善が継続している。
・実質総消費動向指数は、前期比で、10月0.0%、11月▲0.2%、12月▲0.3%、1月▲0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月+0.5%、11月+0.4%、12月+1.1%、1月+0.8%、2月+1.1%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価の前年比は、昨年秋以降2%台で推移。なお、資源価格が落ち着く下で、電気・ガスの激変緩和事業の開始から1年
が経過し、押下げ効果が薄まったことから、2月は上昇幅が拡大。一方、食料品は、値上げの一服から、引き続き上昇幅が緩やか
になった。
・デフレに陥る前の1990年代前半以前は、サービスの物価上昇率は2%前後で推移している。足下では、財の物価上昇が落ち着く一方
で、一般サービスの上昇率が徐々に高まり、財の上昇率と同水準となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅の新設着工戸数は、持家を中心に弱含みが続く。長期的にみると、1960年代後半に住宅戸数(ストック)が世帯数を上回り、
持家など戸建の住宅を中心に、新規着工戸数は減少トレンドにある。
・世帯構造の変化をみると、単身世帯等の割合が増加する一方で、夫婦と子供のいる世帯や三世代同居世帯など戸建住宅の需要層と
考えられる世帯の割合が減少した。
・建築費の高止まりの中で、戸建住宅の新設着工が減少する一方で、中古住宅の販売量は増加傾向にある。リフォーム促進等を
通じた中古住宅流通市場の拡大も重要となっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+0.1%、11月▲2.0%、12月+3.1%、1月▲1.5%。
・持家着工数は前月比で、10月▲6.6%、11月+1.7%、12月+1.7%、1月+0.4%。
・貸家着工数は前月比で、10月+0.9%、11月▲2.7%、12月+0.6%、1月+5.0%。
・分譲着工数は前月比で、10月+5.0%、11月▲4.8%、12月+9.1%、1月▲11.0%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、9月+8.5%(出来高+0.7%)、10月▲3.3%(出来高▲0.3%)、11月+4.3%(出来高▲0.6%)、12月+5.7%
(出来高+0.9%)、1月▲4.5%(出来高+2.6%)、2月+21.7%。
雇用・賃金の動向
○ 2024年春闘(第1回集計)の賃上げ率は、定昇込みで5.28%、ベアで3.7%と、30年ぶりとなった
昨年を大きく上回った。
○ ベアは、中小企業でも3%近い伸びとなり、組合計のベースアップ額は、平均月1万円を超える水準となった。
○ 賃金の改定は、昨年のパターンでは、5月頃から夏場にかけて実際の賃金支払に徐々に反映されている。現在、一般労働者の
所定内給与の伸びは前年比1%台半ばだが、今後高まっていくことが見込まれる。
○ 昨年、3%以上の賃上げを行った中小企業は6割弱、うち価格転嫁ができた企業では7割強となっている。すそ野の広い賃上げの
実現のためには、重層的取引の先端に至るまでサプライチェーン全体での適切な労務費の価格転嫁と製品価格の設定が重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、10月1.30、11月1.28、12月1.27、1月1.27(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、9月2.6%、10月2.5%、11月2.5%、12月2.5%、1月2.4となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・昨年10-12月期の企業収益は、経常利益・営業利益ともに10-12月期として過去最高となるなど、総じて改善が継続している。
他方、1月の生産活動は、一部自動車メーカーの生産停止により低下した。輸送機械では2月も減少が続く見込みとなっている。
・自動車産業は裾野が広く、関連品目の生産も低下した。また、半導体品目の一部では、令和6年能登半島地震の影響もみられる。
・こうした中、1-3月期の大企業の景況感は、製造業で大きくマイナスとなった。ただし、4-6月期以降の先行きは改善した。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・2023年10-12月期の設備投資は、実質前期比プラス2.0%と上方改定、名目金額(年率換算)は1991年以来初めて100兆円を超えた。
半導体や自動車関連で生産能力強化のための工場新設等の投資が実行され始め、契約金等の支払が進んでいる結果とみられる。
・他方、企業の高い投資計画に比べ、実際の投資の伸びは依然、例年より弱く、引き続き供給制約等の影響に留意が必要となる。
・2024年度の投資計画(2月15日時点調査)は、2023年度の高い実績見込み(9.3%)の後、前年度比7.5%の強い伸びとなっている。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年3月+1、6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+8。
「大企業・非製造業」は、2023年3月+20、6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+24。
「中小企業・製造業」は、2023年3月▲6、6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2023年3月+8、6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+7。
○ 生産は、持ち直しに向かっていたものの、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ生産活動が低下している。
・鉱工業生産指数は前月比で、11月▲0.6%、12月+1.2%、1月▲6.7%、2月(予測)+4.8%、3月(予測)+2.0%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、+10月+0.3%、11月+1.6%、12月+4.4%、1月▲6.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月+6.6%、11月▲0.9%、12月+2.0%、1月▲4.0%。
・輸送機械は前月比で、10月+2.2%、11月▲1.6%、12月+2.0%、1月▲9.9%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入はこのところ弱含んでいる。
・財の輸出は、アメリカ向けは増加傾向が続く一方、欧州向けが弱く、アジア向けも持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・インバウンドについて、訪日外客数は2月として過去最高となった。一人当たり旅行消費額は欧州等からの旅行者が高い。
・財の輸入は、弱含みとなっている。紅海危機の影響により、1月は、欧州からの輸入について、海上輸送割合が高いワイン、
化粧品、自動車部分品等の輸入が大幅に減少した。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月±0.0、12月+1.0、1月▲1.6、2月+1.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月+1.0、12月+0.1、1月+2.1、2月+0.5。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待
される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある。
・実質GDP成長率は、23年10-12月期で前年比+5.2%(前期比+4.1%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
【全国人民代表大会(3/5~11) 主な目標・政策方針(決定)】
○ 24年の成長率目標は5%程度。(23年目標5%程度、実績5.2%)
○ 現状認識:①有効需要が不足し、一部産業(鉄鋼、不動産等)の 生産能力が過剰。
②雇用機会不足とミスマッチ失業が併存。
③一部地方の財政がひっ迫。
○ 財政拡大: 新たに超長期特別国債を発行、24年は1兆元(対GDP比0.8%)。
地方特別債の発行枠:3.9兆元(23年目標3.8兆元)
財政赤字目標は対GDP比3%で維持。
○ 耐久財消費の拡大:自動車の買替え促進(老朽車の強制廃棄を執行)、
自動車ローン頭金比率(現行20%以上)の引下げ等。
○ 重点分野のリスクの防止・解消: 不動産企業の資金需要を支援、ビジネスモデルを刷新。
地方政府の債務リスク解消と行政の安定運営を一体的に推進。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
・韓国経済は、世界的な半導体需要の持ち直しにより、景気は持ち直しの動きがみられる。長期的にみると、1997年のアジア
通貨危機後、 安定的なマクロ経済環境の維持に努めたこともあって着実に成長し、2023年の一人当たり名目GDPは3.3万ドル。
・他方、合計特殊出生率は0.72と低く、人口は50年後(2072年)には約3,600万人に減少することが見込まれている。
○ インドでは、景気は回復している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・アメリカの一人当たり名目GDPは約8.2万ドルで、日本の約2.4倍。長期的にみると実質GDPはおおむね2%以上の成長率
で推移。
足下では6四半期連続で2%以上のプラス成長が継続し、2023年は2.5%。2024年も2%程度の見通し。
・安定的な物価上昇と、それを超える名目賃金の上昇に支えられた個人消費の増加が、内需主導の経済成長をけん引している。
・2008年の世界金融危機のような大きな経済的ショックに見舞われても、デフレには陥っていない。
・アメリカは世界の名目GDPの約25%を占める最大のマーケットである。2023年の財輸入においては、カナダ・メキシコ・
中国のシェアが全体の約4割となっている。中国のシェアは、2001年のWTO加盟後に急上昇した。2009年以降首位で
あったが、米中貿易摩擦を契機に、2023年のシェアは2位に低下した。対内直接投資残高では日本は首位である。
・コロナ禍後の就業者数をみると、55歳以上は伸びが停滞しており、外国生まれ労働者の増加にもかかわらず、労働供給の不足
が継続している。株価上昇を背景とした金融資産の増加がコロナ禍後の早期引退に繋がっている可能性。名目賃金上昇率は
高水準で推移しており、物価上昇率は鈍化傾向にあるものの、金融政策に与える影響に留意が必要である。
・2023年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+3.2%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・2月の失業率は3.9%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.2% (イギリスは▲1.4%、ドイツは▲1.1%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.3%(2月)、イギリス+5.5%(1月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。イギリスのサービス輸出はおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
2月
21日
水
月例経済報告(R6.2.21) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外 景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢金融資本市場の変動等の 影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の 経済に与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 北陸地域の景気ウォッチャーからは、令和6年能登半島地震の影響について、地域の景気への影響や自粛ムードが長引くこと
などを懸念するコメントが多く寄せられている。先行きについては、北陸新幹線延伸や北陸応援割、復興需要に期待するコメント
もみられる。
○ 地震で被災したサプライヤー企業からの部品調達が滞り、県外でも一部で生産活動に影響が生じている。
○ 北陸地域の人流に関するビックデータをみると、震災直後の落ち込みからもとに戻る動きもみられる。
世界の経済情勢
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う影響による
下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
・アメリカは、2023年の実質成長率葉2.5%と、個人消費主導で景気は拡大している。スマートフォンや音楽ライブなどが好調である。
・中東地域の緊迫が続く中で、昨年末から海上貿易はスエズ運河を回避しアフリカの喜望峰周りとなる動きが増加している。また、
昨年末にみられた物流コストの急上昇には一服感がみられるものの、今後の動向には留意が必要である。
GDP速報
○ 2023暦年のGDP成長率は、実質で1.9%、名目で5.7%と高い伸びとなっている。
名目成長率は1991年(6.5%)以来の水準である。
○ 2023年10-12月期(1次速報)のGDP成長率は、実質では前期比▲0.1%と2四半期連続のマイナスの一方、名目では同+0.3%と2四半期
ぶりのプラスとなった。名目GDPの実額は596兆円と過去最高を更新した。
○ 実質GDP成長率の内訳をみると、外需はプラスに寄与した一方、個人消費はマイナス0.2%、設備投資はマイナス0.1%と3四半期連続
マイナスとなった。また、内需は力強さに欠ける。
★ 日本とドイツの比較
・2023年のドイツの名目GDPは、米ドル換算で日本を上回った。
米ドル換算のGDPは、為替レートの影響を受けること、また、日本に比べ、ドイツの物価上昇率が高いことに留意が必要で
ある。ただし、ドイツは、日本の3分の2の人口、約6割の就業者数、約8割の労働時間で日本と同程度の名目GDPを実現し、
生産性が高い。
・ドイツは、2000年以降、平均で実質1%、名目2%以上の成長を実現した。
日本では、バブル崩壊以降の約30年の間、デフレ心理と コストカットの縮み志向の中、名目・実質ともに低成長となって
いる。デフレから脱却し、経済を熱量溢れる新たなステージに移行 させる千載一遇のチャンスを逃さず、「物価上昇を上回る
賃上げ」の実現と潜在成長率の引上げに取り組むことが必須となる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。
・個人消費は、サービス消費回復の一服に加え、物価上昇や暖冬の影響もあり、半耐久財や非耐久財が減少した。一方、雇用環境
の改善に加え、物価上昇の落ち着きにより、消費者マインドは持ち直し、実質総雇用者所得も持ち直しの動きが見られる。
・コロナ禍で積み上がった超過貯蓄は、アメリカでは取り崩しが進む一方、日本では取り崩しは限定的となっている。賃金・所得の
増加が継続していくという成長期待が重要となる。
・本年開始の新NISAに向け、口座開設数は、30~40代を中心に増加。貯蓄から投資への流れも期待される。
・実質総消費動向指数は、前期比で、9月0.1%、10月0.0%、11月▲0.1%、12月▲0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、9月▲1.0%、10月+0.5%、11月+0.4%、12月+1.1%、1月+0.8%。
・12月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価の前年比は、昨年1月のピーク時は4.3%まで上昇したが、激変緩和措置もあり、足下は2%台で推移している。
・財のうち食料品については、昨年までの値上げラッシュが一服。2024年の年明け後の値上げについては、原材料高等を理由と
する企業の割合が低下し、人件費の転嫁を理由とする割合が増加した。
・サービス物価の上昇も、当初は、原材料高を受けた外食や設備修繕等が中心であったが、昨年以降は、宿泊料に加え、塾や習い事、
理美容など人件費割合が相対的に高い分野の寄与が徐々に高まってきている。人件費を含む適切な価格転嫁が着実に進展していく
ことが、賃金と物価の好循環のために重要となる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、9月▲1.5%、10月+0.1%、11月▲2.0%、12月+3.1%。
・持家着工数は前月比で、8月+5.8%、9月▲9.3%、10月▲6.6%、11月+1.7%、12月+1.7%。
・貸家着工数は前月比で、8月▲4.4%、9月+4.8%、10月+0.9%、11月▲2.7%、12月+0.6%。
・分譲着工数は前月比で、8月+17.0%、9月▲2.0%、10月+5.0%、11月▲4.8%、12月+9.1%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、8月▲10.8%(出来高▲0.4%)、9月+8.5%(出来高+0.7%)、10月▲3.3%(出来高▲0.3%)、11月+4.3%
(出来高▲0.6%)、12月+5.7%(出来高+0.9%)、1月▲4.5%。
雇用・賃金の動向
○ 一般労働者の賃金は1%台の上昇の一方、パート労働者の時給は、需給のひっ迫や最低賃金引上げもあり足下で4%まで上昇した。
2023年の一般労働者の賃金上昇率をみると、若年層で高めとなっている。
○ 主要国やデフレ前の日本では、物価上昇と労働生産性向上が名目賃金上昇をけん引している。物価上昇を賃金に反映させ、物価
に負けない名目賃金上昇率を実現・継続し、賃金と物価の好循環を回すとともに、労働生産性を高めていくことが重要となる。
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、9月1.29、10月1.30、11月1.28、12月1.27(正社員は1.00)となった。
・完全失業率は、8月2.7%、9月2.6%、10月2.5%、11月2.5%、12月2.4%となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
・企業の設備投資意欲は高いが、実際の設備投資には必ずしも結び付いていない。建設投資(工事出来高)は、これまでの大型工事
の一服で減少傾向にあったが、建築工事費予定額は持ち直しており、今後、建設投資につながることが期待される。
・建設技能者は不足しており、特にエレベーターの設置等に携わる電気工事士等では過去最高水準の不足超となった。こうした中、
エレベーター等の建設関連設備は受注が伸び、需要は堅調である一方、受注残が積み上がっている。
・電工や配管工の就業者数は、長期的に減少傾向が続き、過去20年でそれぞれ10万人強ずつ減少している。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年3月+1、6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+8。
「大企業・非製造業」は、2023年3月+20、6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+24。
「中小企業・製造業」は、2023年3月▲6、6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2023年3月+8、6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+7。
○ 生産は、持ち直しに向かっていたものの、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、このところ生産活動が低下している。
・鉱工業生産指数は前月比で、10月+1.3%、11月▲0.9%、12月+1.4%、1月(予測)▲6.2%、2月(予測)+2.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、9月▲3.4%、+10月+0.3%、11月+1.6%、12月+4.4%。
・電子部品・デバイスは前月比で、9月▲0.2%、10月+6.6%、11月▲0.9%、12月+2.0%。
・輸送機械は前月比で、9月+4.2%、10月+2.2%、11月▲1.6%、12月+2.0%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。輸入はおおむね横ばいとなっている。
・2023年の経常収支は、海外からの配当受取等の第一次所得収支が過去最高水準となる中で、コロナ禍前並みの黒字となった。
・財の貿易収支は、自動車等の輸出増加と、鉱物性燃料の価格下落を受けた輸入減少により、2022年に比べ赤字幅が縮小した。
・サービス収支は、輸出面では、インバウンドの回復等を受けて増加した。一方、輸入面では、デジタル関連や保険分野の輸入が
増加し、収支は引き続き赤字である。デジタルや知財等のサービス分野の競争力強化も重要となる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、10月▲0.4、11月±0.0、12月+1.0、1月▲1.6。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、10月▲1.1、11月+1.0、12月+0.1、1月+2.1。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待
される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある。
・実質GDP成長率は、23年10-12月期で前年比+5.2%(前期比+4.1%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
○ インド・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は拡大している。 先行きについては、拡大が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・2023年10-12月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+3.3%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・1月の失業率は3.7%となった。
○ 設備投資は緩やかに増加している。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.2% (イギリスは▲1.4%、ドイツは▲0.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.6%(1月)、イギリス+5.5%(1月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2024年
1月
25日
木
月例経済報告(R6.1.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ一部に足踏みもみられるが、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果 もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な 金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の 下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、 物価上昇、中東地域をめぐる情勢金融資本市場の変動等の影響に 十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に 与える影響に十分留意する必要がある。
|
○ 令和6年能登半島地震では、住宅や道路・港湾施設等のストックの損壊に加え、停電や断水が広範に発生した。これらは、地域住民
の生活のみならず、生産や物流、観光等を通じて幅広く経済に影響を及ぼしている。
○ 能登半島地震による経済への影響を分析する一環として、東日本大震災や熊本地震の際の試算方法を踏まえ、市町村ごとの震度や
被害状況に応じて、過去の大地震における損壊率を参照しつつ、ストックの毀損状況を暫定的に試算した。
○ 今回の試算は被害額を積み上げたものではなく、市町村ごとの震度に基づいた機械的な試算であり、幅をもってみる必要がある。
世界の経済情勢
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に伴う 影響に
よる下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域 をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
GDP速報
○ 2023年7-9月期のGDP2次速報では、名目GDPは横ばいの一方、実質成長率は前期比▲0.7%(年率▲2.9%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・消費者マインドは、昨年秋以降、持ち直しに足踏みがみられていたが、雇用環境の改善や食料品等の物価上昇の落ち着きを反映
して、再び持ち直している。世帯属性を問わず、持ち直している。
・コロナ禍を経て、オンライン消費は大きく増加した。特に、60代以上の高齢世帯の伸びが大きい。一方、他の主要国と比較すると、
オンライン消費には更なる拡大の余地がある。
・個人消費に占める分野別支出の割合を他の主要国と比較すると、我が国は、飲食料品の割合が高い一方、娯楽やスポーツ・文化、
外食・宿泊サービスが低い。これらのサービス消費は、一人当たり支出金額でも、他国より低い。
・この30年間の一人当たり支出額をみると、高齢化で医療関係、IT化で通信関係が伸びる一方、娯楽・スポーツ・文化は減少した。
余暇時間を比較すると、我が国は、男性を中心に低い水準となっている。働き方改革による長時間労働の抑制、有給休暇取得の促進
は、ウェルビーイング向上とともに、時間消費型のサービス消費の拡大に資することが期待される。
・実質総消費動向指数は、前期比で、8月▲0.1%、9月0.1%、10月+0.1%、11月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月▲0.9%、9月▲1.0%、10月+0.5%、11月+0.4%、12月+1.1%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、このところ上昇している。
消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。
・消費者物価は、食料品値上げ一服により2%台で緩やかに上昇。電気・ガスの激変緩和措置等は、これまでの物価上昇を和らげる
ことに寄与している。
・コロナ禍以前の米欧の物価上昇はサービスの寄与が大きく、日本でもコロナ禍前に比べてサービスの寄与は高まりつつある。
人件費の割合が高いサービス分野で、賃金上昇が価格に転嫁され、賃金と物価がともに持続的に上昇していくことが重要となって
くる。
・物価上昇の主因は、食料品など財からサービスへとシフトしつつある。アメリカでは、物価は、財を中心に落ち着きつつある一方
で、堅調なサービス需要を背景に2%を上回る伸びとなっている。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、8月+4.4%、9月▲1.5%、10月+1.0%、11月▲4.0%。
・持家着工数は前月比で、7月+1.0%、8月+5.8%、9月▲9.3%、10月▲8.4%、11月+0.9%。
・貸家着工数は前月比で、7月+1.5%、8月▲4.4%、9月+4.8%、10月+1.8%、11月▲5.6%。
・分譲着工数は前月比で、7月▲16.0%、8月+17.0%、9月▲2.0%、10月+8.5%、11月▲6.6%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、7月▲4.3%(出来高+1.7%)、8月▲10.8%(出来高▲0.4%)、9月+8.5%(出来高+0.7%)、10月▲7.9%
(出来高▲0.3%)、11月+7.0%(出来高▲0.6%)、12月+9.2%。
雇用・賃金の動向
○ 企業の人手不足感はバブル期以降最高水準に高まる一方で、ハローワーク(公共職業安定所)の有効求人倍率は横ばい傾向と、
両者に乖離がみられる。デジタル化に伴う求職手段の多様化が進む中、ハローワークを経由した就職者の割合は15%程度まで低下し、
民間職業紹介所等が増加した。
ハローワーク利用者は若年層で減少し、高齢者の利用は増加した。
○ 民間職業紹介を通じた正社員の求人は着実に増加している。さらに、近年は、すき間時間を活用したスポットワークという形で、アプリ
を通じた短時間の就業のマッチングも増加した。
○ 転職の希望者は、男女ともに正社員を中心に1,000万人超(就業者の15%)まで増加した。賃金の上昇圧力につながる可能性を含んで
いる。転職希望者の割合は、男女とも25~34歳で最も高く約25%となっている。
○ 今年の春闘に向け、経営側からは、2023年以上の意気込みと決意が示されており、特に物価動向を重視し、ベースアップを念頭に
おいた賃金引上げを各企業に要請している。また、労働側からは昨年を大きく上回るベースアップの要求額が示されている
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・有効求人倍率は、8月1.29、9月1.29、10月1.30、11月1.28(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、7月2.7%、8月2.7%、9月2.6%、10月2.5%、11月2.5%となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年3月+1、6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+8。
「大企業・非製造業」は、2023年3月+20、6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+24。
「中小企業・製造業」は、2023年3月▲6、6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2023年3月+8、6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+7。
○ 生産は、持ち直しの兆しがみられる。
・生産は、世界的な半導体需要の底打ちから、電子部品・デバイスが持ち直すなど、持ち直しの兆しがみられる。一方、一部自動車
メーカーにおける国の認証制度に係る不正問題により生産・出荷が停止されたことから、輸送用機械の生産への下押し、サプライ
チェーン企業への影響に留意が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、9月+0.5%、10月+1.3%、11月▲0.9%、12月+6.0%(予測)、1月▲7.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月▲0.5%、9月▲3.4%、+10月+0.3%、11月+1.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、8月+0.5%、9月▲0.2%、10月+6.6%、11月▲0.9%。
・輸送機械は前月比で、8月▲3.7%、9月+4.2%、10月+2.2%、11月▲1.6%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きがみられる。輸入はおおむね横ばいとなっている。
・輸出は、欧州経済の弱さを受けてEU向け輸出が弱含んでおり、持ち直しの動きに足踏みがみられる。工作機械等の金属加工機械
は中国からの受注が弱く軟調の一方、建設・鉱山用機械は米国向け等で堅調、半導体関連も今後の持ち直しが期待される。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、9月▲3.7、10月▲0.4、11月±0.0、12月+1.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月▲1.9、10月▲1.1、11月+1.0、12月▲0.3。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待
される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある。
・2023年10-12月期の成長率は、前期比年率4.1%に減速した。国内需要が伸び悩む中、一部品目は輸出に向かい、輸出価格は
下落傾向にある。不動産市場の停滞が続き、住宅価格は下落傾向となっている。若年失業率は12月は14.9%と高水準となった。
・実質GDP成長率は、23年10-12月期で前年比+5.2%(前期比+4.1%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・新築住宅販売価格は下落している。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
○ インド・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾・タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は回復している。 先行きについては、回復が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による
下振れリスクに留意する必要がある。
・2023年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+4.9%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・12月の失業率は3.7%となった。
○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化している。
・設備投資は、インフレ抑制法や半導体法等を受けて、製造業による投資が大幅に増加したことにより、構築物投資(工場建設等)
が増加傾向となっている。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は増加しており、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
・背景には家計のバランスシートの改善があり、総資産に対する負債の比率は過去 20年間で最低水準となっている。ただし、
低所得者層の預金水準はコロナ禍前を下回っている。クレジットカードローンの 新規延滞率は上昇傾向であるが、過去に比べ
低水準となっている。
○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.5% (イギリスは▲0.5%、ドイツは▲0.5%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+3.9%(12月)、イギリス+5.8%(12月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2023年
12月
19日
火
月例経済報告(R5.12.19) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ一部に足踏みもみられるが、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果 もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な 金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の 下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、 物価上昇、中東地域をめぐる情勢金融資本市場の変動等の影響に 十分注意する必要がある。
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世界の経済情勢
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
・欧米の物価上昇率は低下傾向にある中で、政策金利は秋以降据置きとなった。今後も物価上昇率は低下する見通しとなって
いる。
・ 2024年の世界経済は、これまでの欧米の金融引締め等を受けて、やや減速する見通しとなっている。
なお、アメリカの年末商戦は、ネット販売等が好調であり、足下の消費は増加基調となっている。
・中国では、不動産市場の停滞が継続している。不動産貸出残高の対GDP比は2020年にピークアウトしたが、日本のバブル期
よりも規模が大きい。
消費者物価は、特殊要因もあり下落した。
・台湾の景気は、世界的に半導体需要が持ち直す中で持ち直しの動きとなっている。輸出は情報通信機器が急増した。
・今後、中国の成長率は徐々に低下する中で、インド、ASEANの成長率が上回っていく見通しとなっている。
GDP速報
○ 2023年7-9月期のGDP2次速報では、名目GDPは横ばいの一方、実質成長率は前期比▲0.7%(年率▲2.9%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・家計可処分所得は、名目では雇用者報酬を中心に増加基調だが、物価上昇に追いついておらず、実質で減少した。総合経済対策
の着実な実行により、名目可処分所得が物価上昇を上回る状況を確かなものとする必要がある。
・新型コロナの5類移行後初の年末年始となり、鉄道予約や国内旅行人数はほぼコロナ前に回復の見込みとなっており、忘年会・
新年会開催も増加となった。
・POSデータ(どの商品が、いつ・どこで・いくらで・どのくらい販売されたか、という情報を含む販売実績のデータ)では、コンビニは価格
転嫁で販売数量は減少しているが、商品入替もあって売上高は増加が継続している。
・実質総消費動向指数は、前期比で、7月0.0%、8月▲0.1%、9月0.0%、10月+0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、7月+0.9%、8月▲0.9%、9月▲1.0%、10月+0.5%、11月+0.4%。
・10月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.2%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、このところ上昇している。
消費者物価は、このところ上昇テンポが緩やかになっている。
・財の企業間取引価格を示す国内企業物価指数は、2021年以降、世界的な物価上昇を起点に上昇してきたが、 足下では、資源
価格の下落の影響もあって横ばいで推移している。
サービスの企業間取引価格を示す企業向けサービス価格指数は、財に遅れて、価格転嫁が進み、2022年以降緩やかに上昇して
いる。
・この結果、財・サービスともに、コロナ前の物価が動かない状態から、幅広い品目にわたって物価が上昇する姿に変化しつつ
ある。
・消費者物価は、前年同月比の上昇率が低下傾向にあるなど、上昇テンポが緩やかとなった。
背景には、食料品等で値上げが一服したことによる上昇幅の縮小がある。
・こうした中、5%以上の高い物価上昇を予測する家計の割合は縮小し、5%未満を予想する家計の割合が、2022年2月以来、初めて
逆転した。
・物価上昇品目の割合は増加し、広がりが見られつつあり、デフレ前の1980年代の姿に近くなっている。
★ 企業の価格転嫁の動向
・ 素材型製造業では、 2008年のリーマンショック前に仕入価格が大きく上昇した時は販売価格の上昇は限定的 だったが、
今回の物価上昇局面では、仕入価格が2008年並みに上昇する中、販売価格への転嫁が進んだ。
・ 加工型製造業や非製造業では、この30年間、販売価格引上げ企業の割合が十分高まらなかったが、今回は販売価格への
転嫁が進展した。なお、非製造業は、1980年代~90年代初めは仕入と販売価格の動向が連動している。
・ 仕入価格の販売価格への転嫁は、デフレに陥る前の1990年代前半までの姿に近づいている可能性がある。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7月▲4.1%、8月+4.4%、9月▲1.5%、10月+1.0%。
・持家着工数は前月比で、6月+0.1%、7月+1.0%、8月+5.8%、9月▲9.3%、10月▲8.4%。
・貸家着工数は前月比で、6月▲8.9%、7月+1.5%、8月▲4.4%、9月+4.8%、10月+1.8%。
・分譲着工数は前月比で、6月▲5.9%、7月▲16.0%、8月+17.0%、9月▲2.0%、10月+8.5%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、7月▲4.3%(出来高+1.7%)、8月▲10.8%(出来高▲0.4%)、9月+8.5%(出来高+0.7%)、10月▲7.9%、
11月+7.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・企業が賃上げで重視した要素は、「労働力確保」がバブル期以来、「物価動向」が40年ぶりの高さにとなった。
・中小企業では、原材料費に比べ、労務費の転嫁ができていない。持続的な賃上げの実現に向けて、労務費を転嫁できる取引
環境の整備が重要である。
・本年10月の最低賃金引上げにより、コンビニやファストフードを中心に募集時賃金が上昇した。
配偶者のいる非正規雇用の女性では、「年収の壁」を超える労働時間で働く人が増えている可能性がある。
・有効求人倍率は、7月1.29、8月1.29、9月1.29、10月1.30(正社員は1.01)となった。
・完全失業率は、6月2.5%、7月2.7%、8月2.7%、9月2.6%、10月2.5%となった。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・2023年7-9月期は、企業の経常利益・営業利益ともに過去最高となった。売上高に対する利益の比率も過去最高水準となった。
企業部門の好調さを設備投資や賃金に回していくことが重要。
・非製造業の業況判断DIは、引き続き、バブル期以降の最高水準となった。
製造業 では、大企業の業況判断DIが3期連続で改善し、中小企業も2019年3月以来初めてプラスに転じた。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
・2023年度の企業の設備投資計画は、12月時点で前年度比+12.6%と、引き続き投資マインドは堅調である。
・機械投資は、受注残高は高水準。実際に工場等に納入された時点で、投資として顕在化している。
・建設投資(出来高)は、2022年前半着工の大型案件の工事進捗の一服もあって減少しているが、2023年秋か ら着工は再び増加
しており、今後の投資として計上される見込みとなっている。
・ソフトウェア投資は非製造業を中心に増加傾向が続き、研究開発投資も堅調に増加の見込みとなっている。
○ 業況判断は、改善している。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2023年3月+1、6月+5、9月+9、12月+12、2024年3月+8。
「大企業・非製造業」は、2023年3月+20、6月+23、9月+27、12月+30、2024年3月+24。
「中小企業・製造業」は、2023年3月▲6、6月▲5、9月▲5、12月+1、2024年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2023年3月+8、6月+11、9月+12、12月+14、2024年3月+7。
○ 生産は、持ち直しの兆しがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、8月▲0.7%、9月+0.5%、10月+1.3%、11月(予測)▲0.3%、12月(予測)+3.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月▲4.8%、8月▲0.5%、9月▲3.4%、+10月+0.3%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月▲5.1%、8月+0.5%、9月▲0.2%、10月+6.6%。
・輸送機械は前月比で、7月+0.4%、8月▲3.7%、9月+4.2%、10月+2.2%。
外需
○ 輸出はこのところ持ち直しの動きがみられる。輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 消費者マインドは、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、前月と同値となった。
・現状・季節調整値DIは前月差で、8月▲0.8、9月▲3.7、10月▲0.4、11月±0.0。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月▲2.7、9月▲1.9、10月▲1.1、11月+1.0。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが
期待される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある。
・実質GDP成長率は、23年7-9月期で前年比+4.9%(前期比+1.3%)。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・財輸出はおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は伸びが低下している。
・新築住宅販売価格は下落している。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価は下落した。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国・台湾では、景気は持ち直しの動きがみられる。
○ インド・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は回復している。 先行きについては、回復が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等
による下振れリスクに留意する必要がある。
・2023年7-9月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+5.2%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・11月の失業率は3.7%となった。
○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化している。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は増加しており、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。
○ コア物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気は弱含んでいる。
・23年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.5% (イギリスは▲0.1%、ドイツは▲0.5%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は弱含んでいる。イギリスは弱い動きとなっている。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は低下している。イギリスはこのところ低下している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+4.2%(11月)、イギリス+6.3%(10月)。
○ 財輸出は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに弱含んでいる。
2023年
11月
22日
水
月例経済報告(R5.11.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ一部に足踏みもみられるが、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果 もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な 金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の 下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、 物価上昇、中東地域をめぐる情勢金融資本市場の変動等の影響に 十分注意する必要がある。
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世界の経済情勢
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
先行きについては、持ち直しが続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めや中国における不動産市場の停滞に
伴う影響、物価上昇等による下振れリスクに留意する必要がある。また、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動の
影響を注視する必要がある。
○ アメリカは、雇用の増勢がコロナ禍前の景気拡大局面の平均水準まで落ち着きつつあり、物価上昇率が低下傾向にある
中で、政策金利はこのところ据置きとなっている。
○ ユーロ圏経済、ドイツ経済及び英国経済は弱含みとなっている。 ドイツの個人消費は、2021年後半以降、横ばいで、背景
には、名目賃金の伸びが物価上昇を超えない状況がある。一方、スペインは、名目賃金の伸びが物価上昇を上回り、個人
消費は持ち直し基調、経済も堅調となっている。
GDPの動向と供給力強化に向けた課題
○ 2023年7-9月期のGDP1次速報では、名目GDPは横ばいの一方、実質成長率は前期比▲0.5%(年率▲2.1%)と3期ぶりに
マイナスとなった。
○ 上場企業の決算をみると、経常利益は、7-9月期としては過去最高を更新した一方、企業の設備投資は、名目では2期ぶり
に増加したものの、実質では2期連続の減少となり、持ち直しに足踏みがみられた。
○ 1980、90年代の景気拡大局面では、労働投入の寄与がわずかなプラスないしマイナスの中、資本投入と生産性の伸びが、
潜在成長率を引き上げていたが、近年はこれらの寄与が縮小している。供給力(潜在成長率)引上げのためには、国内の新規
投資拡大、研究開発や人への投資を通じた生産性向上が喫緊の課題となってくる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
○ 名目では増加した一方、実質では物価上昇の影響もあり横ばいになった。雇用者報酬は、名目では増加基調にある一方、
実質は、物価上昇の影響で二期ぶりに減少した。
・7-9月の個人消費は、過半を占めるサービスの増加が継続した一方、耐久財を中心に財が減少した。財は、物価上昇の影響
のほか、工場停止を受けた自動車の国内向け販売の減少という一時的要因も影響した。
・外食サービスは、名目・実質ともに緩やかな増加基調にあり、コロナ前水準を超える。コロナ禍で控えられていた年末の
外食需要にも期待できる。
・小売販売を業態別にみると、低価格の食品への需要増加等もあり、ドラッグストアの売上が堅調である。
・実質総消費動向指数は、前期比で、7月0.0%、8月▲0.1%、9月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、6月+0.2%、7月+0.9%、8月▲0.9%、9月▲1.0%、10月+0.5%。
・9月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.4%となった。
物価
○ 国内企業物価は、横ばいとなっている。輸入物価は、このところ上昇している。
消費者物価は、上昇している。
・食料品は値上げの一服で上昇幅が縮小する一方、生鮮食品は上昇幅が拡大した。特に、猛暑による生育不良でトマトなどの
野菜の価格が高騰している。
・コロナ前と比べると、財の物価上昇に広がりがみられる。サービス業では、労務費増加分の価格転嫁が相対的に限定的と
なった。賃金と物価の好循環の実現に向け、適切な価格転嫁の促進が鍵となる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、6月▲5.9%、7月▲4.1%、8月+4.4%、9月▲1.5%。
・持家着工数は前月比で、5月+0.1%、6月▲0.5%、7月+1.0%、8月+5.8%、9月▲9.3%。
・貸家着工数は前月比で、5月11.3%、6月▲8.9%、7月+1.5%、8月▲4.4%、9月+4.8%。
・分譲着工数は前月比で、5月+23.7%、6月▲5.9%、7月▲16.0%、8月+17.0%、9月▲2.0%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、6月+5.1%(出来高▲5.0%)、7月▲4.3%(出来高+1.7%)、8月▲10.8%(出来高▲0.4%)、9月+8.5%
(出来高+0.7%)、10月▲7.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。
・就業者数を産業別に見ると、過去5年間で、医療・福祉、情報通信等で大きく増加する一方、卸売・小売では減少、コロナ禍
で大きく減少した宿泊・飲食等は、回復するも依然コロナ前を下回る。
・公定価格の医療・福祉等を除く産業計では、春闘賃上げを反映し、所定内給与で2%程度賃金上昇した。
・ 年末のボーナスは、好調な企業収益等も背景に、現時点では、夏以上の高い伸びが見込まれている。